|
アラクサラの取締役社長、和田宏行氏
|
株式会社日立製作所(以下、日立)と日本電気株式会社(以下、NEC)は10月1日、6月の基本合意に基づいて、両社の合弁会社であるアラクサラネットワークス株式会社(以下、アラクサラ)を設立すると発表した。
アラクサラは、基幹系ルータとスイッチの開発・製造・販売・保守などを行う合弁会社。資本金は55億円で、日立60%、NEC40%の割合で出資する。従業員は320名で、取締役社長には、日立でIPネットワーク事業部長を務めていた和田宏行氏が就任した。営業開始は10月1日から。
会見の場でまず和田氏は、「ギャランティード・ネットワーク」という概念を提唱した。「今までのインターネットはベストエフォート型で発展してきたが、それでいいのか」とそのあり方に疑問を投げかけ、これからは「使いたいときに使いたいだけ使える」、つまりこれからは、品質や性能、機能、サービスが保証されるネットワークが必要になると主張する。
そしてそのためには、「ベンダ側も機能、性能、品質、サポートなどをSIer、NIerへ保証するとともに、今後も会社が存続し、継続的に製品を提供していくということを保証する必要がある」と述べ、その実現に力を尽くしていくと力強くコミット。当面の目標である、2005年の売上高400億円、国内シェア17%に向けて努力するとした。また同社ではその先の目標として、2007~2008年ごろを目安に国内シェア30%獲得と、株式上場を目指す。
なお、2003年の日立、NECの合計では売上高が約300億円、国内シェアが約10%とのことで、目標を達成するためには相当の底上げが必要になる。そこで同社では、「顧客のニーズを真摯(しんし)に受け止め、高性能、高機能、高信頼のキャリア/企業向け製品の充実を図っていく」(和田氏)。開発にあたっては、両社がもともと持っている技術に、外部からの先端的技術を積極的に導入して機能の強化を図るほか、開発スピードの向上を実現することで、「大変に開発スピードが速い世界」(同氏)であるルータ/スイッチ業界に適応させるという。
販売に関しては、日立とNECを通じてのOEM販売のほか、新たなビジネスパートナー経由での販売も目指す。当面はOEMが8割、それ以外のビジネスパートナー経由が2割程度となる見込み。また日本以外への展開も計画しており、特にブロードバンドが普及している韓国や、これから普及が見込まれる中国へ、両社が持つ販売チャネルを利用してアプローチしていくとのこと。
■ 設立と同時にハイエンド、ミッドレンジのネットワーク製品を投入
|
AX7800Sシリーズのうち、ミドルクラスにあたる「AX7808S」
|
またアラクサラは10月1日、同社ブランドの基幹系ルータ/スイッチ「AXシリーズ」第1弾として、ハイエンドスイッチ「AX7800Sシリーズ」、ミッドレンジスイッチ「AX5400Sシリーズ」、ハイエンドルータ「AX7800Rシリーズ」を同日より販売開始すると発表した。これらは、日立とNECが4月より共同開発していたもので、今回の新会社設立に伴い、アラクサラから提供される。出荷は各シリーズとも、2005年1月31日の開始を予定している。
AX7800Sシリーズは、主に広域ネットワークや高速構内ネットワークでの利用を想定したスイッチで、Gigabit Ethernetポートなら最大384ポート、10Gigabit Ethernetポートなら最大32ポートを搭載できる。バックプレーンスイッチング性能は最大384Gbpsで、業界最高クラスの高いスケーラビリティを実現できたという。価格は966万円から。
AX5400Sシリーズは、主に企業ネットワークを対象にしたスイッチ。最大192ポートのGigabit Ethernetポートを搭載でき、最大48Gbpsのスイッチング性能を持つ。価格は381万1500円から。
AX7800Rシリーズは、AX7800Sシリーズをベースに機能を拡張した製品。最大100万ルートを収納可能なため、インターネットフルルート(すべてのルーティング経路情報)を収納できるルーティングスケーラビリティを備えているという。価格は2310万円より。
なおこれらの製品はすべて、ハードウェアによるレイヤ2/3/4のQoS機能を備えており、高トラフィックなEthernet環境であっても、音声通話など重要なデータ通信の帯域を確保できるという。また、IPv4/v6のデュアルスタックにも対応。IPv6の処理もハードウェアで行うため、IPv4同様の高速なルーティング処理を実現するとのこと。
信頼性に関しては、高信頼の部品を使用しているほか、基本ソフトウェアの安定性にも「長年やってきているので枯れている」(アラクサラの取締役、島崎茂樹氏)と自信を持つ。さらに、周囲に再起動を通知することでパケットロスを抑えるGraceful Restart機能も盛り込んだ。
日本のハイエンド、ミッドレンジルータ/スイッチ市場ではシスコシステムズ、ジュニパーネットワークスが非常に強く、これらと競合して勝ち抜くためには、明確なアピールポイントが必要になる。島崎氏はこれに関して「AXシリーズではレイヤ2/3/4でのきめ細かいQoSが提供できるし、多段シェーピングも可能。またポート密度でも勝っている」と、同社製品の長所を強調していた。
なお、このAXシリーズは主にNECと日立を除いたビジネスパートナー経由で販売されるためのもので、両社では自身が持つブランドの中でアラクサラ製品を提供する。NECからは「UNIVERGE IP8800/Rシリーズ」「同 Sシリーズ」、日立からは「GS4000シリーズ」「GS3000シリーズ」「GR4000シリーズ」として発売され、日立は10月より、NECは12月より、順次提供を開始する。
■ URL
アラクサラネットワークス株式会社
http://www.alaxala.com/jp/
株式会社日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
ニュースリリース(アラクサラ設立)
http://www.alaxala.com/jp/news/release/20041001-1.html
ニュースリリース(アラクサラ、AX7800Sシリーズなど)
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/10/1001b.html
ニュースリリース(日立、GS4000シリーズなど)
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/10/1001.html
ニュースリリース(NEC、UNIVERGE IP8800シリーズ)
http://www.nec.co.jp/press/ja/0410/0103.html
■ 関連記事
・ 日立とNEC、基幹系ルーター・スイッチ事業会社を10月に設立へ(2004/06/25)
・ 「日本市場に“本当に”適した製品で勝負する」日立・和田氏(2004/07/09)
( 石井 一志 )
2004/10/01 18:20
|