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Web会議市場におけるシェア
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ブロードバンドの普及にともない、利用や導入検討が広がり急速な成長が見込まれる市場の1つに遠隔会議システムがある。IP上で音声だけでなく会議出席者の表情やOffice文章、ホワイトボードなどを共有でき、同じ場所にいるのとほぼ同等のやりとりが自席を立たずに行えてしまう。インターネットを介すので電話よりも低コストであり、遠隔地であれば時間や出張コストを大幅に削減できるのも大きな魅力だ。
しかし企業で利用するとなると、気になるのがセキュリティだろう。会話の傍受はもちろん、共有される機密文書の漏えいは許されない。個人向けには無料サービスも提供されているが、企業ではより信頼性の高いものを選びたいところだ。
企業向け遠隔会議システムの中で、専用ソフトをインストールせずWebブラウザ上で遠隔会議が行える「Web会議」市場があり、ここでシェア67%(Frost&Sullivan 2004年4月発行レポートより)、顧客企業11000社をかかえるのが、米WebEx Communications(WebEx)だ。
■ 顧客との商談に使える遠隔会議システム
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米WebEx アジア太平洋・日本 マーケティングマネージャ シェリー・チャン氏
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WebEX MediaTone Networkと、企業向けスイート
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国土が広大で移動に時間がかかる米国などでは遠隔会議が積極的に利用されており、Web会議市場規模は年間約30%の成長を続け、2003年の4億7200万ドルから、2010年には30億ドルに達すると予想されている。WebExもこれに乗って拡大する中で、日本国内での本格展開を図ろうとしている。従来、パートナーのサポートのみを行っていた日本法人ウェブエックス コミュニケーションズ ジャパン株式会社は、4月よりダイレクト販売を本格的に開始する。
WebExの主力商品である「WebEx Meeting Center」は、社内・社外のWebExユーザーとのWeb会議システムをASPサービスとして提供するもの。電話会議やテキストメッセージング、ホワイトボードなど、会議に必要な一通りの機能が利用できるほか、出席者のスケジュール管理などの機能も備える。
遠隔会議システムは、基本的に専用ソフトウェアを導入し、会員登録したユーザー同士で行うものだが、WebExはユーザーが外部ユーザーをゲストとして会議に招くことができる。これにより社内だけでなく、例えば顧客を会議に招いてオンラインで商談を行うことも可能だ。同社では「Sales Center」「Training Center」「Support Center」といった、業務向けの顧客管理やPCの遠隔操作などの機能をスイートとして用意している。さらにSalesforce.comなどさまざまな業務アプリケーションと連携が可能だという。
米WebEX アジア太平洋・日本 マーケティングマネージャのシェリー・チャン氏は、「他社製品は組織内でのコラボレーションを念頭に作られているが、WebExは社外とのコミュニケーションが可能で、それらのライフサイクル全体を管理する機能がある」と違いを説明する。
気になるセキュリティはどうか。WebEXでは、通信内容が暗号化されるほか、インターネットを介す場合、ワールドワイド70カ国につながるという同社の専用線「WebEX MediaTone Network」を通り、インターネットを通る距離が極力短くなっているため、外部にデータを傍受される心配が少ない。さらにそのネットワークはデータが一切蓄積されないスイッチングサーバーで構築されているため、セキュアなネットワークを実現しているという。
チャン氏によると、これらにより米国のWebTrust認証、および米国監査基準(SAS)70号をクリアしており、先ごろ米国国防総省でも採用が決まったことで「信頼性の高さが証明された」と話す。セキュリティの面では企業での利用にも問題ない高いレベルにあるといえるだろう。
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WebEx Meeting Centerのイメージ(画面は英語版)
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WebEx Support Centerのイメージ(画面は英語版)
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■ ブロードバンドの次に来る変革
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ウェブエックス コミュニケーションズ ジャパン 代表取締役 田野豊氏
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むしろ同社の国内展開や、国内の遠隔市場全体で課題となりそうなのが、遠隔会議に比較的なじみの薄い日本ユーザーにどれだけメリットを訴求できるかという点だろう。米国より移動にかかる時間が短く、これまでも電話会議などがあまり利用される機会が少ない。ウェブエックス コミュニケーションズ ジャパン代表取締役の田野豊氏は、これに対し(1)ブロードバンド環境の整備が進んでいること、(2)製造業を中心に海外(特にアジア)へ進出する企業が多く、必然的に需要が発生することを理由に、今後の成長に自信を示す。
ここのところ、多くの遠隔会議システムがリリースされているなか、導入に向けたユーザーの情報収集が活発化しているという。国内の企業においてブロードバンドの定着の次に来るのは、コミュニケーション手段の大きな変革である可能性は高いといえそうだ。
■ URL
米WebEx Communications
http://www.webex.com/
ウェブエックス コミュニケーションズ ジャパン株式会社
http://www.webex.co.jp/
( 朝夷 剛士 )
2005/03/11 14:57
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