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日本IBM、バックアップ・リカバリ高速化を支援する仮想テープ装置-最大容量は46TB


IBM TS7510 Virtualization Engine

仮想テープストレージのコンセプト

ストレージ・ソリューション担当部長の佐野正和氏
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は10月19日、HDDを利用した仮想テープストレージ装置「IBM TS7510 Virtualization Engine」、中規模向けテープライブラリ「IBM System Storage TS3310」、高速型テープドライブの最新モデル「IBM System Storage TS1120」の各製品を発表した。いずれも、10月28日より出荷が開始される予定。

 日本IBMでは、オンデマンドビジネス実現をITインフラから支援するとして、7月に「IBM Systems Agenda」という方針を発表しているが、今回の製品は、7月に発表されたメインフレーム「IBM System z9 109」、10月に発表されたUNIXサーバー「IBM System p5」に続く第3弾。この方針表明後に発売されたサーバーは「IBM System」の名称で提供されることになったが、ストレージも名称が変更され、「IBM TotalStorage」として提供されていた製品は、今後発売されるものから、「IBM System Storage」の名称に変更されるという。

 今回発表された製品のうちTS7510は、HDDを利用して高速なバックアップを行うための仮想テープライブラリ。サーバーからはテープストレージとして認識され、これまで通りのバックアップ手順で作業を行うことができるが、実際にはディスクストレージであるため、非常に高速なバックアップ、リカバリを実現できるという。使用可能容量は基本ラック構成時で5~23TB、拡張ラック構成時で25.5TB~46TB。もちろん、バックアップしたデータを実際のテープ装置へ移動、もしくはコピーする機能も備えており、可用性や使用効率を向上させることが可能になっている。ただし、現段階で対応するテープ装置は、日本IBMの3584、3494の両テープライブラリのみ。

 またTS7510は、標準では最大512台、高可用性構成時では同1024台のテープドライブがあたかも存在するかのように動作させられることから、サーバーの台数が多く存在する環境でも、多数のサーバーのバックアップを同時にこなせるとのこと。「サーバーが100台あってもテープ装置はそれよりも少ないのがふつう。このため、必要度の低いデータのバックアップをとらないなど、“目をつぶった”運用になっているが、仮想化して多重度をあげることで、この問題が解決できる」(ストレージ・ソリューション担当部長の佐野正和氏)。

 さらに同製品では、ディザスタリカバリ向けの「ネットワーク複製機能」を搭載する点も特徴という。同機能は、仮想ボリュームイメージをIPネットワーク機能で転送するもので、これを利用すると、ローカルバックアップの仕組みを用いて災害対策システムを構築できるようになるため、コスト、工数の面で非常に有利になるとのこと。なお、WAN回線利用時の効率化・セキュリティ確保のために、ネットワーク暗号化機能、圧縮機能も利用できるようにしている。

 対応環境は、IBM System p5、同 z9(Linux)、eServer xSeriesのほか、HP、サンのサーバー、Windows/Linuxをサポートするサーバー。価格は2744万8000円(税別)より。


マルチパス対応のテープライブラリと、転送速度100MB/秒のハイエンド向けテープドライブ

TS1120とLTO3ドライブとの比較
 一方、TS3310は中規模向けのテープライブラリで、LTO3テープドライブを、5Uの標準構成時に最大2台まで、14Uの拡張構成時に最大6台まで、内部に搭載できる。収納可能な最大テープ数はそれぞれ30巻、122巻で、拡張構成時の総容量は51.2TB(非圧縮)に及ぶという。

 特徴は、「テープライブラリとしては珍しくマルチパスに対応すること」(佐野氏)で、データ、制御信号ともにフェイルオーバーが可能。また、拡張構成でTS3310を購入した場合、必ず全機能が備わったユニットが出荷されるが、初期状態ではそのうち半分だけが有効になっており、ユーザーは必要に応じて残りの半分を有効にする拡張ライセンスを購入するようになっている。佐野氏は、この「キャパシティオンデマンド」によって、初期投資を削減することが可能になっていると説明した。価格は541万5000円(税別)より。

 最後のTS1120は、日本IBMが提供している高速テープドライブ「3592」の後継として提供される製品。100MB/秒(非圧縮時)の転送速度、テープカートリッジ1巻あたり100GB(同)の容量を実現しており、速度、容量を重視するハイエンドのユーザーに適しているという。また3592のテープカートリッジとは互換性を持つほか、一度書き込んだデータの上書きを防止するWORM(Write Once Read Many)メディアも用意されている。価格は584万4000円(税別)より。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/20051019001.html

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( 石井 一志 )
2005/10/19 16:31

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