Enterprise Watch
最新ニュース

「業界に敵なし」次世代SPARC系CPUの低消費電力をアピールするサン


Niagaraの概要

マーケティング統括本部ストラテジスト 野瀬昭良氏

Niagaraに適した領域
 サン・マイクロシステムズ株式会社(サン)は、2006年初頭にリリースを予定している次世代SPARC系プロセッサ(コードネーム:Niagara)について、既存のプロセッサに比べて消費電力あたりの性能が劇的に向上するという優位性を、7月26日に開催したプレス向け説明会で示した。

 Niagaraは、SPARCコアを持つ次世代プロセッサで、1プロセッサ内にコアを複数搭載するマルチコア設計と、コア内で複数のスレッドを同時に実行するCMT(Chip Multi Threading)技術を採用する。最大構成時には4スレッドの同時処理が可能なコアを8つ搭載し、32スレッドを同時実行が可能になるという。複数スレッドのハンドリングはSolarisによって行い、オーバーヘッドを最小化することができるという。

 営業統括本部OEM営業本部 主幹部長の栗原伸浩氏によると、スレッドを同時に実行できる数は大きいが、全体的にはシンプルな設計となっており、UltraSPARC IIクラスのパイプラインを極小化し数多く乗せているとのこと。クロック周波数やキャッシュメモリ搭載量、搭載トランジスタ数なども「バランスがとれた」値に抑えられており、1プロセッサあたりの消費電力は70W以下になるとしている。ちなみにXeonはシングルスレッドで100Wを超える。

 かつてプロセッサをはじめシステムの性能向上は、消費電力量の増加を大きな問題とせず進められてきたが、同社マーケティング統括本部ストラテジスト 野瀬昭良氏によると、昨今データセンターにおいてハードウェアの消費電力や設置スペースの増加が大きな問題となりつつあるという。野瀬氏は「ハードウェアの低価格化にともない、TCOの中で電気料金や設備費用を含めた運用コストの占める割合が増加している」と指摘し、米国の調査結果から「電力や空調設備などのコストを合わせると、毎月の消費電力1KWあたり125ドルかかっている」と述べた。

 Niagaraは、こうした問題に対し、マルチコアやCMTにより「消費電力あたりの処理性能では業界で敵なし」の省コスト・省スペースを実現する「新世代のエコ・プロセッサ」であるという。ただし、設計がシンプル化された分、大きなキャッシュや拡張機能は搭載されていないため(キャッシュ容量は3MB)、複雑なデータ処理には不向きであり、数多くの単純な処理を繰り返し行うWebサーバーのようなフロントエンド用途に最適であって「すべてに万能というわけではない」(野瀬氏)とのこと。

 同社はこうした特徴を持つNiagaraを搭載するサーバーとして、省スペースなラックマウントサーバーや“新世代”ブレードサーバーを発売する予定としている。“新世代”とは、「Niagaraが出れば、現行のブレードサーバーはほぼ無意味化する」(野瀬氏)との観測による同社における位置づけだ。

 なお、同社は2004年にCMT技術を採用したUltraSPARC IVと、このデュアルコア設計のUltraSPARC IV+、およびこれらを複数基搭載したハイエンドサーバーをリリースしているが、Niagaraはこれらと若干位置づけが異なり、マルチコアのNiagaraを1基搭載したサーバーを発売するとのことで、マルチプロセッサモデルを提供する予定はないという。



URL
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/

関連記事
  ・ 米Sunの技術担当上級副社長、SPARCやSolarisのロードマップを解説(2004/10/15)
  ・ 米Sunトレンブレイ氏「CMT技術により、SPARCは2~3年で15倍、30倍の性能を発揮する」(2004/06/09)


( 朝夷 剛士 )
2005/07/27 13:05

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.