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シスコ、設立以来初のルータAPIを公開


副社長エンタープライズ&コマーシャル事業の平井康文氏
 シスコシステムズ合同会社は5月28日、これからのブランチオフィス最適化をめざしてシスコサービス統合型ルータ「Cisco ISR」プラットフォーム開発用インターフェイスを「Cisco AXP(Application eXtension Platform)」として公開すると発表した。同時に小規模ブランチおよびテレワーカ向けにIEEE 802.11n Draft 2.0対応の固定構成ルータ「Cisco ISR 880/860」シリーズを発表した。

 Cisco AXPの公開は同社の設立以来、初めての取組みというもの。同社副社長エンタープライズ&コマーシャル事業の平井康文氏は、「従来のブランチオフィスでは古くて不統一なデータ/ボイスネットワークであり無線LANも輻輳(ふくそう)、かつセキュリティも複雑でコンプライアンスの脅威など多々難点があったといえる。しかしシスコではエンパワードブランチオフィスのコンセプトのもと、データやボイスに加えてビデオも一体化させ、無線LANも最適化、かつ自己防衛型ネットワークネットワークにするなど大きく変革をもたらす考え方をとっている。この変革をもたらす重要な役割を果たすのがCisco AXP」であることを強調した。また「下位レイヤだけの世界では、Cisco AXPの公開は必要ないかもしれない。しかしシスコはユーザーの方たちの経営革新のお役にたちたい。そのためにはより上位層が得意のパートナの方たちと戦略的な提携が不可欠」と今回発表の真意を説明する。


テクノロジーマーケティングの北かおり氏
 Cisco AXPは、Cisco IOSに対するオープンインターフェイスを備えたオープンソースのLinuxアーキテクチャをベースに構築し、このCisco IOSに対するオープンインターフェイスを備えたLinuxアーキテクチャをベースに構築されたものだ。具体的には、Cisco ISRに搭載するハードウェアモジュールNME(Network Module)およびAIM(Advanced Integration Module)の2タイプ、3モデルとして提供される。このAXPモジュール一つだけで、複数アプリケーションを同時にサポート可能なので、たとえばブランチオフィスにおいては、サーバーデバイスなどの集約などに期待できる。テクノロジーマーケティングの北かおり氏は「Cisco AXPモジュールから動的にルータの設定変更や、ネットワークの状態にあわせてアプリケーションの動きも変えることが可能」とキーポイントをアピールする。対応ルータは、Cisco1841、2800、3800ISRなどとなっている。

 また、シスコではAXPベースのソリューション構築をはじめ、開発、販売に必要な技術やマーケティングサポートを、顧客や独立系サフトウェアベンダやシステムインテグレータ、サービスプロバイダなどに提供するため、自社の技術開発者プログラム(TDP:Technology Developer Program)にAXPのカテゴリも新たに追加した。このTDPを通じて提供されるCisco AXP SDK(Solution Developer Kit)を活用することで、開発業者はセキュリティはじめモビリティ、WAN最適化、ユニファイドコミュニケーションなどの基本機能を開発するアプリケーションに組み込めることとなる。Cisco TDP AXPパートナーによって提供されているアプリケーションには、Avocent(ブランチITインフラストラクチャ管理)やNICE(ブランチVoIPレコーディング)、InterComponentWare(医療ソリューションプロバイダ)、OSISoft(ユーティリティインフラストラクチャモニタリング)ほかがある。


Cisco ISRに搭載するCisco AXPハードウェアモジュールNME Cisco AXPのアーキテクチャ

 Cisco AXPは、シスコ設立以来およそ20年という中、同社自らの手による初めてのAPI公開であるが、平井氏は「このたびの公開は極めて時流にあった自然の流れ」とサラリといってのけるものの、同社ビジネスの柱の一つであるルータのAPI公開であり、やはりそれなりに社内でも議論はあったようだ。ただ、約50億ドルにも及ぶR&D投資に支えられたシスコ技術の業界をみすえた自信の一端ともいえそうだ。

 一方Cisco ISR880/860シリーズは、とくにCisco ISR 861W/881Wモデルでは、IEEE 802.11n Draft 2.0ワイヤレスLANを搭載し、Cisco ISR 881WモデルはLWAPP(Lightweight Access Point Protocol)対応により、ワイヤレスLANアクセスポイント機能をセンタサイトで一括管理できる。他にファイアウォールをはじめ、URLフィルタリング、VPN(DMVPN、GETVPN)、侵入検知(IPS)などセキュリティ機能も強化されている。また、Cisco ISRシリーズには、3GワイヤレスWAN機能も付加された。これは3Gモデム(SIMカード搭載)を内蔵したモジュールを装着すればよい。これで、災害対策のためにIP-VPNのバックアップ回線やイベント会場での臨時設置なども手軽かつ迅速に行える。Cisco ISR2800/3000シリーズやCisco ISR1841に対応する。


サービス統合型ルータCisco ISR881W 右上部にみえるのが3GワイヤレスWANモジュール「HWIC-3G-GSM」


URL
  シスコシステムズ合同会社
  http://www.cisco.com/jp/
  ニュースリリース
  http://www.cisco.com/web/JP/news/pr/2008/016.html


( 真実井 宣崇 )
2008/05/28 18:52

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