Enterprise Watch
最新ニュース

「1つにまとめてシンプルに」富士通のネットワーク戦略


 富士通株式会社は6月4日、記者向け説明会の中で、4月に発売したネットワークアプライアンス「IPCOM Sシリーズ」を、同社が行うネットワーク環境構築において特に重要な位置づけとする考えを明らかにした。


IPCOM S2000

IPCOM Sシリーズの特徴

占有スペースやケーブル配線の比較
 IPCOM Sシリーズは、企業内サーバー群と外部ネットワークの間(同社はシステムフロントと呼ぶ)に設置する機器であるルーター・ロードバランサー・(アプリケーションレベルでの)帯域制御・ファイアウォールの機能を1台に統合した製品。ネットワーク構築にともなう複雑性を軽減し、管理コンソールを集中化することで運用・管理をより容易にできるといった特徴を持つ。

 IPネットワーク事業本部長代理の菊地伸行氏は、さまざまな機器を設置する必要がある現在のネットワーク構成について、占有するスペースやケーブル配線、各機器の機能の整合性、管理方法の違いなど、複雑性が増している問題点を挙げ、「今後はシステムフロント部分をもっとシンプルにする必要がある」と指摘する。さらに同社は、通信制御装置(CCU)や無停止型通信処理プロセッサ(SURE)など、長年のメインフレーム・ネットワーク技術を継承してきていることから「他社でもコンパクトにすることはできるだろうが、真にシンプル化を実現できるのは富士通だけ」と優位性を語った。

 同社はITシステムを構成するサーバー群(Web・アプリケーション・データベース)やシステムフロント、運用管理の5つのセグメントにおいて、それぞれの性能やスケーラビリティ、信頼性などを事前に設計・検証して、組み合わせパターンを体系化したPi(プラットフォーム・インテグレーション)テンプレートを用意、短期間・低コストでのシステム構築を目指している。今後、システムフロントのPiテンプレートにIPCOM Sシリーズを積極的に組み込み、Piテンプレートの強化を図る。プラットフォームソリューションセンター TRIOLE推進室室長の三津濱元一氏は「IPCOM Sシリーズは(同社のIT基盤である)TRIOLEやPiテンプレートを装置として具体化したもの」と、力の入れ具合を示す。

 多くの機能を一体化した場合、今後追加される新機能に対するスケーラビリティや、1つの機能の故障でシステム全体がダウンするのではといった信頼性が懸念されるところだ。これに対して同社は、スケーラビリティについてはパッチレベルでは通常のアプライアンスと同様に内蔵ソフトウェアのアップデートで対応できるが、まったくの新機能については「サーバーとの連携で対応していく」とした。また、信頼性については冗長化といった手段もあるほか、「一体化した方が部品数も少ない、オペレーションが容易といった利点があり、必ずしもバラバラの構成の方が信頼性が高いとは言えない」(三津濱氏)と説明した。


システム全体の提案でグローバル市場に対応

プラットフォームソリューションセンター TRIOLE推進室室長 三津濱元一氏
 同社は5月25日にIT基盤「TRIOLE」のグローバル展開を本格的に行うと発表した。三津濱氏はこれに触れ、「これまではIBMやHPなどと比べるとグローバルと言う面で劣っていたと認めざるを得ない」とし、その原因としてサーバーに強みがあったものの、ほかの分野を合わせた総合力に不足していたと分析する。それをふまえた今後の展開として、今回のネットワーク基盤や「Interstage」「Systemwalker」といったソフトウェアなどを中心に強化を行い、「個々の分野ではなく、システム全体を提案できるようにすること」を今後の課題とした。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  IPCOM製品情報
  http://primeserver.fujitsu.com/ipcom/
  ニュースリリース(TRIOLEのグローバル展開)
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/05/25.html

関連記事
  ・ 富士通、ネットワーク統合機器「IPCOM」の新シリーズを発売(2004/04/08)


( 朝夷 剛士 )
2004/06/07 11:12

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.