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パワードコム 広域イーサネット開発第2グループの浅岡理一郎氏(左)と、広域イーサネット戦略グループの佐々木正朋氏(右)
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広域イーサネットの使い勝手を本格的なモバイルアクセスで向上させる。そんなサービスを、パワードコム株式会社が京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)と協業して、12月1日からスタートさせる。このサービスは、「Powered Ethernet/PENeXゲートウェイモバイル[KWINS]プラン」(以下、モバイル[KWINS]プラン)と呼ばれ、パワードコムの企業向けネットワークサービスであるPowered EthernetやPENeXを、PHSや3Gなどの携帯端末からもセキュアに接続、利用できるようにしようというものだ。
従来、こうしたネットワークに携帯端末から接続しようとする場合は、一度インターネットを経由するために、ユーザーからみるとセキュリティに対する不安を隠せなかった。ところがモバイル[KWINS]プランでは、パワードコムのPowered Ethernet網やPENeX網とKCCSのKWINS網をゲートウェイで閉域接続するために、きわめて精度の高いセキュア環境を実現させうるという。
マーケティング・商品統轄本部 広域イーサネット商品企画部 広域イーサネット開発第2グループ 浅岡理一郎氏は、「モバイルユーザーが抱く悩みや不安はこれだけにとどまらない。ゲートウェイの継続的な帯域管理の煩わしさをはじめ、まず小規模から取り組みたいがゲートウェイ料金があまりに高すぎる、PHSと3G両方を利用したいとき複数モバイルキャリアとの手続きが面倒、帯域不足気味のPHSから3Gへ移行したいが料金が心配、障害発生時の原因切分けを関係各社へ問合わせる際の時間や手間を無視できない、3GとPHSを使い分けたい、日々の認証サーバ運用に手間がかかる、など実に多岐に及ぶ」という。しかし同時に「この新しいプランは、モバイルユーザーが抱えるそうしたすべての課題を一挙に解決させうるベストソリューションとなるはず」と言い切り、いま確かな手応えを感じているところだ。
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モバイル[KWINS]プランを実現させるためのネットワーク構成図
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右図はモバイル[KWINS]プランを実現させるためのネットワーク構成図である。図から明らかなようにこのネットワークは、パワードコムとKCCSのネットワークが閉域接続された格好になっている。これにより、従来のインターネット接続と比較しても、傍受の危険性やなりすまし・不正アクセスへの対応などセキュリティが向上する。またゲートウェイ部分の帯域はパワードコムが確保してくれるので、ユーザーは増速を検討しなくてすむし、モバイルアクセス選択自由度においてもメリットを発揮できるのである。
このプランには、2つの基本的なサービスがある。第1がPHS向けのKWINS4Xで、送受信ともに128kbps(ベストエフォート)である。第2が3G携帯端末向けのKWINS3Gで、これはKDDIのCDMA 1X WINサービスをベースに提供、伝送速度は受信2.4Mbps(ベストエフォート)、送信144kbps(同)となっている。これら2つのサービスは、たとえば帯域を重視するユーザーには伝送速度最大2.4MbpsであることからKWINS3Gが向くし、全国展開といったエリア重視のユーザー向けにもいい。一方、定額性を重視するユーザーにはKWINS4Xが向く。いずれのサービス利用時もユーザーは専用のKWINSカードを用意するだけでいい。
またPHSと3G両方を使いたいニーズに対しても、パワードコム側の対応になるのでユーザーはいっさい気にしなくていい。さらに認証サーバーは通常ユーザー側に設置し自身の管理となることが多いが、ここではパワードコムやKCCSが無料でアウトソースを引き受けてくれる。
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3G携帯(上)とPHS(下)を利用する場合の料金表
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しかし、そうしたユーザーメリットもさることながら、モバイル[KWINS]プランにはもう1つ、ユーザーにとって欠かすことができない経済的メリットがあることをあげないわけにはいかないだろう。このようなサービスで、他キャリアによるものは従来、ゲートウェイに対し利用伝送速度やユーザー数などから数十万円程度の料金設定をされていることが多かったが、モバイル[KWINS]プランは端末1台あたり、すなわちID単位の設定なのである。
具体的には、月額で3Gが1IDあたり500円、PHSが1IDあたり100円となっている。他社サービスとパワードコムの今回新サービスをゲートウェイ料金で比較した場合、仮にIDを300台とすると、1IDあたりの料金は「3Gによるサービスはおよそ700円~1000円だし、PHSはおよそ200円~800円といったところ。この比較例からしても、新プランの経済的有利性は明らか」(浅岡氏)という。このような料金が設定してあると、ユーザー規模事情に応じて、まずは試しに最初に端末何台かの規模から始めて、効果を見極めて増設したいといった先のユーザーニーズにもフィットしうるのである。なお、右表に3GおよびPHSの料金を示した。
オプションサービスには、提携する無線LANサービス事業者のアクセスポイント約3000カ所を利用できる公衆無線LAN利用サービス(月額でBBモバイルポイントのみは500円、そのほか3ブランド込みで1500円)や、KWINSのID/パスワードで海外でもモバイルアクセスが可能なサービス(完全従量制)、発信者番号認証(初期費用500円)、ワンタイムパスワード(登録料・端末費用ともに初期費用1万円、月額500円)などが用意されている。
広域イーサネット商品企画部 広域イーサネット戦略グループの佐々木正朋氏によると「このプラン投入を本格的に考え始めたのは今春。Powerd Ethernetの売り込みの際、顧客からモバイル環境では使えないのかといった要望がかなり根強かった」という。とくに製薬会社の営業担当者からは顕著であったそうだ。つまり新プランは、ユーザーニーズが誕生させた確かなソリューションといえよう。
ターゲットとする市場は、社外や店舗等からの社内POSシステムへの接続ニーズが高い流通系をはじめ製造系などであるが、とくに製薬系は上記ニーズにもみられるようにとりわけ意識している。また流通系数社からはすでに引き合いもきている。「向こう3年間で、約10億円が我々の売上目標」と佐々木氏は意欲的だ。
■ URL
株式会社パワードコム
http://www.poweredcom.net/
京セラコミュニケーションシステム株式会社
http://www.kccs.co.jp/
ニュースリリース
http://www.poweredcom.net/company/news/05_news/051110.html
( 真実井 宣崇 )
2005/11/10 11:29
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