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日本IBM、System iとSystem pを統合した新HWプラットフォーム「IBM Power Systems」


IBM Power Systemsの最上位となるIBM Power 595

米IBM IBMシステムズ&テクノロジー・グループ パワー・システムズ・プラットフォーム ワールドワイド・マーケティング&ストラテジー バイスプレジデントのスコット・ハンディ氏
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は4月9日、次世代エンタープライズデータセンターを実現するためのハードウェアプラットフォームとして、「IBM Power Systems」を発表。同時に、これに基づいた4つの新製品を投入する。

 IBM Power Systemsは、Powerアーキテクチャを採用しているミッドレンジサーバー「IBM System i」と、UNIXサーバー「IBM System p」とを統合した、新たなハードウェアプラットフォーム。中小規模のシステムから大規模システム、HPC(ハイパフォーマンスコンビューティング)領域までカバーすることができ、全世界で開発された1万5000ものアプリケーションが稼働するという。

 最上位モデルでは5GHzのPOWER6プロセッサを搭載。OSを、AIX、Linux、さらには、IBM i(i5/OSから名称を変更)の中から自由に選択できるほか、PowerVM Editionによる仮想化機能によって、1台のサーバー内をLPARにより分割。複数種類のOSを混在して利用できる。

 「一般的にサーバーの利用率はわずか10~15%にとどまっているが、仮想化環境を利用することで、60%にまで使用率を高めることができるのに加えて、POWER6プロセッサが持つ省電力性能によって、60~80%の消費電力削減が達成される。PA-RISCを搭載したHP Superdomeからのマイグレーションでは、最大91%の消費電力削減を達成した例もある」(米IBM IBMシステムズ&テクノロジー・グループ パワー・システムズ・プラットフォーム ワールドワイド・マーケティング&ストラテジー バイスプレジデントのスコット・ハンディ氏)とした。

 サーバー使用電力管理ソフトウェア「IBM Director Active Energy Manager」により、システムやデータセンターの省エネルギー化にも寄与するという。さらに、日本IBMのOSに加えて、オープン環境にあるサーバーやOSを一元的に管理する「IBM Director」ファミリにも対応。複雑なシステム環境をダイナミックに統合管理できる。


日本IBM 理事 システム製品事業 パワー事業部の武藤和博事業部長
 「他社のCPUのロードマップが迷走するなか、唯一、将来に向けて確かなロードマップを提供しているのがPOWER。年間の特許出願が最も多いのがIBMであり、その点からも当面、POWERの進化が続いていくことが証明される。将来にわたって安心して導入していただける製品」(日本IBM 理事 システム製品事業 パワー事業部の武藤和博事業部長)とした。

 ハンディ氏は、「IBMにとって極めて大きな発表。HP Integrity Superdomeと比べて、ほぼ同等価格で2倍以上の性能を発揮できる高いパフォーマンスを持った製品群になる。また、システム管理性を高め、コストも低く、移行も容易にできる。北米では、すでに1000ものユーザーが、SunやHPのサーバーから、Powerへとマイグレーションしたことがそれを証明している」とした。

 北米では、Itanium、SPARC、Alphaなどを搭載した競合システムを利用しているユーザーに対する移行促進プログラムとして、「Power Rewardsオファリング」を用意しており、ユーザーは1コアごとに1000ドル分のポイントを獲得できる。「Superdomeを利用しているユーザーは、51万2000ドル分のポイントを得ることができ、これが還元されることになる。北米では、ショッキングな制度として評価されている」(同)という。


IBM Power 550 Express

BladeCenter S
 新たに投入したPower Systemsの新製品は、「IBM Power 595」「同 575」「同 550 Express」「同 520 Express」の4機種。

 IBM Power 595は、5.0GHzのPOWER6プロセッサと4TBのメモリを搭載。最大64コアのマルチ・プロセッシング(SMP)構成を可能とするハイエンドモデル。大規模なトランザクション処理やデータベース・アプリケーション用途を狙う。出荷開始は5月6日、AIXによる最小構成価格は、IBMダイレクト価格で6699万4410円。

 IBM Power 575は、独自の冷却技術を採用し、冷却効率を高めたHPC分野向け製品。1フレームで最大448個の4.7GHz POWER6プロセッサコアによるクラスター構成が可能で、最大3.5TBのメモリを搭載できる。従来の同等機種に比べて、約5倍のパフォーマンスを発揮するという。出荷開始は5月6日、AIXによる最小構成価格は、IBMダイレクト価格で7495万9500円。

 IBM Power 550 Expressは、最大8コアの3.5GHzまたは4.2GHzのPOWER6プロセッサを搭載するミッドレンジモデル。PowerVM Editionによる仮想化機能や、x86サーバー上のアプリケーションをPOWERプロセッサ上のLinuxで稼働できるオプション製品「PowerVM Lx86」を活用することで、分散しているサーバーの統合に高い効果を発揮する。同社では、サーバー統合やアップグレード向け製品と位置付けている。出荷開始は5月23日、IBM iによる最小構成価格は、IBMダイレクト価格で1874万2290円。

 IBM Power 520 Expressは、最大4コアの4.2GHz POWER6プロセッサを搭載するエントリーモデル。小規模アプリケーションサーバーやデータベースサーバーに最適としている。出荷開始は4月18日、IBM iによる最小構成価格は、IBMダイレクト価格で205万6635円。

 また、昨年発表した「IBM System i570」および「IBM System p570」は、「IBM Power 570」に名称変更し、Power Systemsミッドレンジ製品の1つに位置付けられるほか、System pシリーズに位置付けられていたBladeCenterにおいても、「BladeCenter JS12」および「同 JS22」として提供される。BladeCenter JS12が格納できる「BladeCenter S」は、100Vで駆動し、IBM iの上でx86サーバーおよびUNIXサーバーの統合を図ることができる。


日本IBM システム製品事業担当のジム・グレゴリー専務執行役員

「新たなPowerの方程式」が示されている
 同社では、今回の製品投入にあわせて、「The New Power Equation(新たなPowerの方程式)」を定義。System iとSystem pとの統合による「Power=i+p」、複数のOSの中から選択し、その上で多様なアプリケーションを利用できることを示す中小規模システム向けの「Power=Integration+Solution」、他社のサーバーからの置き換えによって、リスクをミニマイズすることを示す大規模システム向けのメッセージとして「Power=Migration-Risk」の3点を掲げ、「顧客にフォーカスした新たな価値を、新たなPower Systemsによって提供する」(日本IBM システム製品事業担当のジム・グレゴリー専務執行役員)とした。

 日本IBMでは、今年1月から、システムi事業部とシステムp事業部を統合し、Power事業部を発足。「1月の新組織の発足は、今回の製品統合を踏まえたもの。今回の新製品投入によって、強力なコミュニティとの連携をさらに強化し、積極的に市場に打って出る」(武藤氏)と意気込む。

 日本においても、日本ヒューレット・パッカードやサン・マイクロシステムズのサーバーを日本IBMが引き取り、システム規模に応じてサービスを提供するプログラムや、製品マイグレーション施策を、大規模システム向けに準備する考えで、「5月の出荷開始前までには発表する」(同氏)とした。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/2008/04/0901.html


( 大河原 克行 )
2008/04/09 16:16

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