Enterprise Watch
最新ニュース

IBM、Systemに回帰する新方針「IBM Systems Agenda」を宣言


システム製品事業担当・出澤研太執行役員
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月28日、システム製品事業における今後5年間の方針として、新たに「IBM Systems Agenda」を宣言。それに準拠した第1号製品として、メインフレーム「IBM System z9 109」を発表した。

 かつての名機「System360」を皮切りに、「System」の名称を使用してきたIBMは、一時、ハードウェア製品群の名称を「eServer」へと変更していたが、今回再び、Systemの名称を採用したことになる。

 日本IBMのシステム製品事業担当・出澤研太執行役員は、「サーバー単体でとらえるのではなく、トータルシステムとしてとらえることが前提となっていること、さらに、ハードウェアのなかにこれまで別個に提供してきた技術が含まれ、システムとして提供されていることなどがその要因。これまでの方針を変えるというのではなく、従来の方向性をさらに進化させ、サーバー単体ではなく、インフラストラクチャの面から、製品強化を行っていくことを狙う」などとした。

 今後、発表されるIBMのシステム製品は、すべてSystemの名称が使用されることになり、新製品の発表にあわせて順次、名称が変わることになる。2006年上期にはすべてのシステム製品が「IBM System」の名称に変更することになるという。


3つの観点からIBM Systems Agendaを宣言

IBM Systems Agenda
 IBM Systems Agendaは、顧客のオンデマンド・ビジネス実現をITインフラの面から支援するための今後の方向性を宣言したもので、「Virtualization」、「Openness」、「Collaboration」の3点から支援を行うとする。

 Virtualizationでは、システム全体にわたる仮想化によってITインフラの複雑さを解消し、運用、管理の最適化と高い柔軟性を実現するという。

 具体的な製品として、Virtualization Engine(VE) 2.0を発表。従来のVE 1.0で実現した仮想化技術を進化させ、IBMのすべてのサーバー製品での動作を可能としたほか、ベンダーを意識せず、異機種間のサーバー、ストレージ、ネットワークなどのインフラ全体を最適化できるという。

 Opennessでは、オープンコミュニティへの参画や貢献、設立および業界標準技術への積極的な実装を行う。

 同社では、昨年12月にPOWERプロセッサのソースを公開するpower.orgを開設したが、このほど新たにblade.orgコミュニティをブロケード、シスコ、シトリックスシステムズ、インテルなどともに設立。IBMとインテルが共同開発したBladeCenter向けソリューションの普及促進に取り組むという。

 「これまで以上に、業界標準の積極的活用と既存資産のさらなる活用と革新的な統合を実現したい」(出澤執行役員)としている。

 Collaborationでは、顧客のイノベーションを支援するためにIBMのテクノロジーを提供することを目的とすると同時に、「POWERプロセッサを医療機器、車、ゲーム、携帯電話などのコンピュータ分野以外をターゲットとし、これをテクノロジー+ソリューションにまで踏み込んだ形で提供する」とした。


z990の約2倍の性能を実現するz9

zSeries事業部長・渡辺朱美理事

z9 109の位置づけ
 IBM Systems Agendaの第1号製品として発表されたIBM System z9は、過去3年間にわたり、12億ドルの開発投資を行い、5000人の技術者が参画して開発した同社メインフレームのフラッグシップマシンで、IBM System z9 109として、S08/S18/S28/S38/S54の5つの物理モデルを用意している。

 「System z9は、Zアーキテクチャーとしては、第3世代となるもの。これまでビシネス目的に開発されたシステムのなかで、最もオープンかつ信頼性が高いものになる」(日本IBM zSeries事業部長・渡辺朱美理事)と位置づけている。

 従来のeServer zSeries z990に比べて、2倍以上にあたる一日あたり10億トランザクションの処理を可能とし、スケーラビリティでz990の約2倍となる54Way、メモリも同2倍の512GB、さらに、LPAR(ロジカルパーティショニング)数では60LPARと約2倍となっている。

 「コストパフォーマンスでは、z990と比較して35%の向上を実現している」(渡辺事業部長)という。

 また、OSとして、新たにz/OSバージョン1リリース7を新たに発表している。

 「主要なターゲットとしては、Linux専用機としての統合もしくは新規稼働、さらに既存のzSeriesからの移行およびIFL(Linux on zSeries and Integrated Facilities for Linux)、zAAP(ザープ=System z9 Application Assist Processors)の追加による低コストでのシステム再構築などがある」(渡辺事業部長)とする。

 Linuxへの統合では、ホスティングサービスへの適用、オープンCOBOLなどによる新規アプリケーション構築、ERPパッケージを使用した新規アプリケーション構築などを想定。また、既存zSeriesからの移行では、フロントのEdge+WebサーバーをWAS、Linuxを利用して統合する基幹Web連携のほか、統合DWHサーバーとしての活用を想定している。


IBM System z9の特長 z9 109の内部構造 z9 109のプロセッサ・ブック


URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-6.ibm.com/jp/press/20050728002.html
  http://www-6.ibm.com/jp/press/20050728003.html
  http://www-6.ibm.com/jp/press/20050728004.html
  http://www-6.ibm.com/jp/press/20050728005.html
  http://www-6.ibm.com/jp/press/20050728006.html


( 大河原 克行 )
2005/07/28 16:37

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.