株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は4月5日、新たな高記録密度技術を用いたHDDを開発し、年内に100GBを超える2.5インチHDDを、2007年ごろに1TBの3.5インチHDD、20GBのMicrodriveを発表する意向を明らかにした。
新たに採用される技術は「垂直磁気記録技術」と呼ばれるもので、従来より高密度に情報を記録することができ、同社では業界最高となる1平方インチあたり230ギガビットの面記録密度を実証したという。これを3.5インチHDDにあてはめると1ドライブあたり1TB、Microdrive(1.0インチHDD)で20GBの記録が可能だという。
垂直磁気記録技術とは、HDD内部にある円盤状の記録媒体上にある磁気情報への記録において、従来の面内(水平)配置ではなく垂直に配置・記録する技術。これと記録媒体の改良により、記録密度を従来の2倍以上にできるという。
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垂直磁気記録技術を採用したHDDの試作品
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垂直磁気記録技術と面内磁気記録技術のイメージ
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ワールドワイドアドバンストテクノロジ ラボラトリ シニアダイレクタ 高野公史氏
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HDDは、約50年前に米IBMが世界で初めて開発した「RAMAC」以降、面内磁気記録技術を採用し、今日までに記録密度が約3500万倍まで向上している。しかし、ここにきて外部ノイズや熱に対するデータの保全性確保が難しくなっており、1平方インチあたり120ギガビット以上の面記録密度では品質上問題が発生する恐れがあるなど、実用的に限界が来ると考えられている。これに対し垂直磁気記録技術を用いれば、磁気の性質を利用して記録高密度化だけでなく、高いデータ保全性も確保でき、面内磁気記録技術の限界を超えた高密度記録を実現できるという。
同社は今後、記録密度が1平方インチあたり200ギガビット以上の垂直磁気記録技術を採用したHDDを順次製品化していく方針を示している。ワールドワイドアドバンストテクノロジ ラボラトリ シニアダイレクタの高野公史氏は「信頼性を含めてさらなる高密度化も射程圏内」と述べ、「将来的には1平方インチあたり1テラビット」も実現するとの見通しを示した。
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垂直磁気記録技術と面内磁気記録技術の記録磁化状態の変化の比較イメージ
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HDDの記録密度の変化
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HDDの大容量化と小型化の変化
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垂直磁気記録技術の生みの親という東北工業大学岩崎俊一学長。手前のPCでフィールド実験にも参加している
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なお、垂直磁気記録技術を採用したHDDは、当初データ読み書き速度や耐衝撃性など、記録密度とデータ保全性以外の性能は、現行のHDDと大きな違いはなく、予想価格も容量に見合った程度に設定される予定で「新技術だからといって跳ね上がることはない」(高野氏)としている。またこのHDDを採用する製品についても、従来と同様にPCを中心としたIT機器や、近年搭載製品が増えているデジタル家電などを想定しているとのこと。
また、高野氏は「他社もいずれ同様の技術を採用したHDDを投入してくる」と述べ、今後、大容量HDDに対する市場のニーズが高まるとともに、業界全体で垂直磁気記録技術が採用されていくとの見解を示した。
同社では、垂直磁気記録技術を採用した2.5インチHDDを搭載するノートPCを使用したフィールド試験を2004年12月より開始し、製品化への準備を進めている。
■ URL
株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ
http://www.hitachigst.com/portal/site/jp/
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