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サン、運べるコンテナ型データセンター「PROJECT BLACKBOX」国内初お披露目


PROJECT BLACKBOX
 サン・マイクロシステムズ株式会社(以下、サン)は11月12日、移動可能なコンテナ型データセンター「PROJECT BLACKBOX(コードネーム)」の説明会を開催。実物を展示し国内での初お披露目を行った。

 PROJECT BLACKBOXは、ISO標準の20フィート輸送用コンテナにIT機器を搭載することで、車両、鉄道、船舶、航空機などあらゆる移送を可能にしたモジュラ型データセンター。通常のデータセンターを構築するよりも迅速に、段階的に構築することが可能で、従来比およそ10分の1の時間で高密度コンピューティング環境を構築できるという。

 高さ2.6m×幅2.5m×奥行き6.1mほどのコンテナ内に、25kWの電力を供給可能なサーバー・ストレージ機器用のラック7台と、制御機器を収容するラック1台の計8台のラックを搭載可能。また、一般的なデータセンターの電源容量が150W/平方フィートであるのに対し、PROJECT BLACKBOXでは、最大1250W/平方フィートを実現することで、エネルギー、スペース、ならびに性能の利用効率を最適化することができる。

 計8台のラックには、サン製品、サードパーティ製品を含む、サーバー・ストレージ・ネットワークの混在環境が実現でき、最大で700CPU、2240コア、3PBのHDD容量まで拡張可能。


迅速な展開が可能 外部形状と内部構造 拡張性

システムズ・ビジネス統括本部 主幹部長の馬場寿氏
 こうした「迅速性」「可搬性」、ITシステムの「高密度化」のほか、環境保全や経済性を実現する「エコ」も、PROJECT BLACKBOXの特長の1つ。先進的な冷却機構により冷却コストを約40%削減できるほか、外部からシンプルにAC電源を引き込めるため、太陽や風力などのエネルギーを動力源とすることもたやすいという。

 用途としては、データセンターの増強、暫定的な利用、災害時などの特殊利用などが考えられる。「例えば、野外や既存倉庫にPROJECT BLACKBOXを導入すれば、データセンターのスペースを気にせずに能力拡充が可能。暫定的利用としては、データセンター移行時に臨時データセンターとして利用すれば、余計なコストがかからずに済む。暫定的に使った後は、遠隔地に輸送して、ディザスタリカバリサイトとして再利用することも可能だ。さらに可搬性に優れることから、へき地にシステムを持ち込んで、災害時の人道支援に役立てることもできる」(システムズ・ビジネス統括本部 主幹部長の馬場寿氏)と、その可能性は未知数といえる。

 またコンテナ単位なので、企業のサービス成長度に合わせて段階的に導入すれば、データセンター能力を効率よくコントロールすることが可能。すなわち、「通常、データセンターは、ある程度能力的に余裕を持って構築される。そのため稼働後しばらくは、能力超過となる。それが段々と能力不足になっていき、増設に迫られることになる。大規模な単位でしか構築できないデータセンターでは、必要な能力と実際の能力にこうした“ぶれ”がしばしば発生する。モジュール型のPROJECT BLACKBOXでは、この“ぶれ”を最低限に抑えることができる」(馬場氏)というわけだ。設備投資費の巨額さを考えれば、合理的な投資ができることのメリットは大きい。


エネルギー効率の改善 先進的な冷却機構-中央の通路を挟んで両側に並べられたラックを、独自のシステムで冷却する。ラックの横には熱交換機とファンが備えてあり、空気の流れを閉じたループとすることで、より効率的な冷却が可能 可搬性-保証するのは移動できるだけの耐久性だが、実際にはマグニチュード6.7の耐久性テストをパスしている

代表取締役社長の末次朝彦氏
 まだ製品化されているわけではなく、今後の検討事項は多い。価格もコンテナ当たり1億円以下といった漠然とした情報しか提供されていないが、代表取締役社長の末次朝彦氏は、発表後2~3年で数十台の売り上げをめざすと意気込みを見せた。

 「データセンターでは消費電力が2000年から2005年まででおよそ2倍に増えている。2010年にはさらに倍加すると見込まれており、60%のデータセンターが電力、空調、スペース不足といった問題に直面するとされている。さらに、データボリュームの増加やインターネットサービスの多様化により、必要な電力量は、いずれハードウェアコストを超えるともいわれる」(末次氏)。

 打開策として、今回、満を持して公開されたPROJECT BLACKBOX。2008年の早い時期には、正式発表となる予定とのことだ。


説明会では屋外に実コンテナを展示することで、可搬性を証明した 出入り口-反対側にもあり、通り抜けることが可能 入り口脇の配電盤

内部天井の様子。可視性の高い蛍光灯が採用されている 内部の様子 1台のラックが引き出されている様子

外部のパワーポート 外部電源から伸びる電源ケーブル 屋外設置のためのスマートなデザインにしたとのこと。緑色のロゴが目を引く


URL
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/
  PROJECT BLACKBOXページ
  http://jp.sun.com/blackbox/blackbox-tour/


( 川島 弘之 )
2007/11/12 16:24

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