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日立、データライフサイクル管理をにらみSATAストレージを投入

ストレージの従量課金、SAPデータアーカイブなどのサービスも提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は6月15日、統合ストレージソリューション「DLCMソリューション」を体系化したと発表した。これに伴い同社では、従来より提供されているディスクアレイサブシステム「SANRISE 9500Vシリーズ」のラインアップ強化、ならびに「データアーカイブサービス」「ストレージユーティリティマネジメントサービス」の投入など、新施策を行う。


DLCMソリューションとして、データの3階層それぞれに対応した製品を提供

日立の考えるストレージの3階層
 今回日立が発表した「DLCM」とは、Data Life Cycle Managementの頭文字を取ったもので、データを作成から活用・保存・廃棄に至るまでのライフサイクルでとらえることにより、その効率的な管理・運用を目指すもの。ほかのベンダでは通常ILM(Infomation Life Cycle Management)の名称で呼ばれている概念だが、ストレージに対する考え方としてはあまり差がなく、日立の場合は1st Tier(オンライン)、2nd Tier(ニアライン)、3rd Tier(オフライン)の3階層を想定している。

 このうち、同社ではオンライン部分にはファイバチャネル(FC)ストレージ、オフライン部分には磁気テープ製品を展開してきた。今回はミドルレンジディスクアレイ「SANRISE 9500Vシリーズ」のラインアップを拡充し、性能を強化した「SANRISE 9585V」と、ニアライン部分を担当するシリアルATA(SATA)対応筐体、データ改ざん防止(WORM)機能を追加する新オプションなどを発売する。


ミドルレンジストレージ製品のラインアップを強化

SANRISE 9500Vシリーズ

RAIDシステム事業部 事業本部長 岡見吉規氏
 SANRISE 9585Vは、これまでのSANRISE 9580Vに代わるSANRISE 9500Vシリーズ最上位モデル。コントローラの強化などにより、トランザクション性能を従来の1.4倍、シーケンシャル性能を同1.2倍に向上させた。コントローラの含まれる基本筐体は従来モデルと同様3Uラックマウントサイズで、4ないし8ポートのホストFCインターフェイスを備え、最大449台までのHDDを制御可能。HDDを搭載する増設筐体は既存のSANRISE 9570V/9580Vと互換性を持ち、最大107TB(FC/SATA混在時)の物理容量をサポートする。価格は最小構成時1278万4000円から。なお、既存のSANRISE 9580Vユーザーに向けたアップグレードキットも用意されており、コントローラユニットを交換することでSANRISE 9585Vへのアップグレードに対応する。

 また日立では自社ラインアップに欠けていたニアライン部分を補完する目的で、SANRISE 9570V/9580V/9585Vの3製品向けにSATA HDDを搭載した増設筐体を提供する。SATAはFCと比較すると信頼性、速度など落ちる部分はあるが、「低価格で提供できるため、ニアライン用途には最適」(RAIDシステム事業部 事業本部長 岡見吉規氏)という。もちろん、エンタープライズ分野で利用される以上、信頼性は高いに越したことはなく、日立では障害の予知を行って早めにデータをスペアドライブに逃がす、書き込んだデータをチェックして正常に記録されたかどうかを確認する、といった対策を取ることで「競合他社の製品よりも高い信頼性を実現した」(同氏)。加えて、「業界ではじめて」(岡見氏)同一構成内へのSATA/FC筐体の共存をサポートし、データの性格にあわせて、1台のストレージ内の適した部分へ格納できるようになった。

 加えて、従来より対応していた上位モデルのSANRISE 9900Vに加え、SANRISE 9500Vシリーズにもデータ改ざん防止機能「Open LDEV Guard」を追加できるようにした。現在米国ではSEC(米証券取引委員会) 17a-4やHIPPA(Health Insurance Portability And Accountability Act of 1996)などの規制により、データを一定期間、確実に保存することが求められるようになってきている。日本での法規制はまだ進んでいないものの、今後こうしたニーズが高まることも予想されるため、改ざん防止機能を追加したという。この機能を利用すると、一度書き込まれたデータを読み取り専用にしたり、アクセス不可にしたり、といった運用を行えるようになる。Open LDEV Guardの価格は、84万円から。


SAP R/3データのアーカイブサービスなども提供

データアーカイブサービスの概念図
 日立ではDLCMソリューションの一部として、今回追加された各製品と従来製品を組み合わせ、サービスも積極的に展開していく意向。まず、データアーカイブサービスでは、イキソスソフトウェアと共同で開発した企業コンテンツ管理ソフトウェア「IXOS-eCONserver」を用いて、SAP R/3のデータをSANRISEシリーズに格納。改ざん防止機能もあわせて利用し、アーカイブデータの確実な保管を実現する。価格は個別見積で、7月末より開始される。日立では今後、メールデータのアーカイブサービスも提供を予定しているとのこと。

 さらにストレージユーティリティマネジメントサービスとして、使用容量に応じた従量課金によりストレージを提供するサービスも開始する。このサービスでは、ユーザーと日立の打ち合わせで基本使用量と基本料金を決定し、それを超えて使用した部分に対して従量課金を行う。こうした従量課金のサービスでは、ストレージを提供側のデータセンターに設置するものが多いが、同サービスでは、ユーザーのデータセンターにストレージを設置し、維持、管理、保守などのサービスを日立がワンストップで提供する。基本契約は4年間で、日立が試算したモデルケースでは、その間のTCOを25%削減できたという。価格は個別見積。同社では、3年間で40社への提供を見込んでいる。



URL
  株式会社日立製作所
  http://www.hitachi.co.jp/
  プレスリリース(DLCMソリューション)
  http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/06/0615b.html
  プレスリリース(SANRISE 9500Vシリーズ強化)
  http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/06/0615a.html
  プレスリリース(データアーカイブサービス提供など)
  http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/06/0615.html


( 石井 一志 )
2004/06/15 15:46

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