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日本HP、データセンター省エネ化に向けた新製品・新ソリューション

水冷ラック、直流電源モジュール、空調自動制御など

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は2月21日、グリーンITの実現をめざしてデータセンターの電力消費量を抑制する新製品・新ソリューションを発表した。新製品としては、直流電源モジュールの「HP BladeSystem c7000 DCパワーモジュール(以下、c7000 DCパワーモジュール)」と水冷ラックの「HP モジュラークーリングシステム Generation 2(以下、HP MCS G2)」を、新サービスとしては、データセンターの空調の最適化と自動制御を行う「HP ダイナミック・スマート・クーリング・ソリューション(以下、HP DSCソリューション)」を投入。同日から受注を開始する。

 データセンターでは、省エネにまつわるさまざまな問題が浮き彫りとなっている。その対策として「消費電力の削減」というキーワードをあちこちで耳にする昨今だが、エンタープライズ ストレージ サーバ事業統括 ISSビジネス本部 プロダクト・マーケティング部の山中伸吾氏は、「何でもかんでも消費電力を下げればよいわけではなく、消費電力抑止と処理能力を両立しなければ、真のグリーンIT実現は難しい。もっといえば、チップレベルからデータセンター全体に至るシステム全体を考慮する必要がある」と指摘。その上で低消費電力CPU・メモリの採用から、システムのブレード化・電力監視ツール・仮想化・データセンターの冷房効率向上などまで、全領域をカバーするという豊富な同社の製品ポートフォリオをアピールした。


エンタープライズ ストレージ サーバ事業統括 ISSビジネス本部 プロダクト・マーケティング部の山中伸吾氏 グリーンIT戦略を支える日本HPの製品ポートフォリオ

c7000 DCパワーモジュール
 今回の新製品はそれらのうち、電源モジュールとラックレベルでの対策となる。

 c7000 DCパワーモジュールは、c7000を直流電源環境でも利用可能にする製品。一般的なシステムは交流電源で動作するが、データセンターに直流電源の設備が存在する場合は、このDCパワーモジュールを利用した方が省エネになるという。山中氏によれば「一般的にシステム内部、特にCPUなどは最終的に直流電源が必要となる。そのため、交流方式の設備の場合、システムにパワーサプライする際に交流・直流の変換が行われることになり、それが熱を発生して無駄な消費電力となってしまう。もしも直流電源の設備がはじめから使えるのであれば、変換の回数を少なくすることができるため電力効率が向上する」のがその理由だ。

 「直流電源は電話交換機などで利用されていたが、電話交換機自体の小型・高性能化により余剰となっているデータセンターがある。また消費電力を削減するために、新規に直流電源を導入するデータセンターも増えており、そういったところが同製品のターゲット」(山中氏)とのこと。

 c7000エンクロージャ1台に1個搭載可能で、DC-36VからDC-72Vまでの幅広い入力電圧をサポートする。価格は、c7000 DCパワーモジュールが11万5500円から、対応するパワーサプライキットが23万1000円から。


HP MCS G2
 一方のHP MCS G2は、2006年6月に発表した水冷ラックの後継機種で、拡張性と冷却能力を強化した製品。具体的には冷却能力を30kWから35kWに強化。1ユニットで最大2台の42Uラックを冷却できる(2台のラックを冷却する場合は、ラック当たり17.5kW)。サーバー台数としては、最大70台のラックマウントサーバー、またはサーバーをフル搭載したHP BladeSystem c-Classエンクロージャ6台を冷却できる。かつHP MCS G2自体の消費電力は、1Uサーバーの2~3台分程度なため、空調による消費電力を大幅に削減するという。

 価格は336万円から。


熱問題の一例。ラック上部にたまった暖気を取り込んでしまい、サーバー機器温度が上昇 仕様概要図。熱交換モジュール、ファンモジュールなどから構成され、ラック下部から冷温水の排出入を行う

HP DSCソリューションの概要図

主な構成製品
 最後のHP DSCソリューションは、データセンターの空調・熱環境を改善し、制御の自動化までを実現するサービス。同様のものとしては、2007年2月に、現行のデータセンターの状態を評価する「サーマル・アセスメント・サービス」と、新規データセンター内の最適な機器レイアウトを提案する「サーマル・プランニング・サービス」を発表しているが、HP DSCはこれらの上位サービスという位置づけで、より具体的な内容となっている。

 大きく2つのステップに分けることが可能で、まず日本HPのエンジニアがデータセンター内の温度環境、空調能力、電源容量などを加味しながら、シミュレーションソフトなどを使って現状を分析。平常時から一部機器の障害発生時までを想定して空調システム、ケーブル、フロアパネルやラックの配置などを改善する。

 続いて、実際に動的に空調を制御するシステム「HP DSC」を導入する。データセンター内にエアコン制御システム「HP Energy Manager」を設置し、同時に各ラックに5つの温度センサーを取り付ける。このセンサーの情報をもとに、HP Energy Managerがデータセンター内の温度環境を把握して、エアコンの動作を制御するという具合だ。あらかじめ個々のエアコンが冷却可能な領域を可視化する「サーマルゾーンマッピング」も実施するため、データセンター内に局所的に発生した熱問題にも能動的に対応することが可能という。

 テクノロジーサービス統括本部 サービスビジネス開発本部 サービスビジネス開発一部の池田裕之氏は、こうした対策を採っていないデータセンターでは、「室内の温度にかかわらず、すべてのエアコンがほとんど100%に近い率で稼働している。HP DSCソリューションを採用すると、温度環境を的確に把握しながら必要なエアコンを必要な出力で稼働させることが可能なので、(日本HP研究所の実験では)空調にかかる電力コストを年間20~40%削減できた」としている。

 参考価格は、500平方メートル程度・ラック250台の規模で3500万円から、1000平方メートル程度・ラック500台の規模で6100万円からとのこと。


ラックに取り付けた温度センサー 個々のエアコンが冷却可能な領域を可視化するサーマルゾーンマッピング


URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  ニュースリリース
  http://www1.jpn.hp.com/info/newsroom/pr/fy2008/fy08-060.html

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  ・ “環境の巨人”日本HPが世界・国内でのグリーンIT活動を説明(2008/02/18)


( 川島 弘之 )
2008/02/21 16:12

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