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InfraStruXure Central
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株式会社エーピーシー・ジャパン(以下、APCジャパン)は7月10日、データセンターの電源・ラック・冷却システムなどを効率よく運用するため、各デバイスの運用状況を監視するアプライアンス製品「InfraStruXure Central」を発表した。同日から販売開始。併せて、データセンター・サーバールームの最適化を支援する「アセスメントサービス」も発表。同社としては初のプロフェッショナルサービスとして、2008年内に国内での提供を開始する予定とした。
InfraStruXure Centralは、データセンターのデバイス稼働を監視するアプライアンス。冷却システム・ラック製品・電源装置などのInfraStruXureシステムのほか、SNMPに対応したサードパーティー製品を一元ビューの下で統合管理することが可能。さらにオプション製品として併せて提供される「Capacity Manager」「Change Manager」といったソフトを追加することで、電源や冷却、スペース性などデータセンター全体のキャパシティとからめたデバイス管理も可能になる。
InfraStruXure Central単体では、複数のデバイスからデータを収集しグラフに変換し、データセンター全体のトレンド解析が行えるほか、モニタリングしている任意のデバイスから状態レポートが出力できる。また監視機器のアイコンを自由に配置できるマップビューといった機能も備え、問題のあるデバイスを直感的に認識できるという。
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デバイスビュー画面。機器のステータスのほか、デバイスごとの温度・湿度が表示されている
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監視機器のアイコンを自由に配置できるマップビュー
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米APC、バイスプレジデント インダストリ&ガバメント アライアンスのジョン・タッシーロ氏
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7月7日から始まった北海道洞爺湖サミットでは、「2050年までに世界のCO2排出量を半分にする」という重要議題について、先進国と新興国との間で合意がなされないまま閉幕となった。しかし、「長期目標設定が望ましい」と弱い表現ながらも意識の一致が見られ、今後もこのテーマが繰り返し議論されていくのは間違いない。
こうした時勢を考えると、今回の発表で肝となるのはCapacity Managerであろう。
Capacity Managerは、InfraStruXure Centralのデバイス監視の機能に、データセンターのスペース・電源・冷却といった視点を盛り込んで管理可能にするソフト。米APC、バイスプレジデント インダストリ&ガバメント アライアンスのジョン・タッシーロ氏によれば、「データーセンター内の電源・冷却装置のカタログ値をデータベース化し、設計値と実際の消費電力値から、ラック単位で電力キャパシティを可視化して管理することが可能になる」とのこと。例えば、新しいサーバーを1台追加しようとした際、消費電力・冷却能力を計算し、データセンターの電源容量・空調能力・スペースに問題がないかシミュレーションした上で、どのラックに搭載すべきなのかといったプロビジョニングが行えるという。
APCジャパンの主力製品は、耐震性ラックや電源装置、ラック列型冷却システムといったハードウェア製品群である。こうした製品でデータセンターを最適化しつつ、さらに各デバイスの性能を最大限に引き出すのがCapacity Manager、という位置づけだ。
Capacity Managerでは、このほか、フロアレイアウトをグラフィカルに表示する機能も備える。このレイアウト図では、各デバイスの平均消費電力やピーク消費電力を可視化し、過負荷を防止する電力計や、エアフロー解析の結果を表示することも可能。密にハードウェア製品群と連携を取りながら、データセンターの変更の効率的な管理が実現する。
もう一方のChange Managerは、ワークオーダーと資産管理を行うソフト。Capacity Managerと組み合わせて使うことで、データセンターの変更時に導入プレセスを管理し、作業のステータスや履歴の参照などが行える。
InfraStruXure Centralの価格は、標準的な「Basic」モデルが73万円(税別)からで、データセンターのサイズや管理ノード数に応じてスケールアップする。なお、InfraStruXure Centralは、NECのプラットフォーム管理ソフト「WebSAM MCOperations」や「SigmaSystem Center」、日立のシステム管理ソフト「JP1」などとも連携する予定で、よりタイトな管理が可能になるという。
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ラック単位で性能キャパシティを可視化
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フロアレイアウト図
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エアフロー分析図
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APCジャパン、代表取締役社長の内藤眞氏
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今回はこれ以外に、アセスメントサービス提供開始のアナウンスも行われた。運用管理が複雑化しているデータセンターを最適化するため、7種類のコンサルテーションメニューを用意し、管理者に適切な支援を行うとしている。
具体的には、1)データセンター・インフラのドキュメント化や分析などを行う「データセンタ電源・空調アセスメントサービス」、2)「流体力学を用いた空調解析」、3)デジタル赤外線サーモグラフィーを使った「データセンタ熱分布アセスメント」、4)「配線配置アセスメント」、5)ブレードサーバー導入時に最適な物理インフラの分析を行う「ブレードサーバーレディネスアセスメント」、6)「データセンタ電源効率アセスメント」、7)分電盤からの給電・配線状況の確認・評価を行う「データセンタ電源回線トレース」を提供。国内ではまず1~2種類の提供からスタートし、順次種類を拡大していくという。
APCジャパン、代表取締役社長の内藤眞氏は「CO2排出量は消費電力量にほぼ比例するが、IT産業が占める消費電力は今後ますます増えていく。洞爺湖サミットが終わり、これから企業に環境活動が強く求められ、規制のようなものも必ずでてくるはずだ。むしろ自主的に規制を作って社会的責任を果たしていかなければならない」と述べ、その対策として今回のソリューションやアセスメントサービスの有効性を訴求するとした。
■ URL
株式会社エーピーシー・ジャパン
http://www.apc.com/jp/
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( 川島 弘之 )
2008/07/10 15:56
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