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アジア太平洋地域担当副社長のアダム・ジャッド氏
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アジア太平洋地域マーケティング担当シニアダイレクター、アンディ・ミラー氏
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米Juniper Networksはバンコクにて、6月7日(現地時間)からExecutive Forum 2005を開催するが、それに併設して6月6日にプレスセミナーを開催し、アジア太平洋地域のプレスを前に同社の事業戦略などを説明した。
まず説明に立ったのは、アジア太平洋地域担当副社長のアダム・ジャッド氏だ。2004年第4四半期に、同社はコアルータ市場で39%のシェアを占め、業界第2位にあるというが、同副社長は「7年前、当社のシェアは0%だった。そこからスタートして、これだけのシェアを確保できるようになった」と述べ、順調に成長している点を強調する。またこうしてJuniperが大きくなってきた理由として、「いつでも、問題点を解決しようという真剣な取り組みをしてきたから」という点を挙げ、プラットフォーム確立のため、さまざまな企業を買収してきたとした。
この買収の1つが、2004年4月に完了した、セキュリティ製品の専業ベンダである米NetScreenの買収だ。Juniper自身はもともと、キャリア向けルータ分野で実績を積み上げてきたベンダだが、「顧客における、キャリア・xSPと企業の割合は半々」のNetScreenの資産を受け継ぐことによって、Juniperは企業向けビジネスへの足がかりを得た。セキュリティ関連のポートフォリオを拡充するとともに、これまでと異なるディストリビュータとのコネクションを得ることができたのである。
さらに、企業のニーズが変わってきたことも、同社が企業向け市場に注目するようになった一因だという。もともと、IPネットワークはキャリア向けにデザインされたものだったが、今ではIPネットワークが企業のビジネスや戦略の上でなくてはならないものになってきた。そのため、「キャリア向けビジネスで培った同社の製品・経験が、企業向け市場でも十分に生かせるようになった」(同副社長)ということなのである。
続けてジャッド副社長は、この分野での取り組みに触れ、ルータ「Jシリーズ」や、旧NetScreenのソリューションである統合型セキュリティアプライアンス「NetScreen 5GT Wireless」、「RA-500」をここ最近市場へ投入してきたとして、製品面でも、企業向けのラインアップが増えてきている点を紹介。「過去7年、39%の(コアルータ)市場シェアを勝ち取るべく努力してきたが、企業市場のシェア拡大でも、同じように努力したい」との意気込みを示す。
また、アジア太平洋地域マーケティング担当シニアダイレクター、アンディ・ミラー氏は、「いざ実際にこの分野での販売をのばそうと考えた場合には、チャネルがとても重要だ」と主張する。「エンタープライズは数が多くて大変だが、当社ではセミナー、DM、広告などのマーケティング活動をしている」(ミラー氏)というものの、企業向け製品の市場は、これまで同社が手がけてきたキャリア・xSP市場と比べて、対象となる企業数の数が圧倒的に多い。そこで同社では、チャネルパートナー向けの教育に一番力を入れ、「ユーザーに知ってもらうための努力をしている」と、ミラー氏は述べた。
■ セキュアで確実なネットワークの実現に向けた、企業向けの新フレームワーク
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エンタープライズインフラネットの中の、セキュリティコントロールの働き方
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エンタープライズインフラネット実現に向けた製品ロードマップ
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またNetScreenの後、2005年には、VoIP製品を手がけるKagoor Networks、WAN最適化ソリューションを提供するPeribit Networks、Webアプリケーションのアクセラレーション技術を持つRedline Networks、の3社の買収を発表した(近日完了予定)ことも、キャリアとともに企業からのニーズを満たすことの1つだという。
ミラー氏は、「全体像を見た時に、欠けている点を自分たちで開発するか、“ショッピング”するのか、どちらが早いか、ベストなものを作れるのかを考えて買収した。当社では、全体的な戦略として、トラフィックのプロセスのリーダー的存在になりたいと考えている」と述べ、大きな目標を実現させるための一歩として、これらの企業を買収したと説明する。
そしてJuniperでは、企業向け市場での大きな目標として、「エンタープライズインフラネット」という考え方を提唱しているという。すでに動き出しているキャリア向けの「インフラネット」構想と異なり、まだ第一歩を踏み出したばかりだというこの考え方は、今まで、「買収してからの統合策が見えてこない」と批判されることもあったNetScreenのソリューションや、新たに手に入れた3社のソリューションも活用して、「セキュアかつ確実なネットワーキングを可能にするフレームワークで、IPベースのエンタープライズインフラの構築を目指すもの」だという。
このソリューションの考え方としては、検疫ネットワークに近い部分もある。ネットワークに接続しようとするユーザーは、「エンタープライズインフラネットコントローラ」という機器にいったん接続。パーソナルファイアウォールやウイルス対策の状況を確認してもらい、ネットワークの安全が担保された場合に、はじめて接続が可能になる仕組みだ。
この特徴は、「既存の機器をそのまま利用できること」(ミラー氏)。エンタープライズインフラネットの場合は、強制点(エンフォースメントポイント)と呼ばれる、ネットワークの重要な部署に配置された機器(実際にはNetScreen Firewallなどが担当する)で、認証されなかった端末からの通信をカットする仕組みなので、機器を付加するだけで済む。NACとの違いを問われたミラー氏は、「シスコのNACではスイッチのポートに依存するため、機器の置き換えが必要になる。マイクロソフトのNAPは、あくまでWindowsが対象」と述べ、競合との違いを強調した。
またこのネットワークではセキュリティ面だけでなく、ネットワーク上での高いパフォーマンス、信頼性を備えたデータ転送能力を持たせようという「デリバリー管理」、そしてネットワークの利用を制御する能力である「利用制御」の2つの要素も備えた、総合的なネットワークの構築を目指している。このネットワークはまだ完全に現実のものになってはいないが、企業向けネットワークの領域に大きく注力し始めたJuniperの戦略がどういった効果を市場全体に及ぼすかを、しばらくは注意する必要がありそうだ。
■ URL
米Juniper Networks
http://www.juniper.net/
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( 石井 一志 )
2005/06/07 10:41
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