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デモ環境で稼働中のTX Matrix(中央)。太いファイバーケーブルが、両脇に設置されたT640の背面と接続されている
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技術本部 アジアパシフィックコア・プロダクト担当部長 杉山秀次氏
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ジュニパーネットワークス株式会社(以下、ジュニパー)は12月14日、同社のコアルータ「T640」をマルチシャーシ接続するための新プラットフォームとして、「TX Matrix」を発表した。これを利用すると1台で640Gbpsの処理能力を持つT640ルータを、最大4台まで連結させることができ、性能を2.5Tbpsまで拡張できる。
TX Matrixは、T640専用のスイッチファブリックとして動作する、新ルーティングプラットフォーム。単独ではルータとして動作しないが、連結させたT640間のトラフィック交換や、ルーティングエンジンの中央管理を行い、接続されたルータを1台のルータとして動作させる。すでに導入済みのT640を利用することもでき、また「はじめから最大限に拡張しなくとも、後から無瞬断でアップデートできるため、ユーザーは必要に応じて最適な構成で導入できる」(技術本部 アジアパシフィックコア・プロダクト担当部長 杉山秀次氏)特徴を持つ。
実際の利用時には、TX MatrixとT640は5本の光ファイバーアレイケーブルで接続される。もともとT640は単一障害点のない運用を行えるようになっているというが、TX MatrixとT640の接続も4本がアクティブ、1本がスタンバイの4:1冗長化構成を取っており、可用性を確保した。杉山氏によれば、実際には3本の通信で全トラフィックを賄えるため、同時に2本が落ちても運用は継続できるという。ケーブルの最大長は100mまで対応可能で、このうち12mまでを標準オプションとして用意する。
杉山氏によれば、ジュニパーのコアルータは1998年に発表された「M40」以降、2年置きに4倍の性能向上を実現しているという。これを、「ユーザーからは予想しやすい展開」とした杉山氏は、今後も同じペースでリリースを進めると明言した。すでに市場にはこの製品を上回る数Tbps規模の性能を実現した製品はいくつも存在し、またシスコシステムズが提供しているCRS-1のように、最大92Tbpsまで拡張が可能、としているような製品も出現した。
しかしジュニパーでは「当社でも、(やろうと思えば)10Tbpsクラスの製品ならばすぐにでも開発できる」としながらも、現実のニーズを受け止め、その時々に最適な製品を、最適なタイミングで出荷するため、今回は最大4台、2.5Tbpsの製品にとどめたという。「技術が進めばよりよいものが提供できるようになる。今の時点で92Tbps製品を作るのと、2年後の技術を利用して作るのでは、密度などが違ってくるはずだ」(杉山氏)。また同社では、マルチシャーシ対応とは別に、個々のシャーシのさらなる高密度化も進めていく意向で、両面からスケーラビリティの拡張を目指す。一方で、導入しやすいハーフラックサイズを単品の最大とする姿勢は崩さず、この範囲内で今後も開発を進めていく。
■ 設計思想の継続により、顧客の投資を無駄にしない
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代表取締役社長の大須賀雅憲氏
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また同社では、製品の設計思想の持続も重要だとし、同社製品の優位性を強調する。代表取締役社長の大須賀雅憲氏は「いったん設備を導入した後、2年でまた入れ替えるというわけにはいかないので、ネットワークコア用の製品には、5~10年程度は同じコンセプトで設計されたものの提供が求められる。当社では、すでにお使いいただいているT640の延長線上で導入可能なTX Matrixを提供することにより、持続性を提供している」と主張した。
この持続性という観点からは、同社はルータ用OSの問題にも触れた。ジュニパーのライバルとなるシスコシステムズは、新コアルータのCRS-1投入時に、新OS「IOS-XR」をあわせて投入しているが、ジュニパーはここ6年ほど、ずっと同じ「JUNOS」を用いている。杉山氏は、IOS-XRよりもずっと先にモジュラー型構造を採用したJUNOSがあるからこそ、柔軟なプラットフォームの拡張が可能になるとした上で、「IOS-XRはまだ機能面の実装が足りない」と述べ、まだまだ両者には大きな差があるという見解を示した。
■ URL
ジュニパーネットワークス株式会社
http://www.juniper.co.jp/
( 石井 一志 )
2004/12/14 19:38
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