国際自動車レースであるF1(フォーミュラ・ワン)を走るF1カーを見ると、数多くのIT企業のロゴがあり、スポンサーとして参加していることがわかる。F1カーやそれを支えるシステムのハイテク化が進み、社名やブランドとともにその技術を誇示・実践できる場として、ここ数年ワールドワイドで展開する企業がチームを支えている。
IP電話やモバイルシステムベンダーである米Avayaは、ホンダがエンジンを供給し現在唯一の日本人ドライバーである佐藤琢磨選手が所属するBAR Hondaチームに、IPコミュニケーション技術を提供している。F1でのコミュニケーションというと、レース中のピットとドライバー間の通信が思い浮かぶが、それだけでなくサーキットとチームの本拠地があるイギリス、さらに本戦を戦うチームとは別にマシンのテストや調整を行うテストチームを結ぶブロードバンドを介したIPによる音声やデータ通信技術も同社が提供している。
|
米Avaya EMEA コンバージェンスビジネス・デベロップメント・ディレクター ロジャー・ジョーンズ氏
|
米Avaya EMEA コンバージェンスビジネス・デベロップメント・ディレクターのロジャー・ジョーンズ氏によると、チームは総勢で約450名いるが、そのうち100名は1年間に18戦行われる各国のサーキットを転々と移動しており、それぞれの国で本部との音声・データ通信環境が必要になるという。かつてはレースごとに電話回線を引き、電話番号を確保したりする必要があり、大きな通信コストが問題となっていたが、近年ではほとんどのサーキットにブロードバンド回線が確保されるようになり、チームもこれを利用したIPコミュニケーション技術を利用することで、約30%のコスト削減に成功したとのことだ。
このシステムを大まかに説明すると、チームの本拠地にIP-PBXが設置されており、各国を回るチームスタッフはIPソフトフォンを利用できるPCやモバイル端末を使ってブロードバンド回線に接続すれば、本拠地とチームスタッフ間の通信を低コストで実現できるというもの。セキュリティの確保など細かい設定は異なるが、基本的には企業で導入が進みつつあるモバイルコミュニケーションシステムに近い形態だ。つまりネットワークに接続できれば、世界中どこにいても低コストで同じ仕事ができる。ちなみにAvayaでは、携帯電話やPDAなどに限らずオフィス以外で仕事を可能とするものを「エンタープライズモビリティ」であるとしている。
ジョーンズ氏は、このシステムを企業で活用することで、どこにいても自席と同じ仕事ができると話す。同社が提供するIPコミュニケーションシステムシステムはIPソフトフォンを利用するが、先ごろ携帯端末用のSymbian OS上で動作するソフトフォンアプリケーション「Avaya Mobile」を公開した。日本ではボーダフォンのNokia製携帯電話端末「702NK(Nokia 6630)」で利用できる。これとAvayaのIP-PBXを連携させ、自席の内線端末とシームレスな切替が可能となる。
例えば、自席の内線に電話がかかってきた場合に、携帯電話に転送したり、内線端末と携帯電話を同時に呼び出し、さらに通話中に内線と携帯の切替などもできる。携帯電話の通話料はIP-PBXと携帯電話間の料金のみで、音声品質は通常の携帯電話と同様となる。
携帯電話だけでなく、PC上で動作するソフトフォンを利用したワークスタイルも増加している。ジョーンズ氏によると、米国では企業の89%が在宅勤務者をかかえているとのことで、国内でもサポート業務を在宅勤務者に委託したり、IPで接続した地方拠点を設置するといった例も増加している。
|
|
IP-PBXとソフトフォンや携帯端末との関係イメージ
|
Avaya Mobileが動作するVodafone 702NK(Nokia 6630)
|
■ URL
日本アバイア株式会社
http://www.avaya.co.jp/
■ 関連記事
・ 日本アバイア、日本のオフィス環境にフォーカスしたIPテレフォニーシステム(2005/05/24)
( 朝夷 剛士 )
2005/07/29 18:53
|