サン・マイクロシステムズ株式会社は2月16日、新CPU「UltraSPARC IV」を搭載した「Sun Fire エンタープライズサーバ」5機種、およびOpteronを搭載した「Sun Fire V20z」の販売を開始した。また、新製品への移行を推進するために既存製品や競合製品を下取りする置き換えプログラムを開始すると発表した。
■ UltraSPARC IVを搭載した「Sun Fire エンタープライズサーバ」
Sun Fire エンタープライズサーバは、「Sun Fire E2900」「同 E4900」「同 E6900」「同 E20K」「同 E25K」の5機種で構成され、いずれもCPUに新開発のUltraSPARC IVを初めて搭載した。
UltraSPARC IVは、CPUとシステムバスの速度の違いから発生するメモリ待ち時間を利用し、1CPUあたり2つのスレッドを同時に処理が可能な「チップマルチスレッディング(CMT)」技術を採用しており「既存製品と同等の価格で2倍の性能を発揮する」(米Sun エンタープライズ・システムズ・プロダクツ マーケティング担当バイスプレジデント スティーブ・キャンベル氏)という。
また、従来のUltraSPARCシリーズと完全なバイナリ互換をもつため、導入の際にアプリケーションを再コンパイルをすることなく動作させることができ、同じシステム内でUltraSPARC IIIベースのサーバーと併用して使用することが可能。
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UltraSPARC IV
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米Sun エンタープライズ・システムズ・プロダクツ マーケティング担当バイスプレジデント スティーブ・キャンベル氏
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過去の製品との互換性におけるHP、IBMとの比較
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キャンベル氏は「HPが採用するItaniumやIBMのPowerは過去の製品と互換性がないため、混在が不可能で筐体の交換が強いられたりする」とし、「サンは新しいUltraSPARC IV搭載サーバーを増設するだけで、動的にコンフィグレーションが行われダウンタイムなしで利用でき、既存のシステムも生かすことができる」と述べ、他社製品と比較しての優位性を強調した。
ターゲット市場について同社は、主にERPやCRMなどの基幹業務用途としており、メインフレームからの置き換えのほか、「HPのItaniumやIBMのPowerなど、ほかのプラットホームからのマイグレーションを進めたい」(プロダクト&ソリューション・マーケティング本部 本部長 山本恭典氏)としている。
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Sun Fire E20K/E25K
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価格と主な仕様は、Sun Fire E2900が4~12CPU、最大メモリ96GB、73.4GB HDD×2、6個のPCI拡張スロットを搭載して1,425万5,000円から。Sun Fire E4900が4~12CPU、最大メモリ96GB、外部ディスク使用、最大16個のPCI拡張スロットを搭載して2,679万8,000円から。Sun Fire E6900が4~24CPU、最大メモリ192GB、外部ディスク使用、最大32個のPCI拡張スロットを搭載して3,399万8,000円から。Sun Fire E20Kが4~36CPU、最大メモリ288GB、外部ディスク使用、最大36個のPCI拡張スロットを搭載して6,789万6,000円から。Sun Fire E25Kが4~72CPU、最大メモリ576GB、外部ディスク使用、最大72個のPCI拡張スロットを搭載して9,453万6,000円から。いずれもCPUはUltraSPARC IV 1.05GHz、または1.20GHz(16MBキャッシュ)を搭載し、Solaris 8または9のサーバーライセンスが付属する。出荷は4月上旬から随時開始予定。
また、同社は置き換えプログラムにより新規導入製品の最大10%の金額で既存製品を下取りするほか、HP Superdome 9000、IBM pSeries 670、680、690などからの置き換えの場合は6カ月間限定で通常の2倍の金額で下取りを行う。
■ AMDとの提携後初のOpteron搭載サーバー「Sun Fire V20z」
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Sun Fire V20z
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Sun Fire V20zは、CPUにOpteron 200シリーズを最大2基搭載するエントリー向けサーバー。2003年11月に米Sunと米AMDの提携が発表されて以来、初のOpteron搭載サーバーとなる。
OSはRed Hat Enterprise Linux 3 for AMD64、およびSuSE Linux Enterprise Server 8 for AMD64の、64ビット対応Linuxが利用できるほか、Solaris 9 x86版、およびRed Hat Linux Enterprise 3にも対応する。なお、64ビット対応のSolaris x86版は8月のリリースを予定しているという。
ターゲット市場について同社は、ローエンド市場の9割を占めるインテルの32ビットCPUからの置き換えとしている。山本氏は「32ビットと64ビットのアプリケーションを同時に動かしたいというユーザーが今後増えていく」と分析し、「32ビットCPUではメモリを最大4GBまでしか利用できないことから64ビットCPUの需要は今後高まる」と述べた。
主な仕様は、CPUにOpteron 200シリーズ(242、244、248)を最大2基、最大16GB(1CPUあたり8GB)メモリ、36GBから146GBの内蔵HDD、2個のPCI-Xスロットを搭載する。価格はオープンプライスだが、最少構成で30万円前後。
また開発者向けプロモーション製品として、Sun Fire V20zのほか、Solaris 9 x86版、C、C++コンパイラを含む開発ツール群、Java Enterprise Systemのセットを168,000円で提供する。
今回発表した2製品について同社は、お互い対照的な方向性を目指すとしており、Sun Fire エンタープライズサーバは既存製品との互換性を保ちながら高性能なコンピューティング環境へのアップグレードを実現する「スケールアップ」、Sun Fire V20zは32ビットと64ビットアプリケーションの混在を低価格で実現する「スケールアウト」の製品と位置づけている。代表取締役社長のダン・ミラー氏は「両方向へのアップグレードを過去の投資を保護しながら実現できるのはサンだけ」とし、従来製品や競合製品からの乗り換えを訴えた。
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代表取締役社長 ダン・ミラー氏
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スケールアップとスケールアウト
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■ URL
サン・マイクロシステムズ株式会社
http://jp.sun.com/
プレスリリース(Sun Fire エンタープライズサーバ)
http://jp.sun.com/company/Press/release/2004/0216_1.html
プレスリリース(Sun Fire V20z)
http://jp.sun.com/company/Press/release/2004/0216_2.html
プレスリリース(開発者限定のプロモーション製品)
http://jp.sun.com/company/Press/release/2004/0216_3.html
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( 朝夷 剛士 )
2004/02/16 20:20
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