日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は5月19日、ストレージ製品群「HP StorageWorks」シリーズにおいて、中規模ストレージ環境の構築に適した製品のラインアップを拡充すると発表した。今回日本HPが発表したのは、ミッドレンジ向けのディスクアレイ「HP StorageWorks Enterprise Virtual Array(EVA)」の新モデル、HDDを用いた仮想テープライブラリ「HP StorageWorks 6000 Virtual Library System」(以下、VLS 6000)、ミッドレンジ向けのテープライブラリ「HP StorageWorks Enterprise Module Library(EML)」の各製品。
■ アレイ装置内を仮想化して、管理者の負担を軽減可能なEVAシリーズ
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EVA 8000
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エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ストレージ・ワークス製品本部 プロダクト・マーケティング部の平塚浩部長
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このうち、EVAシリーズは、オンライン製品のカテゴリに属するディスクアレイで、FC(ファイバチャネル)やFATA(Fibre Attached Technology Adapted)のHDDが利用できる。最大の特徴は、ミッドレンジのディスクアレイながら、HP独自の仮想化技術を投入し、動的なボリュームの拡張が行える点と、運用中のチューニングを不要にした点。従来のストレージでは、どのHDDを物理的にどのボリュームに割り当てるかという設定を管理者が行わなくてはならないが、EVAコントローラがこの作業を肩代わりするため、管理者は個々の論理ボリュームごとの容量管理だけに気を配ればよいという。
これは、複数の物理ストレージ(HDD)を集約して仮想ストレージプールを作成し、指定されたRAIDレベル、容量に応じた仮想ストレージを、このエリアから割り当てる仕組みを採用することで実現した。チューニングに関しては、この仮想ストレージ内で、HDDのI/Oの状況をコントローラが監視して動的に再配置を行い、ボトルネックが発生しないようにしている。またストレージの物理容量が足りなくなった際には、ストレージプールにHDDを追加すると、すべてのボリュームから利用可能な空間として認識されるほか、ボリュームの容量変更も非常に簡単に、しかも運用中に実施可能になっていることから、管理者の負担は相当に減少するという。
「データ容量がどんどん増えてきているものの、エンジニアはそう簡単に育成できない。したがって、大きな容量をどれだけ少ない人数で管理できるかがポイントになるが、EVAが持つこうした機能を利用すれば、ストレージ環境の設計にかかる時間を節約できる」(エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ストレージ・ワークス製品本部 プロダクト・マーケティング部の平塚浩部長)。
なお、ハイエンド製品の場合は、提案から販売まで自社だけで完結できるのに対して、EVAがターゲットとしている中規模ストレージ環境では、SIerをはじめとしたパートナーとの協業が重要だという。平塚部長はこの点に関して、「(他社製品では)仮想化機能が絵に描いたもちになってしまっている部分もあるだろう。しかし、当社ではワールドワイドですでに実績を出しており、ユーザーにも評価いただいている」と述べ、日本HP製品ならではの特徴を訴えてSIerにアピールし、販売を拡大してもらえるように努力するとしたほか、「トレーニングなどの手段によっても、長所を理解してもらいたい」とした。
EVAはすでにEVA 3000とEVA5000の両製品が提供されているが、今回はEVA 4000/6000/8000の3モデルが発売される。このうちEVA 4000は最大16.8TBまで、同 6000は最大33.6TBまで拡張可能なアレイ装置。両者は共通のアーキテクチャを採用しており、必要なコンポーネントを追加購入すれば、EVA 4000から同 6000へのアップグレードも可能だ。またEVA 8000は、EVAシリーズの最上位モデルにあたる製品で、EVA 5000と比べ、シーケンシャルアクセス時で約3倍、ランダムアクセス時でも約30~40%の性能向上が見込めるという。容量も、EVA 5000の倍以上にあたる最大72TBまで拡張できる。
■ 日本HP初のディスクtoディスクバックアップストレージ
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VLS 6000シリーズの動作概要
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またVLS 6000シリーズは、日本HPでは初めてとなるニアオンラインストレージ。FCやFATAと比べて安価なSATA HDD(RAID 5構成)を搭載し、サーバーからは仮想的なテープライブラリとして認識される。ユーザーはこれを用いると、テープライブラリ使用時と比べてバックアップ時間の短縮が図れるほか、ファイル単位での迅速なデータ復旧が可能になる。また、テープの物理的エラーによる失敗を排除できるという。もちろん、VLS 6000シリーズに書き込まれたデータは、必要に応じてテープドライブ/ライブラリへ転送することも可能だ。価格は、下位モデルのStorageWorks 6105 VLSで、367万5000円から。
EMLシリーズは、最大構成で442スロットまでの拡張を行える、中規模向けのテープライブラリ。エンタープライズ向け「ESLシリーズ」、小規模環境向け「MSLシリーズ」の隙間を埋める製品とのことで、Ultriumテープドライブを最大16台まで搭載できる。価格は546万円より。
■ URL
日本ヒューレット・パッカード株式会社
http://www.hp.com/jp/
ニュースリリース
http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2005/fy05-097.html
( 石井 一志 )
2005/05/19 19:34
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