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「Webアプリケーションが抱える落とし穴に警告」、F5


 「アプリケーションアクセラレーション」という分野をご存じだろうか。これは、アプリケーションのパフォーマンスを改善するために用いられる、さまざまな技術の総称だという。F5ネットワークスジャパン株式会社(以下、F5)は6月24日、プレス向けのセミナーを開催して、「アプリケーションがWeb化するにつれ、パフォーマンスが問題となってくるだろう。その際には、この技術の有無が非常に重要になる」と主張し、同社の持つ関連技術・製品をアピールした。


Webアプリケーションが抱える問題は「パフォーマンス」

ボトルネックはWANだけでなく、サーバーにも存在する
 F5のプロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏によれば、米Gartnerは「2005年までに、Web対応アプリケーション導入プロジェクトの50%以上がエンドユーザーのパフォーマンス問題に直面する」と指摘しているという。この背景には、アプリケーションがWeb化すると、相互のやりとりが増える「おしゃべりなアプリケーション」になる、ということがある。

 最近では社内情報ポータルだけでなく、Oracle、SAPなどをはじめとするビジネスアプリケーションもWeb対応が進んでおり、また国内、海外を問わず散在するシステムの運用一元化も促進されている。しかし、Web化されたアプリケーションは、「それまでのクライアント/サーバーシステムと比べて、トランザクションはざっと10倍になる。また、1ページあたり約30回のリクエスト/応答が必要になってしまう」(武堂マネージャ)。

 加えて、確認応答やフロー制御、ふくそう制御、スロースタートなど、信頼性を確保するためにTCPが持つ仕組み自体が、逆にオーバーヘッドを生む。また、サーバー側でも、TCPコネクション処理、SSL処理といった処理を行わなくてはならない関係上、本来の1/3程度しかアプリケーション処理にリソースを割けなくなっているという。

 しかも、こうしたことによって起こる性能低下は、「帯域を広くしても解決するとは限らない」(武堂マネージャ)。たとえば、RTT(ラウンドトリップタイム)の大きな環境では、帯域に余裕があったとしてもスループットが低下してしまうため、回線本来のポテンシャルを発揮できなくなる。

 そこで、アプリケーションの配信効率をあげるための技術や、WAN・通信の最適化を行うための技術がさまざまクローズアップされてきたのである。これらは、WANに固有の大きなRTT/遅延を軽減してネットワークが持つ本来の性能を発揮させるようにしたり、データの圧縮、キャッシュ、SSL処理のオフロード、帯域制御といった技術を用いたりして、問題の解決を図ろうとしている。


「ほかのベンダはポイントソリューションだけ、F5に競合はない」

F5のプロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏
 この分野で著名なベンダとしては、たとえば米Redlineや米Peribit、米NetScalerなどがあったが、前2社は米Juniperが、後1社は米Citrixが、それぞれ2005年になってから買収している。また米Ciscoは米Actonaを昨年買収したほか、6月21日(米国時間)には、業務アプリケーションとの親和性を高めた新しいネットワーク構想「Cisco Application-Oriented Networking」を正式に発表している。

 F5の代表取締役社長、ティム・グッドウィン氏は、規模の大きな企業がこの分野に参入してくる最近の動きを「当社はすでに何年も前からフォーカスしていた分野。知名度のある大企業の参入で認知度があがることは喜ばしい」と歓迎する。

 先ほどあげた企業のうち、たとえばRedlineはWebサーバーへの負荷を軽減する技術を、Peribitは圧縮や帯域・優先制御の技術を持っていたが、武堂マネージャは、「1つだけで問題を解決できる決定的な技術があるわけではなく、状況に応じて組み合わせることが必要になるため、複数の技術を集合した『アプリケーションアクセラレーション』としているのだ」という。

 つまり単一の技術だけでは、最大限の効果は発揮できないというのである。武堂マネージャはこれに関して「ポイントソリューションを持つベンダはさまざまあるが、必要な機能をすべて備えるのはF5のBIG-IPだけだ。当社では、この分野での、本当の意味での競合はないと思っている」と強気に語った。


標準にこだわった最適化で、コストメリットを提供

 続けて武堂マネージャはこのBIG-IPが備える機能のうち、「TCP Express」機能を詳しく説明した。帯域の効率を最大4倍効率化できる同機能は、簡単に言うと同社が提供するTCP最適化機能の集合体なのだが、肝はすべて「RFC標準に基づいていること」だという。

 たとえばRFC 2018の「Delayed and Selective Acknowledgements」は、パケットの確認応答で、欠落したパケットのみを送信側に通知して、再応答を促すもの。これをサポートしていると、ロスしたパケットを再送した後、すでに届いているパケットを重複して送る必要はなくなるため、余計なやりとりを減らすことが可能になる。

 TCP Expressではこのような“標準の”機能をいくつも組み合わせているので、機器を対向で設置しなくても効果を発揮するが、武堂マネージャは「これこそが、ユーザーにとって大きなメリットになる」と述べる。他社では、本社・拠点間など、対向で配置したアプライアンス同士の間で通信を最適化するアプローチを採用しているところもあるが、この方法では、拠点ごとにアプライアンスが必要となるため、拠点数が多ければ多いほどに投資額が膨らんでしまう。

 しかし標準の技術を使用するケースでは、クライアント側のOSやWebブラウザが標準をサポートしていれば、BIG-IPとの間ではその機能を用いることができる。武堂マネージャは「パフォーマンスでは一歩譲る可能性がある」点は認めながらも、コスト面で圧倒的な優位性があると強調していた。



URL
  F5ネットワークスジャパン株式会社
  http://www.f5networks.co.jp/

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( 石井 一志 )
2005/06/24 19:00

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