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「NGN関連事業では3年後に4000億円が目標」-NEC

アクセス制御ソフトウェア「NC5000シリーズ」を発表

執行役員専務の広崎膨太郎氏
 日本電気株式会社(以下、NEC)は3月7日、NGN(次世代ネットワーク)におけるQoS制御およびアクセス制御を実現するソフトウェア、「NC5000シリーズ」を発表した。あわせて同社我孫子事業場で、NGN関連のキャリアネットワーク事業戦略を説明するとともに関連製品のデモを行っている。NECがNGNに精力的な取り組みを展開していることはこれまでの発表などから周知の通りだが、我孫子事業場でこれほど多彩なNGNソリューションを公開したのは初めてのことだ。

 現在、NECのネットワーク事業規模は、エンタープライズを含めておおよそ1兆円(2006年3月現在)規模であるが、うち70%がキャリアネットワークで占められている。その事業領域も、NGNにおけるオールIPネットワークを構成する「トランスポートレイヤ」「サービスレイヤ」の2レイヤ向けプラットフォームに加えて、企業ネットワークや端末、サービスアプリケーションまでも含めた広範に及ぶ。

 執行役員専務の広崎膨太郎氏は、「特に製販一体をはじめ国内外統一、固定・無線ネットワーク一括、ソフトウェア/ハードウェア一環といった扱いを重視しているのできわめて強力。この事業基盤とこれまで培ってきた技術力で、2008年後半から大きく伸びると予測されるNGN事業に向け、着々と備えを固めている」と万全の体制をアピールする。

 NGNをかたわらにおいた国内キャリアネットワーク市場をみると、現在は横ばいというのが正直なところだ。しかし「NGN効果によってミドルウェアやアプリケーションソフトウェアなどサービス関連事業の急伸が期待できる」という。一方、海外市場も、欧米の先進市場が順調に回復してきており、エマージング市場でも通信インフラを急ピッチで整備、価格下落分を差し引いても期待できるとの見方だ。


フルライン・フルレイヤでのソリューションラインアップ
 こうしたことから広崎氏は、NECのNGNに向けたキャリアネットワーク事業の基本戦略について、「海外事業の充実と、ハードウェアの優れた技術によるプロフェッショナルサービスやアプリケーションサービス、ソフトウェア手法による新しいビジネスモデルなどを、早急に強化しなければならない」と述べ、並々ならぬ自信をもって決意を新たにする。

 NECには、この自信を裏打ちする数々の強みがある。例えば現在NECでは、トランスポートレイヤからサービスレイヤまで、フルライン、フルレイヤでソリューションをラインアップできるし、国内固定系通信機器・装置や国内WCDMA基地局ではシェアトップ、ソフトスイッチは55%という圧倒的シェアを誇る。局用交換機で培ってきたノウハウのソフトウェアへの適用、また開発要員が約1万人以上といわれる中、その約70%がソフトウェア担当になっているなど、サービスプラットフォームにおける開発力が自信になっている。

 さらに、NC9000/7000シリーズに加えて、新発表のNC5000シリーズにみるキャリアグレードのソフトウェア開発力や、伝送速度40Gbpsかつ最大波長多重80波、GMPLS対応の「DWDM4200シリーズ」、無線通信/光通信技術を融合した超小型WCDMA基地局、キャリアグレードで培ったIP技術を応用したルータ・スイッチなどの製品に代表されるテクノロジーイノベーションは、「すでにNGNを先取りしたもの」とNECでは位置づけている。

 そして、マイクロ波伝送装置150カ国、パソリンク123カ国、光伝送装置105カ国、局用交換機71カ国、WCDMA30カ国といった主要ネットワーク製品における納入実績、Juniper NetworksやNokia Siemensとのアライアンスなど、海外市場でのプレゼンスも強みとして挙げている。


NGNトランスポート製品ロードマップ

NGN関連の受注状況
 NECのキャリアネットワーク事業における中期ビジョンは、現在約7000億円という事業規模であるが、3年後には40%アップの約1兆円をめざしている。またNGN関連は、今年度の出荷推定約600億円を、約3000億円~4000億円にしたいという。このための競争力をもたせたNGNトランスポート製品を用意し、固定系からモバイル系までのフルラインアップで臨む構えだ。またNGNソフトウェア製品も今回発表のNC5000シリーズによりサービスレイヤ、トランスポートレイヤと、すべての製品がそろった。国内市場における現在までのNGN関連の受注状況では、今年度の出荷推定は上記のように約600億円ではあるが、受注ベースでは今年度末で約1000億円(見込み)あり、うち約60%がトランスポートレイヤ製品、約40%がサービスレイヤ関連製品となっている。

 広崎氏は、10年以上前のコンピュータにおけるダウンサイジング化の例をあげ、「同じことがネットワークでも起ころうとしている」とする。そこで必要なのはビジネスモデルの変革で、具体的には「一つはソフトウェアを軸としたビジネスモデル改革で、アップグレードやライセンス販売などソフトウェア資産の有償化、もう一つがグローバル市場前提の製品ロードマップやグローバルベンダとのリソース格差の克服など共通プラットフォーム化の追求」である述べ、NGNビジネスをにらんだ新しい強みによる武装化をにらむ。

 特に共通プラットフォーム化は、基地局~交換機間のマイクロ波によるアプローチ回線である「パソリンクNEO」で実証済みであり、「こうした例は世界でも類をみない」とアピールした。今、パソリンクもシェアを着実に伸ばしつつあり、「世界でのシェアも昨年度20%であったものが、今年度推定では23%とトップに肉薄してきている」という。

 なお今回発表された「NC5000シリーズ」は、NGNにおけるトランスポート制御基盤ソフトウェア。SIPサーバー(NC9000シリーズなど)やエッジルータと連携して、ユーザー要求に基づきサービスごとに帯域確保や優先制御を行うための方針や手順を決定し、エッジルータなどネットワーク機器を制御する「QoS制御」を行う。またユーザー接続時に各種登録情報をもとにした認証を行い、不正接続やなりすましを防止する「アクセス認証」の機能も備えている。

 インターフェイスはNGN国際標準仕様である「ITU-T/3GPP/3GPP2」に準拠。また動作ハードウェアとしてPICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)が策定した通信事業者向け次世代通信機器の標準仕様「AdvancedTCA」に対応している。


NGNを実現するコアネットワークであるIPトランスポート機器。ここでは実際にフルライン稼働させてIMS製品と連携、高画質ビデオを配信した 光トランスポート機器。バックボーンのコアルータ間での大容量リンクや、エッジルータのユーザのアクセスネットワークに向けた集配線機器など。40Gbpsにも対応可能 先端光デバイス。波長可変光源デバイスの波長ソフトウェアを波長計により観測する


URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0703/0701.html

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( 真実井 宣崇 )
2007/03/08 11:42

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