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国際ローミングのGRICから、リモートアクセス事業者への生まれ変わりを狙うGoRemote


 国際ローミング事業を行ってきた米GRIC Communications Inc.は、リモートアクセスソリューション事業への取り組み強化の意思表示として、5月19日付けで社名をGoRemote Internet Communications,Inc.へ変更した。これに伴い、日本での法人名もGoRemote International Corporation(以下、GoRemote)に変更されているが、今回は同社の日本での戦略について、GoRemoteの日本支社長である豊田充氏にお話を伺った。


ビジネスモデル変化は、市場ニーズへの対応のため

GoRemote International Corporation 日本支社長 豊田充氏
 GoRemoteは、150カ国、300強のISPが参加するワールドワイドのアグリゲーターであり、その4万にも及ぶアクセスポイントを利用して、国際ローミング事業を行ってきた。日本のISPの中にもGoRemoteと契約しているところは多く、例えば@niftyやBIGLOBEなどのユーザーは、海外でGoRemoteのアクセスポイントを利用して国際ローミングを行うことが可能だ。

 しかしGoRemoteでは、ローミングを単に提供するだけでなく、前述のようにリモートアクセスソリューションの提供を積極的に行う意向を示している。事業モデルが変化しつつあるわけだが、これに関して豊田氏は「今までは比較的考慮されていなかったリモートアクセスの費用を、企業が真剣に考えるようになった。また市場のニーズ自体が変化し、インターネットVPNを求めてきている」とその理由を説明する。つまり、単なるローミング以上のものを求める顧客が多く存在するようになった、というのだ。

 企業では、出張者などからのリモートアクセスを、PIAFSやアナログ回線のRASによって着信させているところが多い。しかし、実際に通信を受けるアクセスポイントは東京など大都市にしか存在しないケースが多く、出張先から長距離アクセスを毎度毎度行っていては、大変な費用がかかってしまう。GoRemoteではこうした企業に対して「GoRemote Mobile Officeソリューション」をはじめとするソリューション、サービスを提供することで、顧客の課題を解決できるとする。


GoRemoteのネットワークを活用してTCOを削減

 まず、同社が持つ膨大なアクセスポイントの活用がそのメリットだ。出張者は最寄りのアクセスポイントに接続することで、わざわざ高い費用を払って決められたアクセスポイントまで接続せずに済む。また同社のWiFiサービスを利用すれば、無線LAN経由でのVPNアクセスを行えるし、もちろん有線LANにも対応している。例えばinter-touchとの提携で140のホテルにおいて同社のサービスが利用可能であるのをはじめとして、さまざまな取り組みを行っており、すでに10,000を超える有線、無線のアクセスポイントで同社のサービスを利用できるという。国内でもすでにこれらのソリューションの提供実績はあがっており、「ある大手商社ではTCOを60%も削減できた」(豊田氏)。

 さらに豊田氏は、国内のWiFi接続を要望する声が強いことにも触れ、今後は国内WiFi網の整備にも力を入れると述べた。もっとも、同社では自前の設備を持つ意向はないため、すでにあるサービス事業者との提携によって対応していく考えだ。


一元管理ツールなど、トータルソリューション提供で差別化を図る

 GoRemoteではリモートアクセスを単に提供するだけでなく、ユーザー認証の強化、侵入検知などを含めてVPNネットワーク全体のセキュリティを確保する「Total Security Protection」、Webベースのコンソールからモバイル使用状況の追跡、ユーザープロファイル、セキュリティポリシーの管理などを行える「Universal Remote Control(URC)」などとあわせて提供し、キャリアなどほかのサービス事業との差別化を図る意向。豊田氏は「URCのような一元管理ツールは、キャリアのサービスではないのではないか。それに当社はアグリゲーターであり、キャリアと違って自前のネットワークを持たないことから、価格面でも安く提供できる」とセールスポイントを語った。

 こうしたGoRemoteが提供するサービスを支えるものの1つとして、クライアントソフトウェア「GoRemote Mobile Office」の新バージョンが6月7日に発表された。同ソフトはユーザーにシームレスなリモートアクセス環境を提供するためのもので、今回は新たに、最寄りのアクセスポイントへの接続、登録アクセスポイント情報のアップデート、PCのハードウェア設定などを自動で行うことができるようになった。また、Cisco、Nortel、Check Point、MicrosoftなどのIPsec VPNソリューションと統合でき、接続時には自動的にVPNクライアントソフトを立ち上げることが可能なため、ユーザーの手間を軽減できる。この新バージョンの日本語版提供は、7月末から8月初めを予定している。

 なお、リモートアクセスソリューション導入に際しては、当然のことながら企業の社内ネットワークとのインテグレート作業が必要となるが、GoRemoteは単独、もしくは提携するSIerとともにインテグレーションを行う。同社では全業種を対象に普及を図るが、工場などへの出張が多い製造業分野でニーズが高いと見ており、大企業を中心に導入促進に取り組むとのこと。



URL
  GoRemote International Corporation
  http://japan-new.gric.com/


( 石井 一志 )
2004/06/08 00:00

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