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リコー、クラス最速90枚/分のプロダクションプリンタ「Pro C900」

カラーPOD市場へ参入、先行く競合を巻き返せるか?

RICOH Pro C900

排紙トレイ
 株式会社リコーは5月8日、POD(プリントオンデマンド)に対応するカラープロダクションプリンタ「RICOH Pro C900(以下、Pro C900)」を発表した。8月より提供を開始し、プロダクションプリンティング(PP)市場におけるカラーPOD市場に本格参入する。

 リコーでは、プリント市場を「一般オフィス」「PP」「商業印刷」の3つに分ける。テクノロジの進化により、PP市場のローエンドの一部が一般オフィスに流れつつも、基幹系とPODの融合や、商業印刷市場からのオフセットTDV流入といったマーケットの変化により、「現在、このPP市場が最大の成長領域になっている」と常務執行役員 プロダクション プリンティング事業部長の田中則雄氏は話す。

 この市場へ参入するため、2004年に日立プリンティングソリューションズを買収し、2007年4月にPP事業部を立ち上げ、同年6月に米IBMとのジョイントベンチャー「InfoPrint Solutions」を発足。着々と準備を整えてきたリコーだが、キヤノン・富士ゼロックス・コニカミノルタなどに先手を取られ、後じんを拝す形となっていた。

 田中氏は「満を持して」と意気込む。狙うは、PP市場におけるカラーPOD市場の獲得だ。印刷物の多品種・少ロット化により、PP市場では、必要なときに必要な部数を低コストで印刷できるカラーPODのニーズが高まっているという。リコーは、モノクロPOD市場で実績のある「imagio MP 1350シリーズ」に加え、今回のPro C900投入でラインアップを強化。さらにパートナー各社との連携を拡大することで、印刷データの入稿から、最後の検品工程まで一貫したトータルソリューションを提供するとしている。


常務執行役員 プロダクション プリンティング事業部長の田中則雄氏 テクノロジの変化によりマーケットは多様化 PP市場を最大の成長領域ととらえるリコー。新製品でカラーPOD領域の確保を狙う

大型カラー液晶タッチパネル
 Pro C900は、その最初の武器となる。クラス最高の印刷速度を実現したカラープロダクションプリンタで、カラー・モノクロいずれも90枚/分(A4横送り)、両面印刷でも90枚/分(同)を実現しているほか、新定着機構の採用により、60~300g/平方メートルまでのすべての紙厚で同速の印刷を可能にしている。

 標準2750枚、オプションで最大1万2100枚の大量給紙が可能。用紙の透過光を検出して重送(多枚送り)を防止する「重送検知機能」を標準搭載するほか、稼働中でも用紙・トナー補給できるメンテナンス性や、ネットワーク経由のリモート管理サービス「@Remote」でダウンタイムを最小にするなど、徹底して生産性の向上にこだわった。

 画質は、リアル1200dpiの高解像度出力が可能。加えて、1)常にフレッシュな現像剤を供給することで安定した高画質を実現する「現像剤プレミックス機構」、従来比で3~5倍の「高寿命感光体」、低温定着を実現する「新開発SVAトナー」、印刷直前に用紙を調整する独自の「レジストレーション調整機能」などを採用し、高画質・安定性も確保している。

 そのほか、PostScriptコントローラとして実績のある、Electronics For Imaging(以下、EFI)の「Fieryコントローラ」を標準搭載した。印刷ジョブを管理するユーティリティソフト「Command WorkStation」も搭載し、出力したジョブの状況確認や再出力における出力順の並び替え、オプション再設定、処理中のジョブへの割り込みなどを、大型カラー液晶タッチパネルの簡易画面から行える。また、カラーアーキテクチャーにもEFIの「ColorWise Pro Tools」を採用し、キャリブレーションやICCプロファイルの割り当て、スポットカラーへの対応など、高度なカラー管理を実現している。


90枚/分の印刷速度で高い生産性を実現 化粧品・旅行業界など、高画質な印刷ニーズに対応 EFIのFieryコントローラを標準搭載

8月にショールームを新設
 標準価格は、1230万円(税別)から。田中氏によれば「EFIのコントローラを内蔵しながら、この価格は、コストパフォーマンスに優れる」という。実際にキヤノンや富士ゼロックスの同クラス製品では、2000万円から3000万円に及ぶ。設置スペースも競合他社機の約半分の大きさで、「印刷速度などの性能は上回りながら、価格・スペース面でダウンサイジングを可能にしている」とアピールした。

 販売戦略としては、「このクラスのプリンタになると、もはや製品売りではなく、ソリューションというのがふさわしい」とする田中氏。「販売体制、付加価値ソリューションなどでパートナーとの協力が重要」と述べ、大塚商会や日立、富士通などの既存パートナーとの関係を強化するとともに、印刷機材商社など新たな新規チャネルも積極的に模索していく意向を見せた。

 直近の予定としては、2008年度内にスキャナ搭載モデルも追加投入するほか、リング製本機や大容量スタッカー、中とじ製本機などの後処理オプションも順次提供。積極的にカラー・モノクロPOD機のラインアップ拡充を図っていく。さらに8月には、本社に新ショールームも開設する予定。田中氏は「顧客に触って遊んでもらう場、当社から提案する場、それを検証する場として、POD系/基幹系/オフィス系までのプリンタ、周辺機器、ソリューションをトータルに展示する」と、施設の目的を語った。

 ワールドワイドでのPP市場は現在1兆円、2013年には約2兆円まで拡大するという。競合他社に一歩先んじられたリコーだが、今回の新製品+ソリューションをてこに、PP市場において2010年度までに2500億円の売り上げをめざしていく。



URL
  株式会社リコー
  http://www.ricoh.co.jp/


( 川島 弘之 )
2008/05/08 16:04

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