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小規模SANを容易に構築できるアップルの「Xsan」


 株式会社Tooは1月14日、アップルコンピュータ株式会社(以下、アップル)が1月5日より出荷開始したSAN(Storage Area Network)ファイルシステム「Xsan」を使ったネットワーク構築に関するセミナーを開催した。


専任者がいなくてもでもSANを構築できる

1月5日より出荷が開始されたXsan、価格は102,900円。
 SANは大容量のデータを高速で利用できるストレージシステムとして年々利用が増加しているが、システムの構築や運用・管理に専門知識を要することや、導入・運用コストが高価なことから主に大企業での利用が中心だ。これに対しXsanは、設定がGUIで高度な知識がなくても可能なことや、ストレージ容量に関係なく接続するコンピュータベースで安価に導入できることが特徴だ。

 アップルは、UNIXを基盤としながら操作性に定評のあるMac OS X Serverをベースとするサーバー製品「Xserve G5」や、Ultra ATA HDDを採用することでGBあたり最小270円を実現したストレージシステム「Xserve RAID」と合わせて、大容量データを利用する映像や出版分野の企業を中心にエンタープライズ事業を展開している。

 Xsanの発表以前は、XserveやPowerMacなどのコンピュータとXserve RAIDをFC(Fiber Channel)によって接続したシステムを提供していた。しかしこの場合、Xserve RAID上に割り当てられたボリュームは、それを管理する各コンピュータからしかアクセスすることができないため、仮にXserveにトラブルが発生すると、これとEthernetで接続するクライアントからXserve RAID上のファイルにアクセスできなくなってしまう恐れがある。

 これに対しXsanのファイルシステムを導入すると、仮想化により複数のボリュームが単一(最大16TBまで)として扱えるようになるため、接続するすべてのコンピュータからすべてのボリュームを利用できるようになる。もちろん、Xserveから利用者やグループごとにアクセス権限を設定することも可能だ。これによりネットワークに冗長性を持たせるだけでなく、ストレージを無駄なく利用することが可能。また、「アフィニティ機能」によりフォルダごとに保存先のHDDを物理的を指定でき、管理性を高めることができる。


Xsan導入以前のSAN、各ボリュームへは管理サーバーからしかアクセスできない Xsanではボリュームを仮想化し、それぞれのコンピュータからアクセスが可能となる

アップルコンピュータ プロダクトマーケティング 山岸美恵野氏
 Xsanのもう一つの特徴がMac OS譲りのGUIによる高い操作性だ。付属のXadminによってボリュームの構築やマウント、接続するサーバーなどの管理をコマンドレスで行うことができる。アップル プロダクトマーケティングの山岸美恵野氏は「ほかのシステムはすべてコマンドをたたかなければならないため、それなりの専門知識を要する」と指摘する。Xsanは「学校の先生(のような専任者以外)でもSANを構築できる」という。

 Xsanを使ったSANは、基本的にXserve RAID、FCスイッチ、メタデータコントローラーという制御用コンピュータ(冗長化も可能)、そしてFCポートを持ったサーバーなどのコンピュータで構築される。このうちFCスイッチはBrocade、Qlogic、Emulex製品がアップルの認定を受け動作確認されている。セミナーではQLOGICの日本総代理店であるサーヴァンツインタナショナル プロダクトマーケティングの平山哲哉氏が、スタッカブル型の「SANbox 5200/5202」が紹介し、ウィザードを取り入れた高い操作・管理性やコスト面での優位性などを説明した。

 このSANにWindowsやLinuxなどMac以外のコンピュータを接続する場合は、Xsanと互換性のあるデータ管理システムが必要となる。現在はadicの「StorNext」で相互運用が可能となっており、Tooではこれを利用してほかのプラットフォームとの接続やバックアップなどのシステムを構築しているという。


Xsan Adminからコマンドレスで運用・管理が可能 スタッカブル型FCスイッチ「SANbox 5202」。ハードウェア上では16ポート装備するが、最小で8ポートのみ有効な状態で販売され、ライセンスキーを購入し残りのポートを有効にして拡張することも可能 Mac以外のプラットフォームからも参加が可能

増加を続けるデータ量に対応し、一般企業でも高い有用性

セミナーでデモされたXsanシステム「この程度の最小構成でだいたい600万円くらいから」(Too 廣瀬氏)
 Xsanの対象ユーザーの中心は、企業規模に対して大容量のデータ処理を行う映像製作会社や出版会社などのクリエイティブ分野だ。従来これらの製作現場ではEthernetでサーバーに接続し、DAS(Direct Atacchied Storage)に保存されたデータを利用していたが、複数のユーザーが同時にアクセスするとパフォーマンスが低下してしまうため、大容量データを一度ローカルディスクにコピーするか、外付けHDDにコピーして使い回す必要が発生し、作業効率を落としていた。Xsanを利用しワークステーションをSANに接続すれば「Xserve RAID上にある大容量データを、自分のマシン上のデータのように扱うことができる」(Too システムOA営業部Network/IT課 廣瀬収氏)。

 クリエイティブ分野以外でもXsanによるソリューションの有用性が発揮される場面は多い。事業部ごとにデータ保存や管理が分散されていたストレージを集約することができる。ストレージの無駄を省くほか、高い専門知識がなくても管理ができることや、ストレージの容量を追加してもソフトウェアの追加コストが発生しないことも大きなメリットだ。Mac以外のサーバー・クライアントも参加できる。

 SANは技術やコスト面で敷居が高く、何百・何千人規模での利用でないとパフォーマンスを生かしきれないともいわれるが、扱うデータが大容量化するにともない、中小規模でも高いパフォーマンスや柔軟性が求められるケースが増えてくる。その中でXsanを使ったソリューションは、Macユーザーに限らず有力な選択肢になりそうだ。


ある映像製作会社の現状例。複数のクライアントが同時にデータを利用するとネットワーク全体のパフォーマンスが低下する Xsan導入後、パフォーマンスの低下を気にせずにストレージ上のデータを「自分のディスク上にあるように」利用できる

一般企業の現状の例。部署ごとにデータ管理がバラバラでストレージの利用効率も悪い Xsan導入後。各部署のストレージを集中管理でき、利用効率も上がる


URL
  株式会社Too
  http://www.too.com/
  アップルコンピュータ株式会社
  http://www.apple.com/jp/
  Xsan製品情報
  http://www.apple.com/jp/xsan/

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( 朝夷 剛士 )
2005/01/17 15:13

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