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「キャリアを支えた高可用性ルータを企業にも」、企業向け市場への取り組みを強化するジュニパー


技術本部 シニアシステムエンジニアの松原星一氏
 ジュニパーネットワークス株式会社は6月1日、プレス向けセミナーを開催し、技術本部 シニアシステムエンジニアの松原星一氏が、「7年の歴史がある“枯れた”ものでありながら、新鮮味が薄れていない」という同社のルータ向けOS「JUNOS」をはじめとした、同社ルータ製品についてのアピールを行った。

 JUNOSは、FreeBSDをベースに開発されたモジュラー型構造のOSだ。業界標準的な存在になっているシスコ「IOS」などのモノリシック型OSと比べて、可用性、柔軟性に優れているとされる。それは、モノリシックOSでは単一のメモリアドレス領域ですべてが稼働しているのに対して、モジュラー型OSでは各プロセスごとに独立して運用されているためである。独立しているのであるから、障害が起きてもほかのプロセスに影響を与えにくいし、アップデートやサービスのリブートも、全体をダウンさせることなく行うことができる。松原氏はこの違いを例えて「昔のDOSマシンとUNIXマシンの違い」と説明する。

 こうしたメリットがあるため、各社はモジュラー型OSの開発に力を注いでおり、シスコも富士通と共同開発を進めている「IOS-XR」を、新たにCisco 12000に搭載した製品を発表しているし、スイッチベンダではあるが、エクストリームも「Extreme XOS」の展開を積極的に推進しているのが現状だ。

 しかしJUNOSには、他社にないメリットが存在するという。それは、全ルータプラットフォームに共通して採用されていることや、シングルイメージで分岐が存在しないこと、前述のように、7年もの歴史を他社に先行してもっていること、などだ。プラットフォーム共通という点では、企業のエッジ向け「Jシリーズ」からキャリアのコア向け「Mシリーズ」まで、すべてにおいてJUNOSが用いられていることから、規模の拡大に伴って製品を入れ替えることになっても、余計な検証作業や管理者のトレーニングに時間を割く必要がないというのは、大きなメリットといえる。

 そして、OSは常に1つの幹をたどってバージョンアップすることから、運用中の負担も軽減できるという。「某業界標準OSにはたくさんのブランチ(バリエーション)が存在するので、ある機能を追加しようとすると、それまでとは異なったブランチになることがある。こうして系列が変わると、バージョンアップによって、過去に一度つぶしたはずのバグをもう一度経験してしまう、といったケースによく出会う」(松原氏)。JUNOSなら、こうしたトラブルのもとをなくすことができるというのである。

 一方、プラットフォームとして見た場合は、ハードウェアの面で、冗長構成を取ったルーティングエンジン間でキープアライブを行って、プライマリのエンジンに障害が起こっても、セカンダリにダウン時間なくルーティング情報を引き継ぐ機能を搭載するほか、「(コンパクトフォワーディングエンジンボードやスイッチングインターコネクトボードなどの)スイッチファブリックを、5Uクラスの小型製品から冗長化できる」(松原氏)点などが優れているという。


ネットワーク全体の可用性を高める仕組みも導入

BFDの概要
 ネットワーク全体では、Protocol Graceful Restartのサポートによって、信頼性をあげることができると説明する。この機能を利用すると、たとえばルーティングエンジンに障害が発生し、フォワーディングエンジンが生きている場合、隣り合ったルータは障害発生を検知したとしても、そのままパケットの転送を継続するので、パケット落ちを最小限に食い止めることができる。松原氏は、「当社はBGPなどのインターネット(IETF)ドラフトのものだけでなく、OSPFなど、RFC化されている(段階の)ものもきちんとサポートしている」と述べ、優位性を強調した。

 また松原氏は、ネットワークの信頼性を確保する面での最大の特徴として、「BFD(Bi-Directional Forwarding Detection」を挙げた。これは、「UDPプロトコルを用いてキープアライブをするだけ」のシンプルなものなのだが、「ルーティングプロトコルなど上位のプロトコルにお構いなく動作する」(いずれも松原氏)性格を持つ。

 障害を発見・修復する時間の短縮が、強く求められるようになっていることから需要が高まっており、ジュニパーはJUNOSをいち早くこのプロトコルに対応させている。最新版のJUNOS 7.1では、OSPFに加えてスタティックルートも新たにサポートした。

 「これまでは、スタティックルートで障害が発生してもルーティングテーブルからその経路を簡単に削除できないので、Next-Hopの冗長化などの手法で対策を取ってきた。この場合は、どんなに短くても切替までに30秒はかかった。しかしBFDをスタティックルートで利用できるようになれば、簡単に障害を検知できるため、1~2秒で対応できるようになる」(松原氏)。

 このBFDはすでにIETFのドラフトになっており、他社でも対応を進めてきているというが、「おおよそ当社から半年遅れと見ている」(同氏)とのことで、ここでもジュニパーとその製品の優位性を強調していた。

 なおジュニパーでは、同社製品が浸透しているキャリア/xSP市場だけでなく、エンタープライズ市場での展開もにらみ、今後はさまざまな施策をうっていくという。以前は正反対だったキャリアと企業それぞれでの通信の優先度が、ここ最近では同じ方向を向くようになったとした上で、エンタープライズ営業開発部 本部長の須田益一郎氏は「(企業でも受け入れられるように)製品単体ではなくソリューションとしても提供する方向で進行中」と述べた。

 また、ブランド認知度の点では高いと言えないことから、「ユーザーやパートナー向けのトレーニングをすすめるほか、買収したNetScreenブランドも生かした形での展開を考えている」(同氏)とのことで、既存のJシリーズの下位製品などをエンタープライズ向けの製品としても位置付け、販売活動を行っていくとした。



URL
  ジュニパーネットワークス株式会社
  http://www.juniper.co.jp/

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( 石井 一志 )
2005/06/01 20:37

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