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F5ジャパン、「BIG-IP」の最新ソフトと最上位アプライアンス-管理性などを強化


F5ジャパンのシニアプロダクトマーケティングマネージャー、武堂貴宏氏

米F5 Networksの製品マーケティング担当ディレクター、ジェイソン・ニーダム氏
 F5ネットワークスジャパン株式会社は2月28日、主力製品であるアプリケーションスイッチ「BIG-IP」関連製品を強化すると発表した。「BIG-IPソフトウェア」の最新版である「同 v9.4」をリリースするほか、Webアプリケーション高速化モジュール「WebAccelerator」を発売する。いずれも同日より販売を開始した。また、アプライアンスのベースハードウェアとしては最上位にあたる「BIG-IP 8800」を、2007年夏に国内で販売開始することも明らかにしている。

 F5ジャパンではかねてから、アプリケーションを提供するためのインフラとして「アプリケーションデリバリネットワーク」という概念を打ち出し、そのための包括的なソリューションを提供してきた。そのための中核となるのがBIG-IPであり、同社はこれを、単なるロードバランサーを超えた、「アプリケーションデリバリコントローラ」に位置付けて市場へ展開中だ。

 今回の強化、新製品リリースも、この方針にのっとったもの。まずソフトウェアのBIG-IP 9.4では、管理をいかに効率化できるか、という点にフォーカスし、「管理ドメイン機能」を追加した。この機能では、制限された管理機能や権限を担当者に割り振り、アプリケーションやセキュリティといった担当業務別に、必要な情報・機能のみを利用できるようにする。F5ジャパンのシニアプロダクトマーケティングマネージャー、武堂貴宏氏はこの機能を「仮想化時代を見据えた管理機能」と評した。

 また、アプリケーションの信頼性を高めるため、監視できるアプリケーションの種類を拡張したのも強化ポイント。従来はHTTPによるチェックによってコンテンツの稼働を監視していたが、今回はIBMのWebSphere、CIFSなど20種類以上のアプリケーションに関するヘルスチェック機能をプリセットしたという。米F5 Networksの製品マーケティング担当ディレクター、ジェイソン・ニーダム氏は、「ネットワークはアプリケーションのために存在するといっていいが、システムがどういう性能を発揮しているかを知ってはじめて、トラフィックの最適化やセキュリティ向上が図れる」と述べ、重要性を強調した。

 あわせて新版では、iRulesによって実現される機能をテンプレート化して盛り込んだ。iRulesとは、パケットの中身に基づき、双方向でトラフィックを詳細にコントロールできるプログラム言語で、F5製品に標準で実装されている。F5 Networksでは、DevCentralというコミュニティサイトを立ち上げているが、今回はこの中で提供されている機能をユーザーが簡単に利用できるようにした。


BIG-IP 8800
 一方ハードウェアでは、WebAcceleratorモジュールによってWebアプリケーションにおける配信性能向上を実現した。一部のリッチクライアントシステムを除き、Webべースのアプリケーションでは、新たに更新された部分のみを再配信するようにはなっていない。そのために、通信が必要以上に発生してしまうという問題が生じる。そこでこのモジュールでは、インテリジェントブラウザリファレンシング機能を利用して、この問題を解決した。

 具体的には、Webブラウザとアプリケーションの間のコネクションを通常の3倍に拡大し、利用できる帯域幅を拡大するほか、なるべくクライアント側のローカルキャッシュにあるデータを利用することで、通信量を削減する仕組みを導入している。これは、動的に生成されるページに対しても有効に働くという。あわせて、WAN配信を想定してコンテンツの圧縮・最適化も行っている。

 最後のBIG-IP 8800は、マルチコアCPUの性能をリニアに引き出すため、CMP(クラスタ・マルチ・プロセッシング)技術をサポートした点が、もっとも大きな強化点。従来の最上位製品である「BIG-IP 8400」や、競合ベンダの製品と比べて、約2倍のパフォーマンスを発揮できるという。またニーダム氏は、「3台のBIG-IP 6400で行っていた処理を1台で行えるので、管理コストなどが下げられる」とし、パフォーマンス面での向上をアピールした。

 また武堂氏はこの製品について、「単なるラインアップの拡張ではない」と話す。内部にはデュアルコアプロセッサを2基搭載する予定で、「今後プロセッサ技術がどんどん拡張されてコアが増えていくが、本当にそれを100%活用できる技術があるかがポイントになる。この製品は、シャーシ型、ブレード型モデルへの第一歩だ」と述べ、今後のさらなるスケーラビリティ拡張に向けた、重要なマイルストーンに位置付けているとした。

 なお、WebAcceleratorモジュールとBIG-IP 8800の価格は未公表。BIG-IP v9.4は、保守契約を結んでいるユーザーについては、無償でバージョンアップできる。



URL
  F5ネットワークスジャパン株式会社
  http://www.f5networks.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.f5networks.co.jp/news/press/release/070228.html

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( 石井 一志 )
2007/02/28 16:53

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