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ファイル仮想化によるメリット
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F5ジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏
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F5ネットワークスジャパン株式会社(以下、F5ジャパン)は1月24日、ファイル仮想化アプライアンス「Acopia ARXシリーズ」に関する説明会を開催し、その特徴を解説した。これは、米F5が買収した米Acopiaの製品をベースにしたもので、同社に日本法人がなかったため、国内で本格的に展開されるのは初めてという。なお、販売は2007年12月よりすでに開始されている。
Acopia ARXシリーズは、企業内に散在するNASやファイルサーバーを仮想化するためのアプライアンス。現在の企業では膨大なファイルが日々生まれ、ファイル/ストレージの容量は加速度的に増えている。またコンプライアンス上の要件などから、長期保存が求められるデータも増加しており、管理者は、増え続けるデータの管理に悲鳴を上げている状態だという。さらには、アプリケーションごと、サーバーごとにストレージが割り当てられているケースが多く、各ストレージの利用率やアクセス負荷にばらつきが生じてしまうことも、ストレージ管理上の課題になっている。
このような状況を改善するために生まれてきたのが、ストレージ仮想化のソリューションで、ストレージベンダーを中心に、自社のポートフォリオへこの分野を組み込む動きが加速。F5が買収したAcopiaもその1つで、同社はNAS仮想化ソリューションを自社へ取り込むことで、アプリケーションを的確に・安全に・高速にユーザーへ届ける「ADN(Application Delivery Networking)コンセプトの領域をデータの部分にまで拡大できるようになった」(F5ジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏)。
それを実現するARXシリーズは、「ユーザーとストレージを仮想レイヤで切り離す」(F5のデータソリューション事業部 マーケティング担当シニアディレクター、カービー・ウォズウォース氏)ため、サーバー群とストレージ群の中間へインラインで設置する形態を採る。直接的なメリットとしては、ストレージがユーザーからは大きなプールとして見えるようになり、これまでのように個々の物理的なデバイスを意識する必要がなくなるため、データへのアクセスや検索が容易になる点が挙げられる。またユーザーが保存するデータは、ARXシリーズがストレージ使用率などを考慮して適切に振り分けることから、ストレージ全体で利用率平準化を行える点も大きいという。
さらにARXシリーズは、異なるベンダーのプラットフォーム間であっても、アクセスをまったく中断させずにデータを移動できるマイグレーション機能や、特定のファイルサーバー・NASへの負荷が集中しないように、ファイルへのリクエストを動的に分散させ、アプリケーションのパフォーマンス低下を防ぐロードバランシング機能なども備えており、ストレージ管理者の負担軽減に貢献するとした。
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F5のデータソリューション事業部 マーケティング担当シニアディレクター、カービー・ウォズウォース氏
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最上位製品のシャーシ型「ARX6000」
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エントリー製品の「ARX500」
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加えて、ポリシーベースのILM(情報ライフサイクル管理)を実現できる点も特徴。高価なプライマリストレージとそれよりも安価なセカンダリストレージを導入する階層型ストレージ環境は、今日の企業では採用が増えているものの、どのデータをどこに格納するか、といったポリシーを人力で適用していくのは限界がある。しかしARXシリーズを利用すれば、ポリシーの適用を自動化可能で、例えば、90日間書き込みがないデータを、プライマリストレージから自動的にセカンダリストレージへ移動するように設定しておくことにより、高価なプライマリストレージを不必要なデータから解放し、より必要な業務に割り当てられるようになる。
またウォズウォース氏は「一度できあがったデータは毎日バックアップされる必要がない、という点は見落とされがちだ」という点を指摘。「低い階層のストレージのバックアップ頻度は低くても良いのだから、適切なポリシーを適用した階層ストレージの導入によって、バックアップ所要時間の劇的な削減が可能になる」と述べ、ILM機能はバックアップコストの削減にも効果的だとした。同氏によれば、バックアップメディア代の削減だけで、相当な金額を節約できたケースもあるという。
アプライアンスは、CIFS(Windows)/NFS(UNIX/Linux)の両プロトコルをサポートし、クラスタ構成による冗長化にも対応。ストレージのベンダーには依存しないので、マルチベンダー環境に導入できる。
製品ラインアップには、1Uボックス型のエントリーモデル「ARX500」、2Uボックス型のミッドレンジモデル「ARX1000」、13Uのシャーシ型モデル「ARX6000」と、利用環境に合わせて選択できる3製品を用意した。スループットと管理できるメタデータの大きさ(ファイル数)などに違いがあり、エントリーのARX500では、スループット100MB/秒、ファイル数1億2800万まで、データセンター向けのARX6000ではスループット2GB/秒、20億ファイルまでの環境で利用できるという。価格は、ARX500が660万円から。
ウォズウォース氏は、「同シリーズは需要のあるソリューションだと思っている。買収前(のAcopia)は日本に足場がなかったために導入は進まなかったが、F5はすでに日本で足場を築いているので、大きく期待している」としたほか、長崎社長も「どんどん広がると思っているこの市場で、数年以内にマーケットリーダーになりたい」と意気込みを示す。同社では、製品単体での販売に加えて、WAN高速化製品「WANJet」とあわせた広域ファイルソリューションなども顧客に訴求し、拡販を図る考えである。
■ URL
F5ネットワークスジャパン株式会社
http://www.f5networks.co.jp/
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・ 「ADNでアプリケーションとネットワークの距離を縮めていく」-米F5上級副社長(2007/12/07)
・ F5ジャパン、インライン型のNAS仮想化アプライアンス「Acopia ARXシリーズ」(2007/12/17)
( 石井 一志 )
2008/01/24 15:09
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