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日本HP、シンクライアントの選択肢を包括カバーしたブレードPC新製品

導入コストを削減する数々の施策も

クライアントソリューション統括本部 リモートクライアントソリューション本部 製品部長の九嶋俊一氏
 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は3月4日、シンクライアント向けの高性能かつ低価格なブレードPC新製品「HP BladeSystem bc2200 Blade PC(以下、bc2200)」と「HP BladeSystem bc2800 Blade PC(以下、bc2800)」、ならびに電源変換効率を向上した新筐体「スイッチ内蔵G2エンクロージャ」を発表した。併せて、現行製品で最大36%の価格改定を行うほか、新たなシンクライアント導入支援サービスも開始する。

 bc2200/bc2800は、「bc2000/bc2500」の後継機種となるブレードPC。bc2200ではAMD Athlon 2200(1.3GHz)、bc2800ではデュアルコアのAMD Turion 64 X2 3000+(1.6GHz)を採用したほか、いずれも7200rpmのHDDに換装することで、従来機種と比べてbc2200で約24%、bc2800で約42%処理性能を向上したとしている。なお、3月末より両製品ともにCitrix Xen Desktop 3.0ライセンスがバンドルされるのも特長だ。

 一般的にシンクライアントには「サーバーベース方式」「仮想PC方式」「ブレードPC方式」の3種類があり、画面転送プロトコルも「Microsoft RDP」「Citrix ICA/HDX」「HP RGS」と選択肢が存在する。また、接続先をコントロールするコネクションブローカーにも「HP SAM」「Citrix DDC」などいくつか種類があるのだが、今回、ブレードPCにXen Desktop 3.0をバンドルすることで、これら画面転送プロトコル、コネクションブローカーを包括的にカバーすることが可能になる。

 この価値について、クライアントソリューション統括本部 リモートクライアントソリューション本部 製品部長の九嶋俊一氏は、「例えば、負荷の小さなアプリケーションではRDPやCitrix ICA/HDXのサーバーベース方式で、負荷の大きなアプリケーションではブレードPC方式で、と使い分けたい場面がある。端末の豊富さと併せて、これらを1つのソリューションで包括的に提供できるというのが、HP RCS(日本HPシンクライアントソリューションの総称)のメッセージ。Citrixとの協業で、Citrix DDCを使ってブレードPCへの接続をコントロールするなど、ハイブリッドな使い方も可能。適材適所でユーザーに最適なものを選んでもらうことができる」と説明している。


3方式を包括的にカバー ブレードPC+XenDesktop 3.0の構成イメージ

現行製品の価格改定

執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長の松本光吉氏
 新製品ではパフォーマンスの向上を図りつつ、同時に価格も抑えた。bc2200が6万5100円(10枚パックで61万9500円)、bc2800が9万8700円(10枚パックで96万6000円)。現行製品のbc2000が9万4500円、bc2500が11万9700円だったので、「シンクライアント環境を身近にする戦略的な値付け」(九嶋氏)といえる。

 これに伴い、現行製品でも価格改定を実施。bc2000を9万4500円から6万3000円(改定率約33%)に、bc2500を11万9700円から9万4500円(同約21%)に下げるほか、エンクロージャや端末も同様に価格を改定。特にエンクロージャでは、37万8000円から24万1500円への約36%の値下げを行う。これにより、シンクライアントソリューション全体で低価格化を図る形だ。

 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長の松本光吉氏は、「シンクライアントはTCO削減に大きく寄与する。初期導入コストも運用の効率化で確実に取り戻せるのだが、それでも導入時にある程度のコスト負担となるのは事実。特に経済環境が良くない現状では、TCO削減のメリットを訴求するとともに、製品自体の価格を抑えていくのも重要」と価格改定の真意を述べている。

 導入時の負担を削減するため、価格面での施策に加えて、導入支援サービスの拡充も図る。既存環境の棚卸しや、シンクライアント環境の統合化・標準化方針の策定などを行う「アセスメント/コンサルティングサービス」、およびシンクライアント移行に伴い、ユーザーの既存PCを買い取る「フィナンシャルサービス」を提供する方針。

 また今回はエンクロージャの新製品として「スイッチ内蔵 2Gエンクロージャ」も発表された。同製品では、「80PLUS認証」を取得するほど電源変換効率に優れるのが特長。80PLUS認証とは、電源コンセントの交流電力から直流電力に変換する効率が80%以上の製品に与えられる認証で、新製品では90%の変換効率を実現しているという。冗長化電源を備え、1200Wの出力が可能な同製品は、高性能なbc2800にも十分な電力供給が可能になっている。


bc2200 bc2800 スイッチ内蔵 2Gエンクロージャ

AMDのCPUを搭載したブレードPC1台につき、一本のマングローブを植樹
 ところで、シンクライアントのメリットとはそもそも何であろうか。まず挙げられるのが、記録部、演算部の中央統合による管理の一元化だ。これによりTCOが削減される。また、ユーザーは表示部だけを操作して、「PCを使用する」という体験だけを切り出して味わえる。例えば、これまでクライアントPCが故障すると、修理や代替機を用意し、ユーザー個人でデータの復旧などを行わなければならなかった。が、シンクライアントではユーザーごとのプロファイルは中央に保存されているため、現場では別の端末を用意して、接続するだけで元通りの作業環境が利用可能となる。

 これらが代表的なメリットだが、加えて、シンクライアントはグリーンITにも効果的と松本氏は語る。「2007年のPCとサーバーの販売台数は、1270万台と60万台。HDD容量もPCの方が圧倒的に多い。昨今、データセンターでのグリーンIT化などが進んでいるが、これらはサーバーを対象にしたもの。本当のグリーンITを実現するためには、PCの消費電力をどうにかしなければならない。シンクライアントは、このPCの省エネに大きく寄与する。まず、標準的なデスクトップPCと比べて消費電力が約47%少ない。また、コネクションブローカーの技術で接続先のブレードPCを動的に割り当てられるため、例えば従業員が100人いたとしても、その全員が一斉にPCを利用しないのであれば、ブレードPCの導入数は80台くらいで済むというケースがほとんど。PCの台数自体を減らせるほか、管理者は常に現在のログイン数を確認できるので、時間帯ごとの利用者数に応じてブレードPCの稼働数を調整し、電力を抑えることも可能」という。

 今回はこうしたグリーンITの一環として、新たな取り組みも紹介された。日本AMDが推進するエコプロジェクトに日本HP製のブレードPCが登録され、顧客が1台購入すると1本のマングローブがフィリピンに植樹されるのだ。2008年末の時点で合計2万本のマングローブが植えられており、この2月末でさらに6000本が追加されたという。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  日本AMD株式会社
  http://www.amd.com/jp-ja/
  AMD Green
  http://www.amd.com/jp-ja/0,,3715_14217_14202,00.html
  ニュースリリース
  http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2009/fy09-065.html

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( 川島 弘之 )
2009/03/04 16:10

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