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日本HP、UCMDBと連携するネットワーク管理ソフトの新版「NNMi v8.1」

障害がサービスに与える影響を可視化

HPソフトウェア・ソリューションズ統括本部 ビジネス・テクノロジ・ソリューションズ事業本部 ソフトウェア・ソリューション技術本部 技術第二部 テクニカルコンサルタントの佐々木俊行氏
 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は12月11日、ネットワーク管理ソフトの新版「HP Network Node Manager i-series v8.10 software(以下、NNMi v8.1)」を発表した。2009年1月5日から販売開始する。

 昨今、サービスの多様化により、ネットワークには新たな課題が生じ始めている。HPソフトウェア・ソリューションズ統括本部 ビジネス・テクノロジ・ソリューションズ事業本部 ソフトウェア・ソリューション技術本部 技術第二部 テクニカルコンサルタントの佐々木俊行氏によれば、「VoIP・ビデオ会議・P2Pなど利用形態が多様化していること」「必要なデバイスが増加し大規模化したこと」「構成変更サイクルが短期化していること」が現状の課題で、「ネットワークの効率的な管理は、従来の障害管理手法では対応できない」という。

 そこで日本HPでは、「ネットワークライフサイクル管理」というユニークなコンセプトを提唱している。「計画」「デバイスの据え付け・セットアップ」「構成情報の確認」「変更管理・パッチ配布」「性能管理・障害対応」「資産・標準の見直し」の6ステップを1つのサイクルと見なし、「手作業の運用を完全自動化し、プロアクティブなネットワーク障害・性能管理と迅速な復旧を実現する」(HPソフトウェア・ソリューションズ統括本部 ビジネス・テクノロジ・ソリューションズ事業本部 マーケティング部 マーケティングプログラムマネージャーの星野敏彦氏)ことが狙い。星野氏によれば、「まだどこのベンダーも提唱していない新しい考え方で、複雑化するネットワーク環境において、コスト削減と標準化推進の両面から、ネットワーク管理を効率化することができる」という。

 NNMiは、6つのステップのうち「構成情報の確認」と「性能管理・障害対応」を担う中核的な製品で、課題解決のためのさまざまな機能を備えている。


ネットワークライフサイクル管理

NNMi v8.1の特長
 まず構成情報の確認では、「Continuous Spiral Discovery」という検出技術を搭載。スイッチやVLANが多用された複雑なネットワークでも、レイヤ2/3にまたがる物理・仮想トポロジー情報をリアルタイムに収集して、ネットワーク構成を図式化できるという。構成確認は「定期的検出」のほか、死活監視のタイミングで行う「ポーリング検出」、SNMPトラップに基づく「trap検出」の3種類の手法で行われるため、構成変更サイクルが短期化した環境でも、即座に最新の構成情報が取得できるという。

 こうして図式化されたネットワークにおいて、柔軟な障害対応を実現するのが「Causal Engine」と、それによる「インシデントベースの障害管理モデル」。従来、ネットワークに障害が起こると、多数のイベントが発生し、その中から根本原因を特定するのが非常に困難だった。NNMiでは、「短時間で障害判定できる高精度なCausal Engineを搭載することで、数あるイベントの中から、根本原因となる情報のみを確認することが可能」(佐々木氏)という。

 さらにNNMiの特長は、性能管理と障害管理をひも付けて管理できる点。従来、こうした製品では、インターフェイスやデバイスのUP/DOWNによる死活監視しかできなかったのだが、オプションの「NNMiSPI for Performance 8.10」を使うと、性能情報を基にした障害管理が可能になるという。メリットは、「ネットワークに依存する問題だけでなく、アプリケーション依存の障害解析が可能になること」(佐々木氏)だ。

 また、障害発生時の対応ミスや対応漏れを防ぐ仕掛けとして、操作可能範囲を制限する「ロールベース管理」、障害対応責任者を明確化する「オーナーベース管理」、障害発生から解決までを4つのプロセスに分けて管理する「インシデントライフサイクル管理」という3つの管理機能、ならびに標準化された障害監視モデルを実装している。


Continuous Spiral Discoveryの概要 根本原因をピンポイント化する障害管理

性能管理と障害管理の統合 標準化された障害監視モデル

NNMi v8.1の機能拡張サマリ
 新版では、運用性と監視性を高めるさまざまな機能強化が図られた。実は、NNMiは前バージョンの「NNMi v8.0」で大幅なアーキテクチャの変更が行われ、それ以前のバージョンで備えていた有益な機能が一部継承できずに欠落するという状況にあったという。今回の新版は、新アーキテクチャの機能をフルに活用可能にするための刷新であり、具体的に「マップベース管理機能」「高可用性対応」「MIB収集機能」「ハイレベルネットワーク監視機能」「HP Software製品連携機能」が盛り込まれている。

 マップベース管理では、任意の地図上に独自のネットワーク構成図を配置することが可能。これにより、実際の物理構成環境とは別に、例えば提供されているサービスごとの構成図、担当者別の構成図、拠点別の構成図などを描くことが可能となり、ネットワークの流れをより感覚的に把握することができる。

 高可用性対応では、クラスタソフトの利用により、NNMi v8.1をインストールした監視端末を冗長化することが可能になった。

 MIB収集では、NNMiSPI for Performance 8.10を使うことで、ネットワークのトラフィック状況のみならず、ネットワーク機器のCPU・メモリ使用率、ファンや温度などのコンポーネント情報を監視することが可能。デバイスコンポーネント障害を未然に防げるため、性能監視にプラスαの能力を付与することができるようになった。

 ハイレベルネットワーク監視では、より大規模な環境をサポートするため、ルータ冗長化技術(VRRPなど)やリンクアグリゲーション技術に対応。また、ネットワークエキスパート向けの解析オプションツール「NNMiSPI for NET」を提供することで、より効率的なトラブルシューティングを可能としている。

 HP Software製品連携機能では、構成管理データベース「HP Universal CMDB software(以下、UCMDB)」をはじめ、デバイスの据え付け・セットアップを自動化する「HP Network Automation software」や、イベントおよび可用性管理プロセスを自動化する「HP Operations Manager software」などとの連携を実現。特にUCMDBとの連携は特筆点で、ITILv3に基づいてIT運用を効率化することが可能となる。具体的には「ネットワーク障害がどのサービスにどのくらい影響を与えるかが分かるようになる」(佐々木氏)のがメリットだ。

 製品ラインアップは、中小規模のネットワーク監視に対応する「NNMi v8.1」、テレコム・データセンターなどのキャリアクラスのネットワーク監視に対応する「NNMi v8.1 Advanced」の2種類。ハイレベルネットワーク監視はAdvancedのみで可能となる。価格は前者が50万4000円(50ノード)から、後者が126万円(同)から。オプション製品は、前述したNNMiSPI for Performance 8.10とNNMiSPI for NETの2種類。価格はいずれも75万6000円(50ノード)から。


NNMiSPI for NETの概要 マップベース管理画面 MIB情報画面


URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  ニュースリリース
  http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2009/fy09-023.html

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  ・ 日本HP、新設計のネットワーク管理ソフト-10秒で障害原因を特定(2007/12/25)


( 川島 弘之 )
2008/12/11 16:03

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