|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
株式会社フジテレビジョン「新基幹システム」その運用に迫る
|
|
|
|
その時、オフィス内にシステムに何らかの問題が発生したことを知らせるパトランプが点灯し、音声アナウンスが流れた…。これは株式会社フジテレビジョン(以下、フジテレビ)に取材にお邪魔した際に、実験として故意にエラーを発生させ、システムのアラート(通知)を発生させたときの様子だ。フジテレビでは、2003年12月に放送を開始した地上デジタル放送開始に先駆け、2003年8月8日に基幹システムを、これと同時に運用システムも一新した。
この基幹システムには、「編成営業放送システム(営放システム)」と呼ばれるテレビ放送における心臓部とも言うべきシステムも含まれている。営放システムは「番組」や「CM」といった情報を秒単位で管理し、放送に必要な情報を作って「送出システム」に受け渡す非常に重要なシステムである。このようにテレビ放送を支える上で24時間稼働が必須のミッションクリティカルなシステムにおいて、フジテレビでは「オープンシステムを採用しながら、メインフレームと同等、またはそれ以上の運用自動化を実現できるか」という極めて困難な、しかし重要な試みにチャンレジし、実現した。そこで、今回はフジテレビの基幹システムの運用に携わる方々にお話をうかがってみた。
■ 新基幹システムに求められた「信頼性」と「自動運用」
「システム運用の自動化を、どのように実現させるのか?」という問題は、どのシステムにおいても重要なテーマである。規模の小さいシステムや、ダウンしても致命的ではないシステムにおいては、ユーザーがシステムの障害を発見し、報告を受けたシステム管理者が対応するといった運用がよくみられる。
しかし、ミッションクリティカルなシステムではこのような方法で運用するわけにはいかない。なぜなら、“システムがダウンしている時間を最小限に食い止める”必要があるからである。システムのダウンを未然に防ぐためには、常にシステムを監視し、システムに問題が発生した場合には、速やかに対応しなければならない。これらの作業を、オペレーターによる手動作業で行うことは困難である。オペレーターのスキルや体調などによって運用のクオリティが変化したり、オペレーションミスなどが発生することは、致命的なシステムダウンを招く可能性もある。
これらの問題を回避するために、監視ツールによってシステム監視を自動実行するという方法がとられる。システムの運用に必要なさまざまなパラメータ(ネットワークトラフィックや、CPU使用率などのサーバーリソース)をツールで常に監視し、異常が検知されたら速やかにオペレーターに通知したり、特定の処理を実行するコマンドを発行したりする。フジテレビは、このようなシステムの自動運用を、かなり以前から積極的に実現してきた先進的な企業である。
フジテレビでは、既存の基幹システムをメインフレームを中心とした環境で構築していた。しかしユーザーインターフェイスの操作性向上や、システムのネットワーク化、メインフレームのサポート時期なども踏まえ、今回のリプレースではオープンサーバー環境を中心に展開されることとなった。これまでのメインフレーム環境でも、システム運用の多くは自動化されていたため、当然のことながら新たに構築される基幹システムでは、従来と同等、あるいはそれ以上のシステムの監視・運用の自動化が高いクオリティで実現しなければならない。
しかも、既存のアナログ放送における営放システムは、送出システムと個別に運用されていたが、地上デジタル放送に対応するためには、音声のチャンネル数や画像のクオリティ、また帯域などに関する放送制御信号を、番組制作の上流工程で付加しなければならない。またEPG(電子番組表)などのデータも番組とともに送出するため、営放システムと送出システムと直結する形で運用されることとなり、これまで以上に高い信頼性が求められることとなったのである。
■ ハードウェアとプラットフォームの策定
フジテレビでは2001年頃から新・営放システムについて、ハードウェアを含むプラットフォームの選択から、それらのシステムの運用体制にまで詳細な検討を開始した。前述したように新・営放システムでは「システムの信頼性」と「運用の自動化」という重要な課題が2点あり、これらの問題を克服することは容易ではなかった。
|
フジテレビの編成営業放送システム概要
|
まずハードウェアには、メインフレームの頃から同社での稼働実績のあるIBM製品が選択されている。しかし、プラットフォームに関してはやや検討が必要となった。クライアント/サーバー型のシステムでは、クライアント側アプリケーションのメンテナンスにコストがかかってしまうため、可能な限りアプリケーションはサーバー側に置くことが当初から決まっていた。
その上で、当初はJ2EE環境でのアプリケーション開発が検討された。しかし伊藤氏は「要件定義を進める上で、営放システムはリッチクライアントでないと表現しきれなかった」と述べ、そこで検討を重ねた結果、候補に上がった.NET Frameworkの導入が決定した。プラットフォームとなるWebアプリケーションサーバーには、「WebSphere Application Server」、データベースは「DB2 Universal Database Enterprise Server Edition」、バッチサーバーには「WebSphere Application Server」がそれぞれ選択された。また、これらの統合をスムーズに進めるためのミドルウェアとして、「WebSphere MQ」が採用されている。
■ システムの監視・運用
|
フジテレビジョン株式会社 情報システム局 システム企画部 専任部長 伊藤 春男氏
|
|
株式会社フジミック 放送システム部 戸崎 紀行氏
|
さらにシステムの監視・運用についても検討が重ねられた。システムの監視ツールに関しては、日立製作所のJP1を導入することが決まった。
ところがメインフレーム環境と同様のシステム監視・運用を行うには、JP1だけではWebSphere Application Serverとの連携機能が十分ではなかった。営放システムの性格上、非常にミッションクリティカルであり、冗長化されている部分も多い。システムで何らかの障害が発生し、バックアップのシステムに自動的に切り替わった場合でも、その障害を正しく検知できなければならないのである。つまり、冗長化されている一方のシステムが、停止している状態も正しく監視できなければならない。
そこで、WebSphere Application Serverとの親和性が非常に高く、JP1ともシームレスに連携できるシステム監視・運用ツールとして、日本キャンドル株式会社の「OMEGAMON XE」シリーズの導入が決定したのである。
実際に監視ツールの調査にあたった株式会社フジミック放送システム部の戸崎氏は「ハードウェアの死活などを監視するツールはいろいろあります。でも、実際に監視したいのはシステムの中にあるプロダクトです。それができて、さらにJP1とシームレスに連携できるツールを探しました」とOMEGAMON XEシリーズの導入の理由を語った。
また、フジテレビでは既存のメインフレームのシステムの頃から、障害の自動検知などさまざまな運用面の自動化を実現していた。これによってシステムの設計から運用まですべてを自社(および子会社)だけで実現できるのである。
新・営放システムでは、監視対象となるハードウェアにはJP1の、ソフトウェア/サービスにはOMEGAMONの監視エージェントを導入してシステムを監視している。サービスで何らかの異常が発生した場合には、OMEGAMONのエージェントはJP1に状況を渡し、ハードウェア障害時にはそのままJP1からアラートが通知される。ここでは社内のパトランプ(光)と音声(音)でシステムに異常が発生したことを、オフィス内にはっきりと通知するのである。また、同時に担当者には発生したアラートのメールが送信される。
ここまでの作業が、すべて監視システムによって自動化されているのだ。運用オペレーターおよび障害対応にあたる技術者は、24時間体制で勤務している。こうした体制によって、営放システムは365日間無停止の運用を実現しているのである。
■ 今後の展望
フジテレビでは、システムの開発および運用にいたるまで、すべて自社の開発部門および情報システム部門、そして100%出資の子会社である株式会社フジミックとでおこなっている。システム構築を特定のSIに依頼したり、システム運用などは委託していない。社内のエンジニアのスキルは高く、特定のSIの言いなりになることは全くない。
現在フジテレビでは、勘定系システムや人事、広報システムなども同様にオープンサーバー環境へと移行中である。また、監視ツールによるシステムの監視データも活用して、今後のより的確なシステム開発につなげていくことも検討しているとのこと。
メインフレームからオープンサーバへの移行、そしてシステム運用の自動化など、今回の営放システムのリニューアルを通じて、時代の変化に前向きに、かつ迅速に対応するフジテレビの社風を感じることができる。
■ 企業プロフィール
株式会社フジテレビジョン
本 社:東京都港区台場2-4-8
創 業:1957年11月
資本金:597億6435万円 (ニッポン放送、文化放送、松竹、東宝、大映出資)
従業員数:1,381名 (2003年10月1日現在)
主な事業内容:テレビジョン放送、番組制作、映画・映像ソフト制作、イベント、通信事業、権利ビジネスほか
( 北原 静香 )
2004/06/18 00:00
|
|
|
|
|