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FENICS-ASによるサービス提供の概念図
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富士通株式会社は4月21日、ネットワークアプリケーションサービス「FENICS-AS」を同日より販売開始すると発表した。現在同社では、4,500社あまりのユーザーを持つネットワークサービス「FENICS」を販売しているが、今回のサービスはこれをベースとして、セキュリティ、コミュニケーション、モバイルなどの各ネットワーク機能を、ビルトインサービスとして提供する。
同社では、従来よりユーザーの必要に応じてネットワークサービスを提供していたが、その都度カスタマイズを行っていた。今回はモジュール化・体系化して提供を行うため、ユーザーは自社システム構築の際に、富士通が提供するさまざまなサービスを部品として利用できるようになる。
■ パッケージベンダへのOEM提供で、中小企業への食い込みを狙う
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ネットワークサービス事業本部長 川妻 庸男氏
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また、今回はパッケージベンダやBtoX(BtoB、BtoCなど)のビジネスを展開するサービス事業者向けに、OEMでの供給も行う。例えば、4月20日にサイボウズより発表されたサイボウズガルーンと富士通のIP電話との連携も、このFENICS-AS内の1サービスが使われているという。同サービスの導入により、サイボウズガルーンにはボタンのワンクリックでIP電話や内線がかけられる機能などを追加しているが、FENICS-ASでは機能をモジュール化しているため、こうしたサービスは、いわば「ボタンを売る」(ネットワークサービス事業本部長 川妻 庸男氏)ように、簡単に提供が可能なことが特長だという。また、OEMであるから当たり前のことではあるが、こうした場合は基本的に提供を受けた側の製品として提供されるため、エンドユーザーは富士通とFENICSを特に意識することはない。
富士通がこのようなOEMによるサービス提供を行う背景には、従来同社だけでは入っていけなかった中小企業に対し、パッケージベンダなどとともに参入しようという狙いもある。FENICS-ASではASPによるサービスも行えるため、例えばOBCなどのERPソフトウェアベンダを通じて、富士通のデータセンターを利用するバックアップサービスなどを提供することも計画しているという。この場合、富士通側ではOEMによる売り上げが見込めるし、ソフトベンダ側は自前でネットワーク設備を整えなくとも、富士通のネットワーク・設備を使って、自社ブランドで付加サービスを提供できるメリットがある。
今回、FENICS-ASのブランドで提供されるサービスは多種多様にわたっているが、例えば「セキュリティ」分野では、企業のクライアントPCのセキュリティをチェックして、パッチを強制的に適用したり、ウイルス対策ソフトのパターンファイルが最新でないPCをネットワークへ接続させないなどのサービスを提供する「エンドポイントセキュリティサービス」、「コミュニケーション」分野では3G携帯電話によるモバイルアクセスと課金のシステム、IP電話と業務システムを連携するためのAPI提供、といったサービスがある。
こうしたサービス、特にIP電話などにおいては、通信事業者が提供するサービスと競合することもあると思われるが、川妻氏は「キャリアは企業内のイントラネット、内線部分というのは苦手。そこを完全におさえているのが当社の強み」と説明した。また、従来のサービスに加えて新たにFENICS-ASのサービスを提供するため、ネットワークだけでも20億円の投資を行うなど、基盤を強化する。加えて、富士通ソリューションスクエア(東京都大田区)内に「ネットワーク・ソリューション・センター(NSC)」を設け、サポート体制の強化も行う。
同社では、既存のFENICSユーザーへの売り込みのほか、前述のように間接形態で中小企業にも販売を目指しており、SIや関連ハードウェアなどの周辺ビジネスを含め、FENICS-AS関連の売り上げ目標を、2006年までの累計で2,000億円としている。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/04/21.html
( 石井 一志 )
2004/04/21 17:22
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