Enterprise Watch
最新ニュース

日本AMD、クアッドコアOpteron“Barcelona”を正式発表


日本AMDの森下正敏社長

クアッドコアOpteronは標準モデルから提供され、順次ラインアップを拡充していく予定
 日本AMD株式会社は9月11日、コードネーム「Barcelona(バルセロナ)」と呼ばれていた、サーバーおよびワークステーション向けの「クアッドコアAMD Opteronプロセッサ」(以下、クアッドコアOpteron)を発表した。

 日本AMDの森下正敏社長は、「クアッドコアOpteronは、前評判が高く、Barcelonaといった方がすでになじみ深いかもしれない。当社では、2003年4月に、64ビットサーバー用プロセッサとして、Opteronを投入しており、今回の新製品は、そのクアッドコア版。Opteronを投入以来、最大の変革となる。4つのプロセッシングコアを、ひとつのシリコンダイに集積した世界初のx86プロセッサであり、真のクアッドコアプロセッサである。設計段階からアーテキクチャを最適化しており、その優位性を十分に発揮したもの。絶対性能、省電力性、拡張性での優位性を発揮し、電力効率、仮想化、投資保護の実証といった今日のデータセンターにおける種々の課題が解決できる。今回の新製品によって、業界におけるテクノロジートレンドを、さらにリードしていく」とした。

 クアッドコアOpteronは、8300シリーズおよび2300シリーズが用意され、主要マーケット向けの標準モデルとして、2.0GHz版の8350および2350を投入。今年度第4四半期までには上位モデルを投入する。また、高密度ラックおよびブレード向けの低消費電力モデルとして、8347HE、2347HEなどを用意。発表時には1.9GHz版までを投入し、第4四半期には上位モデルを投入する予定。さらに、HPC向けのハイパフォーマンスモデルとして、第4四半期には2.5GHz版を投入する計画。

 1000個単位での1個あたりのサンプル価格は、エントリーモデルで200ドル、ハンエンドモデルで1000ドル程度とした。

 独自のアーキテクチャーにより、既存のOpteronプラットフォームとの下位互換性を確保。整数および浮動小数点演算性能を同じ消費電力環境において50%向上したほか、仮想化パフォーマンスの強化、ワット性能(消費電力あたりの処理能力)の向上も実現している。


米AMD 上級副社長兼CTOのフィル・へスター氏

LS-DYNA衝突シミュレーションによる処理速度比較

ACPの概要
 米AMD 上級副社長兼最高技術責任者(CTO)のフィル・へスター氏は、「4億を超えるトランジスタは、ロケットテクノロジーといえるもの。だが、単なるクアッドコアの技術進化ではなく、キャッシュの大幅な改良、浮動小数点演算の大幅な改良や、仮想化にも最適な環境を実現している。また、IBMと共同開発した65nmテクノロジーや、同テクノロジーを採用した独ドレスデンのFab36における生産によって、安定した歩留まり率を実現するなど、急速な需要の立ち上がりにも対応できる体制を確立している」などとした。

 ヘスター氏は、デュアルコアCPUとクアッドコアCPUと、同じ消費電力でありながら50%以上の性能向上を図っていること、仮想化技術においても2倍近い性能が発揮されていること、競合他社製品に比べて低い電力消費ながらも、25%程度の性能向上が発揮されていることなどをデータを示しながら強調した。

 また、日本AMDのマーケティング本部 CPUプロダクトマーケティング部、山野洋幸部長代理は、電通国際情報サービスのLS-DYNA衝突シミュレーションによる処理速度比較、日本仮想化技術の仮想化環境における処理性能の比較データを提示。加えて、インテルのXeonプロセッサとの比較において、消費電力が10~20%程度低いことをデモンストレーションしてみせた。

 一方同社では、今回の65nmによるクアッドコアOpteronに続き、2008年には45nmプロセスによるクアッドコアとして、開発コードネーム「Shanghai」を投入することを紹介。6MBのL3キャッシュを搭載することなどを示した。2009年には、オクタルコアによる第3世代プラットフォーム製品を投入し、次世代メモリのDDR3などを採用する計画。また、このクアッドコア技術をクライアントPCにも展開。AMD Phenomプロセッサとして、2007年12月にも出荷する計画である。

 「安定したプラットフォームによって、長期にわたる価値と計画的なシステム移行をパートナーとエンドユーザーに提供していく」(ヘスター氏)とした。

 また、同社では、新たにACP(Average CPU Power)という考え方を提唱した。

 ヘスター氏は、「TDP(Thermal Design Point)は、最大熱設計枠を示すもので、現実社会での最大消費電力とは異なる。これによって、データセンターやITマネージャーは、誤った過大な電力見積もりを迫られ、過剰投資や無駄を招くことにつながっている。ACPは、より現実的なものであり、TDPよりも平均で20%程度低くなる。この指標を活用する方が現実的である」とした。

 同社では、クアッドコアOpteronから、この指標を採用していくという。


発表の場には、クアッドコアOpteronを採用する各社の幹部が勢ぞろいしている

発表会場には、クアッドコアOpteronの搭載を予定する、パートナー各社のサーバーも展示されていた。これは日本IBMのサーバー

こちらは日本HPのラック型サーバー
 一方、会見には、クアッドコアOpteronを採用する各社の幹部が出席した。

 イージェネラの大木稔社長は、「当社のサーバーは、ミッションクリティカルに分野において採用されており、今回のネイティブクアッドコアCPUを搭載することにより、ますます優位性が発揮でき、ビジネスが拡大する」と話す。またクレイ・ジャパン・インクの中野守社長は、「単位面積あたりの性能が向上できる点に期待できる。100テラFLOPSを実現するには、100キャビネットが必要だったが、これが25キャビネットで済む。スーパーコンピュータで実現したテラFLOPSを、研究所以外の民間企業にも展開できる」とした。

 サン・マイクロシステムズの末次朝彦社長は、「クアッドコアをラインアップに加えることで、製品ポートフォリオか拡充する。AMDは、性能向上と、環境への配慮に対して妥協のない取り組みを行っており、当社のSun Fireの搭載にも最適なもの」、デル エンタープライズマーケティング本部の桜田仁隆本部長は、「クアッドコアCPUを搭載した製品を、今後1カ月程度で日本の顧客に提供したい。絶対性能および消費電力は、データセンターに要求されている重要な要素。これにより、仮想化ビジネスも伸ばしていける」とした。

 日本IBM システム製品事業システムx事業部のデイビッド ラローズ事業部長は、「AMDとは長年の強固なパートナーシップによって結ばれている。新たなCPUは、当社が取り組んでいる世界的なエネルギー問題の解決にも応えるものになる。将来に向けてもさらに協力関係を推進する」とし、日本HP エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダードサーバ製品本部の上原宏本部長は、「満を持して投入する製品。顧客からの要求が高く、低消費電力を最大限に活用する顧客に対して、自信をもって提供していく。年内には、ProLiantの主要なラインアップに搭載する」とコメント。富士通 富田達夫経営執行役常務は、「国内ベンダーとして初めて採用した。当社では、省電力化において当社の狙いと合致している。この分野で必要とされる性能を実現していくものだと考えている」とした。

 一方、日本AMD マーケティング本部長の吉沢俊介取締役は、「富士通以外の日本のベンダーとの関係については、現時点では明らかにはできないが、ユーザーからクアッドコアOpteronプロセッサに対する要求が高く、それを考えれば、取り扱いの可能性も考えられる。その全容は時期がくればわかる」などとした。



URL
  日本AMD株式会社
  http://www.amd.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.amd.com/jp-ja/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~120170,00.html

関連記事
  ・ 日本AMD、2007年のキーワードは“ベター・バイ・デザイン”(2007/01/24)


( 大河原 克行 )
2007/09/11 17:29

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.