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マクデータ、ストレージメーカーに依存しないリモートオフィス統合ソリューション


 マクデータ・ジャパン株式会社(以下、マクデータ)は3月30日、企業におけるリモートオフィスのデータ資産統合や最適化、保護などを実現するためのソリューションとして、「ROC」(Remote Office Consolidation)を発表した。これにより企業は、データ保護はいうまでもなく、エンタープライズ規模におけるコスト削減、最近の関心事でもあるコンプライアンス(法規制順守)、そしてエンタープライズデータ管理の効率アップなどをクリアできるという。


リモートオフィスに“泣き別れ”の企業データ

 今企業では、扱うデータ量の飛躍的な増大に伴い、データセンターのみならず複数リモートオフィスへそれらのデータを分散配置せざるを得ないのが実情だ。米Enterprise Strategy Groupの今年度の調査によれば、この傾向はかなり顕著で、企業が保有するデータの50~75%がリモートオフィスのローカルサーバー内にあるという。

 こうした企業の情報システム環境では、周知のように分散型クライアント/サーバーコンピューティングが多く利用されている。WANの伝送速度がLANのように高速ではなく、待ち時間がネックとなるため、リモートオフィスでもアプリケーションのパフォーマンスを確保する必要上、サーバーとストレージを同一場所に設置せざるをえないからだ。

 しかし、こうしたリモートオフィス環境におけるデータ保護体制やITスキルセットは、データセンターのように冗長化がとられていないため、重要なメールなどが喪失する恐れがあるほか、分散されているためにコストも余計にかかるなど、必ずしも十分ではなく、企業における悩みのタネにもなっている。マクデータのROCは、こうした悩める企業の“救いの神”的な役割を担うべく投入されたという。


企業ニーズにもあわせ導入しやすいモジュール構造を選んだROC

代表取締役社長、石本龍太郎氏

ROCの提供イメージ

SpectraNet WAN Data Services Accelerator
 マクデータの代表取締役社長、石本龍太郎氏は、「ROCは2005年初頭に当社が発表した、顧客志向で統合ネットワーク構築をめざすGEDI(Global Enterprise Data Infrastructure)を実現させる、初めての手法といえるもの。具体的にはディザスタリカバリを実現したり、データセンター同士、もしくはデータセンターとリモートオフィスを接続させたりするためのツールだ」、とROCでめざすコンセプトを強調する。

 ROCは、おもに次のような製品およびサービスで構成されたモジュラー構成となっている。

 まず「SpectraNet WAN Data Services Accelerator」が重要な構成要素だ。これは、このたびOEMリセラー契約した米RiverbedのWDS(広域データサービス)アプライアンス「Steelhead」を、マクデータが新しく「SpectraNet」ファミリーの名で再ブランド化して販売するもの。これによって、WAN上のすべてのTCPアプリケーションに関しパフォーマンスを最大100倍にまでアップ可能なため、企業はリモートオフィスのデータとインフラをデータセンターに統合し、データ保護環境強化やコスト削減、ビジネス情報へのリアルタイムアクセスを実現できる。リモートオフィス統合化のためにはこの製品が不可欠、という位置付けだ。

 またSpectraNet Replicator for Exchangeも、このたびOEMリセラー契約した米FalconStorの複製技術を用いた製品を、「SpectraNet」ブランド化したものである。ローカルファイルやデータベースへのアクセスをはじめ、Outlookメールボックスの障害復旧、リモートのExchangeデータを障害復旧させる際のパフォーマンスを高める。

 このソリューションがなぜExchangeに注力しているかについて、マクデータのシニア・ソリューションコンサルタント、山田祐輔氏は「ほかの著名なデータベースの場合は分散環境で使用されるケースがまず見あたらない。しかしExchangeメールサーバーは、レスポンスの悪いWANにおける分散環境で利用されていることが多い」と、その理由を説明する。

 ROCのコンポーネントとしてはほかにも、「Eclipse SAN Router」や「UltraNet Extension」といったストレージルータや、Intrepid10000/6140、Spheron4500/4400/4700などのFC(ファイバチャネル) SANスイッチなどがある。さらに回線サービスは日本の場合、マクデータのパートナーやリセラーの回線リセールによって利用できるようにする。「グレードの高い回線を利用していた顧客がWDS導入により機能アップした場合、逆にもう少し下位の回線を利用して回線コストを下げる提案もさせていただきたい」と、石本氏は戦略の一端をにおわせていた。

 一方山田氏は「企業はこれらの製品やサービスを必ずしもすべて導入しなくてもよく、当面のニーズをよく吟味して必要最小限の導入をするのでもいい」とモジュラー構成のメリットを語る。なお、ROCを導入すれば、企業は通常1年以内に投資対効果が得られるという。またあるユーザーの場合、データ転送を100倍以上改善したほか、Exchangeの性能も50倍に改善、さらにWANトラフィックについても80%を削減した、という報告もあるそうだ。


ROCとWAFSとの違いは?

SDR(Scalable Data Referencing)の提供イメージ

シニア・ソリューションコンサルタント、山田祐輔氏
 なお、この種のソリューションとして注目されているものにWAFS(Wide Area File Services)があるが、「これはあくまでファイルキャッシングを行うもので、アプリケーションも主としてNFSやCIFSなどに限られている。一方、WDSの場合は、それらに加えてWebアプリケーション、HTTPキャッシング、FTP、ERPほかほとんどのアプリケーションに対応している」と山田氏は優位性を説明する。

 特に、WAFSと大きく異なる機能として、SDR(Scalable Data Referencing:スケーラブルデータ参照)をあげる。「たとえば複数の客先向けプレゼン資料を作成する場合、同一内容で客の名のみを変えて保存する。このとき、一度は同一内容でもそれを使用せざるをえないが、次からはその差分情報のみを使用するだけですむ。この際は、NFSの情報か、CIFSの情報かといったことは配慮無用」というものだ。このSDR機能によって、WANを介して同一データが複数回送信されることを避けることができ、「帯域利用率は60%から95%超まで大幅な低減も可能になる」という。

 こうしたROC環境に対する顧客へのサポートはマクデータが直接行うし、新たにスタートさせるプロフェショナルサービスでは、アーキテクチャのデザインから展開プラン、導入まで顧客のROC導入プロジェクトのすべてのステップをエンドトゥエンドでサポートする。なおプロフェショナルサービスは8月以降に開始を予定しており、目下のところ数名の人材を採用すべく取り組んでいる。


分散データの集中管理で企業はどう変わる?

 石本氏は「リモートに配置されたデータは、なにもメールだけにはかぎらない。エンジニアやデザイナーの傍らにある、デスクトップストレージに入れられた場合も多々あるはず。企業はこうしたデータもしっかりプロテクションしなければならない」と、製造・設計分野に向けても十分ソリューションをもたらしうることを強調する。

 マクデータは、このたびのROC投入を通じて新たなチャレンジを考えている。石本氏は、「これまでの新ソリューション発表時は、なんといってもストレージメーカーへの依存度が顕著であった。しかしこのたびはそうした依存もなく、既存の顧客リソース上にマクデータの付加価値をのせて構築可能なことを示すことができた。これで当社の従業員全体のモチベーションも大いにあがった」と述べ、ROCによる直接の効果のみならず、新たな戦略へと広がりを示せることをにおわせる。同社では、今後とも、分散されたデータをコアで集中管理し、効率の高いIT利用やセキュリティ向上をめざすなど、エンタープライズ環境をより拡張できるソリューションを、とりわけ経営者に向けてアピールしていきたい意向だ。



URL
  マクデータ・ジャパン株式会社
  http://www.mcdata.jp/


( 真実井 宣崇 )
2006/03/30 10:44

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