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インテル、「Centrino Atomプロセッサー・テクノロジー」を発表

各社のAtom搭載端末も展示

代表取締役共同社長の吉田和正氏
 インテル株式会社は4月2日、小型のモバイルインターネット端末(以下、MID)向けの「インテル Centrino Atomプロセッサー・テクノロジー」と、その中核となる新プロセッサ「インテル Atomプロセッサー」を発表した。発表会では、代表取締役共同社長の吉田和正氏による概要説明のほか、パートナーの各通信事業者から意気込みのあいさつ、およびAtomを搭載した各社のMIDデモ機の展示などが行われた。

 Centrino Atomプロセッサー・テクノロジーは、ポケットサイズでありながらフルインターネット体験を実現する小型MID向けに開発された新技術。最新のAtomプロセッサ、グラフィックス機能内蔵の低消費電力チップ「インテル システム・コントローラー・ハブ」、ならびにワイヤレス接続機能が含まれ、この要件を満たすMIDには、Centrino Atomロゴが貼られる。ワイヤレス接続機能は、インテルの機能のほか、サードパーティの機能にも柔軟に対応。Wi-Fi、3G HSPA、WiMAXなどをベンダ側で自由に選択して実装できるようにしている。MIDのサイズに具体的な要件は定められていないが、ポケットに収まる程度のものを想定しているとのこと。


Atomプロセッサとシステム・コントローラー・ハブ
 同テクノロジの中核となるのが、インターネット利用に特化したAtomプロセッサだ。45nm Hi-kプロセス技術を採用しており、25平方ミリメートルのチップサイズのダイに、4700万個のトランジスタを集積。Z500/Z510/Z520/Z530/Z540の5種類をラインアップし、複数の省電力技術により、TDP(熱設計電力)は0.65~2.4W、アイドル時の電力は80~100mW、と消費電力を劇的に削減している。また、インテルCPUの中でも最小ながら、最大動作周波数は1.86GHzと、消費電力3W以下のプロセッサとしては世界最速のパフォーマンスを実現している。

 インテル技術部長の土岐英秋氏は、「従来の基準では1%性能を向上させると、消費電力が3%増加していたが、Atomプロセッサでは、1%の性能向上で1%の消費電力増加に抑えることができた。高性能と低消費電力を両立できたのは、この革新的な設計による」と述べている。

 なお、Atomプロセッサ1000個受注時の価格は、Z500(800MHz)が4530円、Z510(1.1GHz)が4530円、Z520(1.33GHz)が6550円、Z530(1.6GHz)が9570円、Z540(1.86GHz)が1万6110円。

 もう1つ重要なコンポーネントとなるのが、ノースブリッジ/サウスブリッジ/グラフィックス機能をワンチップ化した、新設計のシステム・コントローラー・ハブ。PCと互換性を保ちながら豊富なI/Oを提供し、PCI-Express x1×2ポート、DDR2(400/533MHz)メモリを最大1GBまでサポート。グラフィックス機能では、ハードウェアアクセラレーションなどにより400Mピクセル/秒のPeak fill rateを実現し、1080i&720pのHDコンテンツ再生に対応している。


Atomプロセッサの概要 1%の性能向上に当たっての消費電力増加を1%に抑えた革新的設計 システム・コントローラー・ハブの概要

 吉田氏は、「インターネット利用人口8800万人、公衆無線LANのアクセスポイント数は1万5000カ所以上と、日本のインターネット環境は拡大を続けている。こうした中、端末への要求もどんどん変化しており、より一層高いエクスペリエンスを実現できる新次元のMIDが求められている。そこで当社が提案するのが、今回のCentrino Atom」とコンセプトを説明。「エコシステムパートナーなどと協力して、ポケットの中から始まる新しいモバイルインターネットが実現する、新しい世界を築きたい」と意気込みを語った。


拡大続く日本のインターネット ポケットの中から始まる新しいモバイルインターネット体験 新しいモバイルインターネット端末

左から、ウィルコムの喜久川社長、NTTドコモの青山部長、UQコミュニケーションズの片岡副社長
 現在、すでに幅広い機器ベンダが搭載端末の開発意向を表明しており、2008年夏からは続々と製品化される予定。また通信事業者との連携も広範に進んでおり、発表会にはその中から、UQコミュニケーションズ、NTTドコモ、ウィルコムの3社が登壇し、インテルにエンドースメントを送った。

 UQコミュニケーションズ 取締役執行役員副社長の片岡浩一氏は、「当社では、新たなブロードバンド時代を築くため、WiMAX事業を推進している。今回のAtomは、当社がまさに期待するところ。搭載されるMIDで1つでも多くWiMAXが採用されるよう注力したい」とコメント。

 NTTドコモ プロダクト&サービス本部 ユビキタスサービス部長の青山幸二氏は、「当社ではリッチコンテンツへのニーズに応えるため、ケータイやPCなどで次々と新しい定額データ通信プランを提供し、モバイルインターネット環境の整備に注力してきた。Atomを搭載するMIDが出てくることで、これらの環境を有効活用できるようになる。ユビキタス社会に向け、新しいインターネットの使い方が現れることに期待している」とコメント。

 ウィルコム 代表取締役社長の喜久川政樹氏は、「実は2007年に吉田社長と話し合って、Atom搭載機をどこよりも早く投入しようということで合意していた。それから1年、短い時間ではあったが、その新マシンも近々詳細を発表できるだろう。ケータイ系の記者の方からすると、私が近々といったら一体いつのことだ、と思われるかもしれないが、今回は本当に近々」と冗談交じりにあいさつを述べた。


幅広い機器ベンダが搭載端末を開発 広範な通信事業者のサポート

 会場脇のスペースには、参考出展として富士通、パナソニック、ソフィアシステムズ、NEC、クラリオン、東芝などの端末が展示されていた。まだ開発段階ではあるが、いずれも新しいインターネット時代を感じさせる出来となっていた。


各社からの参考出展品 富士通の端末 パナソニックの端末

ソフィアシステムズのMID/携帯端末向け開発プラットフォーム「PEARTREE」 NECのパネルコンピュータ「12/15PNC」 クラリオンのモバイルインターネットナビゲーションデバイス「MiND」


URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/

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( 川島 弘之 )
2008/04/02 16:45

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