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「RFIDの課題は誤読」、NECが電波干渉を防ぐ新製品など発表

実証施設「RFIDイノベーションセンター」も公開

 日本電気株式会社(以下、NEC)は12月9日、RFIDの普及を加速する新製品を発表した。50mの長距離・双方向通信、および多種多様なセンサーとの連携を実現するRFIDタグ「アクティブタグ」と、電波干渉や誤読を解決する制御装置「スマートフロントコントローラ(以下、スマートFC)」を製品化し、同日より販売開始する。


多彩なセンサーできめ細かい監視が可能な「アクティブタグ」

NECユビキタスソリューション推進本部長の松尾泰樹氏

アクティブタグの概要
 アクティブタグは、約50mの長距離・双方向通信が可能なRFIDタグ製品。親機と子機から構成され、親機をPCに接続し、子機を管理したい物品に取り付けることで、遠隔からさまざまな情報を取得することが可能となる。

 電力・温度・湿度・照度・圧力・振動・赤外線など多彩なセンサーを実装できるのが特長。物品の温湿度環境や外部から加わる力などを監視することで、さまざまな観点から管理が行える。収集した情報は、PCに取り付けた親機へ無線通信で定期的に送られるので、リアルタイムに情報を可視化でき、異常を検出した場合は、子機に内蔵されたアクチュエータ(LED・ブザー)で警告することもできる。

 思いつく用途はさまざまだが、一例としては、「屋内の室温度、照度、電気製品の消費電力などを可視化すれば、省エネとして利用できる。物量現場では、物品の保管状態をモニタリングすることが可能。親機から子機を呼び出すこともできるので、ピッキング作業の簡易化も図れる」(NECユビキタスソリューション推進本部長の松尾泰樹氏)。

 使用周波数は2.45GHz、通信距離は見通しの良い直線距離で約50m。子機は自身に電池を内蔵、親機はUSBバスパワーで駆動する。IEEE 802.15.4と国内電波法に準拠。子機単品価格は、全センサー・アクチュエータ搭載時で1万5000円(税別)。ただし、搭載するセンサー・アクチュエータは、用途に応じてカスタマイズが可能。出荷開始は2009年1月より。


多彩なセンサーを実装できるのが特長 用途例その1-屋内の環境、電気製品の消費電力などを監視 用途例その2-物流現場での物品保管状況の管理

電波干渉や誤読を防止する「スマートFC」

スマートFCの概要

利用イメージ
 一方のスマートFCは、UHF帯RFIDリーダーライタの最大の課題である電波干渉を回避し、誤読などを防止する制御装置。込み入った場所などでは使いづらくなるRFIDに実用性をもたらす製品だ。

 松尾氏によれば、「RFIDでは現場でいかに読み取り精度を上げるかが課題。例えば、RFIDタグを付けた2組の段ボール群を隣接する2つのゲートに同時にくぐらせた場合、電波干渉が発生して、それぞれのゲートを通過したタグの数が正しく感知できない場合がある」という。

 実際の現場では、対策として「ゲート間に電波を遮る板を設けたり、電波自体を弱めたりしている」(同氏)そうだが、それでも電波干渉を「完全になくすことはできない」のだ。

 こうした課題をスマートFCが解決してくれる。見た目は小さなスイッチのような同製品に、複数のUHF帯RFIDリーダーライタを接続。それぞれのリーダーライタがどのRFIDタグを読み取るべきか制御することが可能になる。具体的には、RFIDタグのフィルタリング機能が実装されており、ゲートごとに対象外とするRFIDタグを設定することで、ゲートが隣接する場合でも電波干渉を起こさずに運用が行えるのだ。

 またリアルタイムOSによる読み取り速度の向上も可能で、例えば、ベルトコンベアで大量な荷物を高速に行いたいという際にも、同製品を使うことで、読み取りミスを減らすことが可能になる。

 基本構成としては、バックヤードのPCとリーダーライタの間に、スマートFCを設置する。1台で最大15台のリーダーライタを接続することができるため、柔軟なRFID環境が構築できるとのこと。

 価格は、単体で180万円(税別)から。2009年2月より出荷開始する。


RFIDタグを張り付けた段ボール 隣接するゲートを同時に通過 ゲート間に遮へい板を設置しても、電波干渉は起きてしまう

隣のゲートを通過したRFIDタグも読み取ってしまい、読み取り枚数が100%を超えるというおかしな状況に スマートFCでRFIDタグをフィルタリングする 電波障害を防いで、正常な枚数を読み取ることができた

NECはRFIDをあきらめない

 松尾氏は、「RFID市場は、2013年に4000億円ほどになると予測されている。しかし、5年前くらいには1兆円市場になると予測されていた。市場が思ったより伸長しない主な原因はコストの問題で、やはりバーコードからRFIDタグに置き換えるのには覚悟が要るのだろう。思ったより市場が伸びないため、どこが最初にRFIDから撤退するかと見る向きもあるだろうが、NECとしては今後もRFIDに注力していくつもり。製造業などでは1社単独のクローズド物流など、堅実に利用は広がっているので、まずは、これまでにも力を入れてきた製造業の領域をしっかりつかみにいく。そうしておけば、エンタープライズなどでの利用が始まったときにも良いポジションにいられるはず。今回の新製品は、そのNECの方針と、エコやセキュリティ、トレーサビリティなどの新分野にRFIDで取り組んでいくことのコミットメントだ」と、RFID戦略を語っている。


RFIDイノベーションセンターを公開

 発表会では新製品紹介のほかに、2006年に設立された実証・実験施設「RFIDイノベーションセンター」が公開された。ここでは、物流の中でRFIDタグを効率的に読み取るための各種装置や、読み取り速度を検証するための巨大なコンベアなどが設備として置かれ、日々、RFIDの精度を高める実証実験が行われている。さらに顧客にRFIDの利用イメージを具体的に持ってもらうため、アパレルや飲食店を模倣したRFIDソリューションも展示が行われており、これまでに900社を超える顧客が来訪、具体的な成果に結びついているという。


回転式読み取り装置。物品を回転させることで、金属が入っている場合や、タグが密集している状態でも、1つ1つの物品を高精度に認識できる RFIDタグを読み取るためのゲート こちらはストレッチ包装式読み取り機。ターンテーブルに載せた段ボールにストレッチ包装を行いながら、RFIDタグを読み取ることが可能

高速ループコンベア。配送システムにおける幹線コンベアを模擬し、荷物を高速搬送した際の自動認識を検証できる アパレルを想定したソリューション展示も。RFIDタグで商品管理できるほか、万引きなども検知することが可能 食料品売り場の展示。例えば、買い物かごにワインを入れると、関連する情報がディスプレイに表示されたりするという


URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0812/0901.html


( 川島 弘之 )
2008/12/09 17:31

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