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日本支社 シニアシステムエンジニアの柳橋達也氏
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米Caspian Networksは11月12日、同社の主力製品であるフローベースルータ「Apeiroシリーズ」に関する説明とデモを、プレス向けに行った。
フローベースルータとは、通常のルータと異なり「連続した通信を1つの仮想ストリームとしてとらえて制御できる」(日本支社 シニアシステムエンジニアの柳橋達也氏)インテリジェントなルータ。その最大の特徴は、ネットワーク上を流れるトラフィックの性質が把握できる、という点にある。
この応用としてはさまざま考えられるものの、「現在注目されているのはP2Pアプリケーションへの対応策が取れることだ」(柳橋氏)という。いろいろなところで何度も言われていることだが、P2Pアプリケーションによるトラフィック増大のため、現在、キャリアのネットワークは際限のない拡大を余儀なくされている。このままでは遠からずキャリアの収益構造が破壊されてしまうため、P2Pのトラフィックをどうにかして抑制しようとする試みが行われてきたのであるが、現在までに根本的な対策が取れるソリューションはなかったという。
しかしこのフローベースルータを利用すると、「既存の回線容量のまま、必要なトラフィックをそのまま通し、制限したいトラフィックだけを制限する、という運用を行える」と柳橋氏は説明する。Apeiroでは、転送バイトカウント、持続時間、平均レートなどのフローステート情報をルータ側で保持し、そのフローごとに特性をつかむことが可能なため、これによってP2Pアプリケーションとおぼしきフローを特定・制御できる。実際には、持続時間が長い、平均パケット長がMTUの上限に近い、平均転送レートが高い、といったフローを特定し、「ネットワークの混雑時には優先してパケットをドロップさせる」(柳橋氏)。
こうしてP2Pに対する制御をかけたとしても、ほかのトラフィックへの影響は最小限で済む。たとえばネットワークゲームの場合、持続時間が長く、平均転送レートも高いために、P2Pアプリケーションにフローの特徴が似ているが、パケット長は短いため、しきい値の調整をすることによって、きちんと識別できるという。
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WinMXの画面。ネットワークが混雑したために、Apeiroがパケットをドロップし始め、同ソフトで利用できる帯域が大幅に制限されている
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「ルータがいじめはじめた」(柳橋氏)WinMXの帯域(緑)は制限されているが、HTTP(赤)やオンラインゲーム(青)のトラフィックにはほとんど影響を与えていない
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制御を行っているApeiroルータ
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なお、ここで注意しなくてはいけないのは、Apeiroではアプリケーションを識別しているのではなく、フローを見ているに過ぎない、ということ。そのためにApeiroでは、環境に応じた調整が必要になるなど、初期の設定にはある程度のノウハウが必要になり、どうしても手がかかってしまうのではあるが、「シグネチャベースの帯域制御装置などのように、パケットを解析して照合する必要はないため、未知のアプリケーションや暗号化されたアプリケーションにも対応ができる」(柳橋氏)という長所もまたあるという。さらに、最新のシグネチャファイルを随時適用して再起動する、といった短いスパンでの維持作業を必要としないため、総合的に管理面での負担を軽減できるとのことだ。
また、日本支社長の大丸一夫氏は「Apeiroはあくまでもルータであり、P2P制御専用の装置ではない」点も強調する。同氏は「ApeiroはP2P対策も含めて、ISPのネットワークをインテリジェンス化するお手伝いをするもの」と述べ、たとえばオンラインゲームの提供時に、その帯域を確実に提供することなどにより、新たな収益を得られる可能性があるとした。加えて柳橋氏は将来的な話として、「VoIPで使われるシグナリングプロトコルはポート番号などが動的に変わるため、プロビジョニングするのは難しい。しかしフローベースルータでは、フローの特性を見て動的にVoIP用の制御ポリシーを適用するような運用が行えるようになるかもしれない」と語り、同製品が持つ可能性に期待を示した。
■ URL
米Caspian Networks Inc.
http://www.caspian.com/home.asp
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・ 米カスピアン・ハルタニ氏、「ステート情報の活用でP2Pの制御を可能に」(2004/02/23)
( 石井 一志 )
2004/11/12 18:42
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