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シトリックス、WAFやSSL-VPNを統合したアプリケーションスイッチ新版

WAN最適化製品「WANScaler」も国内発売

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は6月6日、アプリケーションスイッチ向けソフトをアップグレードし、「Citrix NetScaler System 8.0」(以下、NetScaler 8.0)として提供すると発表した。また同時に、WAN最適化製品「Citrix WANScaler」の国内販売を開始することも発表されている。


Citrix NetScaler System 8.0

WAFやパフォーマンスモニタリング、SSL-VPNといった新機能が追加されている

ネットワークプロダクト担当部長の山村剛久氏
 NetScalerとは、Webアプリケーションを高速化するための製品で、Webアプリケーションサーバーの手前(ユーザー寄り)に設置して利用する。具体的な機能としては、複数のサーバーに負荷を分散させるロードバランシングや、ISPとの接続リンクを複数束ねるリンクロードバランシングといったトラフィック管理機能、圧縮やTCP最適化によるアプリケーション最適化機能、DoS防御機能、SSLアクセラレーション機能などを提供可能。ASICではなくカスタムOSベースの柔軟なアプローチをとりながら、パフォーマンスも最速レベルを実現しているという。

 今回の新版では、シトリックスのWebアプリケーションファイアウォール(WAF)製品「Citrix Application Firewall」の機能を取り込んだほか、エンドユーザー側のパフォーマンスをモニタリングできるツール「Citrix EdgeSight」、SSL-VPN製品「Citrix Access Gateway」の機能も統合した。これらの機能は、NetScaler 8.0と完全に統合されているため、共通の管理インターフェイスから管理を行ったり、連携して動作させたりすることが可能。また、GUIによるポリシー設定を行える「AppExpert Visual Policy Builder」の機能を拡張し、ポリシー設定も共通のインターフェイスから平易に行えるようにしている。

 ネットワークプロダクト担当部長の山村剛久氏はこれらの機能について、「競合ベンダでは、統合したといっても動作が別々だったり、設定や管理のインターフェイスが異なったりするなど統合が不完全だが、当社では緊密な統合・連携を実現している。また設定を統一したGUIで行える点も大きなメリットで、プログラミング技術が必要となることが多い競合製品とは一線を画している。さらにApplication Firewallでは、当社のカスタムOSへ統合することによって、およそ120Mbpsだったパフォーマンスが最大1.8Gbpsへと大幅に向上した点も大きい」と述べた。

 実際の製品は、ソフトが、最小限の機能を持つエントリー版「Standard Edition」から、すべての機能を備えた最上位版「Platinum Edition」までの3種類、ハードウェアプラットフォームが性能やインターフェイスの違いで4種類(従来と同じ)用意されており、ユーザーが必要に応じて最適な組み合わせを選択できるようにしている。

 価格は、もっとも低価格なハードウェア「モデル7000」とStandard Editionの組み合わせで、306万2300円(税別)から。なお、保守契約を結んでいる既存ユーザーは無償で新版へアップグレードできるが、Webアプリケーションファイアウォールなどの新機能については、別途ライセンスを購入する必要があるとのこと。出荷開始は7月2日を予定する。


Citrix WANScaler

Citrix WANScalerの導入イメージ
 一方のWANScalerは、WANを通じたTCPアクセス自体を最適化する製品で、2拠点以上に設置し、圧縮、キャッシュ、フローコントロール、CIFS最適化などの機能を利用して、アプライアンス間の通信を高速化する。アプリケーションを自動認識するAutoOptimizerエンジンを搭載し、アプリケーションごとに最適な高速化を行うことが可能。シトリックスによれば、レスポンスタイムを400%、スループットを200倍向上させられる能力を持つとのことで、高速・低レイテンシの良好なネットワーク環境であっても、10倍程度の高速化が見込めるとのデータがあるという。

 特徴は、ポイントツーポイントでのトンネルを張らずにWAN最適化を実現している点。山村担当部長は、「独自技術で高速化のためのトンネルを張る競合製品では、ファイアウォールを抜けるための設定が必要だったり、拠点が増えた場合に再設定が必要だったりするし、トンネルを張るがゆえにToSやDiffServeなどのQoSがうまくいかなかったりもする。当社製品ではそういうことはなく、まったく透過的な設置が可能。どの接続先にWANScalerがあるかを自動で認識する機能も備えており、10分以下のGUIによる設定で導入を行える」とそのメリットを説明した。

 また今後は、モバイル環境やSOHOなどの小規模拠点向けに、Windows XP/2000で動作する「WANScalerクライアント」も提供される予定。アプライアンスで提供される機能をそのまま、ソフトで提供することができるという。通常はVPN製品と併用されセキュリティを確保することになるが、現時点では自社のSSL-VPN製品と、マイクロソフトのPPTPとの併用で正常に動作することが確認されている。

 製品は、多拠点間の接続に対応する「WANScaler 8000シリーズ」をまず提供。2拠点間でのディザスタリカバリ用途などに適した「WANScaler 6000シリーズ」やWANScalerクライアントを、2007年第3四半期に提供開始する予定だ。ラインアップとしてはエントリーモデル「WANScale 8310」(~1Mbps)から、データセンター向けの最上位「同 8820HS」(~500Mbps)まで幅広く用意する。価格は、WANScale 8310で85万円(税別)から。出荷開始は7月2日の予定である。


大古俊輔代表取締役社長
 なお大古俊輔代表取締役社長は、「シトリックスの価値は、サーバー・ミドルウェアベンダの持つ優れたソフトウェアの価値を、エンドユーザーに高いパフォーマンスをもって、セキュアな形で届けることだ」とコメント。アプリケーションの配信形態が多様化する現在においても、Citrix Presentation Serverだけでない、包括的なアプリケーションデリバリのベンダとして、顧客にソリューションを提供していく姿勢を見せた。



URL
  シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
  http://www.citrix.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.citrix.co.jp/company/press/releases/20070606_01.html
  http://www.citrix.co.jp/company/press/releases/20070606_02.html

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( 石井 一志 )
2007/06/06 15:09

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