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米3PARのマーケティング担当副社長、クレイグ・ヌネス氏
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従来型ストレージ(左)とNearline for Online(右)での手法の違い
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3PAR株式会社は3月18日、SATA HDDを利用してオンラインストレージを構成する技術「Nearline for Online」を発表した。「InServ」ストレージシステムの最新のファームウェアで利用できる。
従来の手法では、データベースやメールなどの高いI/Oスループットが必要なオンラインアプリケーションは、FC(ファイバチャネル) HDDなどを用いた、高速である代わりに高価なストレージを利用するケースが一般的だった。しかし3PARでは、「3つの技術を利用することで、安価なSATA HDDをオンライン/ニアラインの両アプリケーションに適用できるようにした」(米3PARのマーケティング担当副社長、クレイグ・ヌネス氏)という。
まず速度面については、物理ディスクを「チャンクレット」と呼ばれる領域に細分化しI/O速度を稼ぐ「ワイドストライピング」技術でカバーする。「SATA HDDではFC HDDの半分のI/Oパフォーマンスしかない」と指摘したヌネス氏は、ワイドストライピングによって、今までFC HDDでしか使えなかったアプリケーションでも利用可能になるとアピール。続けて、「ボリュームを複数のHDDで構築した場合、パフォーマンスも信頼性も他社と当社の製品ではまったく違う。他社では数個のHDDしか使わないのでそれらに集中的にアクセスがあり、メールやデータベースのI/O要求性能を満たそうとすると、性能の高いものが必要になる。当社ではワイドストライピングによって、SATA HDDでも高いI/Oパフォーマンスが享受可能だ」と述べた。
一方、信頼性はラピッドRAIDリビルドと呼ばれる技術で担保する。「いったん障害が起きても、通常の4倍の速度でリビルドが可能になる」(ヌネス氏)というこの技術も、やはりチャンクレットが鍵を握っている。具体的には、障害が発生したHDD全体ではなく、破損したチャンクレットのみを再構築の対象にすることで、短時間でのリビルドを実現した。パリティは重要度に応じて、2+1(2台につき1台)~8+1(8台につき1台)までの範囲で選択可能という。
最後の3つ目としてヌネス氏が挙げたのは、SATA HDDへの長年の取り組み。SATAの前技術といえるATAの時代から積極的に取り組んできたほか、広範囲の実証テストを続けてきた点を同氏は強調。深くSATA HDDにコミットしてきたからこそ、Nearline for Onlineが実現できたとした。
では、これらの技術によって、ユーザーには何のメリットが生まれるのか。それは、コスト削減だという。「これまでは、管理者が各階層ストレージで必要要件を満たすうちの一番安い製品を見つけてコスト削減をしてきたが、当社ではSATA HDDによってオンラインもニアラインも提供可能」と述べたヌネス氏は、典型的なケースを紹介し、コストが26%削減できると説明した。もちろん、階層型ストレージにもメリットはあるので、3PARでもすべてのケースにSATA HDDを推奨するわけではない。3PARでは、「これらの技術によって、顧客に選択肢を提供できる。すぐに、FC HDDへ飛びつかなくても大丈夫、ということを紹介できる」(ヌネス氏)というスタンスで、Nearline for Onlineを紹介していく意向だ。
また3PARでは同時に、「シンプロビジョニングの評価指針」も発表している。シンプロビジョニングとは、物理ストレージの容量以上のボリューム割り当てを可能にする技術。通常、ストレージではアプリケーションで利用する可能性がある容量をボリュームとして切り出し、同じだけの物理ストレージを用意しておく。この際、将来的に容量が足りなくなることを嫌って、ボリュームは大きめに設定するのが通常なので、シンプロビジョニングがないと、実際には利用しない無駄な物理容量を、ストレージ内へ大量に抱え込む羽目になりかねない。
しかしシンプロビジョニングでは、動的に容量を継ぎ足していけるため、実際に利用している容量分よりも少し多めのストレージを用意しておけばよく、足りなくなりそうな場合に、適宜追加してあげればよい。無駄なストレージを抱え込む必要がないだけでなく、ストレージ価格は長期的には下落するので、投資コストを抑えられる効果もある。
この概念は、3PARが2003年に初めて発表し、製品に導入してきたのだが、2006~2007年になって相次いで大手ベンダーがサポートを表明。これによって、顧客の関心が一気に高まったという。ところが、「シンプロビジョニングは全部同じだと思われている方が多いが、実はそうではない」(ヌネス氏)というのだ。
例としてヌネス氏は、アロケーションサイズの問題を取り上げ、「当社では8KBの書き込みの際には、16KBの領域を確保するようになっており、なるべく小さなサイズで済むように注意している。しかし競合のストレージでは、8KBの書き込みでも42MBのスペースを確保してしまうものがある。この際は実に3000倍で、何も書かれていないのに、全部スペースを確保してしまうということにもなりかねない」と指摘した。
このほかにも、「キャパシティの先行予約をしてしまい、割り当てたものの使用されない容量のサイロが発生する」という点や、システム管理者による容量追加のためのボリューム拡張作業が必要、後付けの仮想化機能によってほかの機能が犠牲になることがある、など全部で5つのポイントを挙げ、「最初にシンプロビジョニングを導入するのであれば、高い機能を持った製品を選択して欲しい」と呼びかけている。
■ URL
3PAR株式会社
http://3par.jp/
プレスリリース
http://3par.jp/news/_pr/20080318b.html
http://3par.jp/news/_pr/20080318a.html
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2008/03/18 18:59
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