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「1事業所あたりのウイルス被害額は28万円」IPAが国内外のウイルス被害調査結果を発表


 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は4月27日、「国内・国外におけるコンピュータ被害状況調査」をまとめたと発表した。

 国内の調査は、国内では1989年度から実施されている定例的なもの。日本全国の4,000事業所と1,000自治体を調査対象として郵送で行い、うち663事業所、465自治体から回答があった。海外に関しては、アメリカ(米)、ドイツ(独)、韓国、台湾、オーストラリア(豪)の5カ国の公的機関、事業所に対し、FAXや訪問調査などを併用して行っている。標本数は5カ国それぞれ5,000件で、回答があったのは各国とも500~600件程度。


遭遇するウイルスの種類は増加傾向

セキュリティセンター長 早貸 淳子氏
 これによると、ウイルスの遭遇(感染した、もしくは発見したが感染していない)経験を持つ国内団体は、1997年の38.6%から2002年の80.3%まで増加の傾向であったものが、2003年には10ポイントあまり減少した70.0%になっている。とはいってもウイルスが減ったわけではなく、IPAでは「アウトソーシングサービスなどが普及してきているため、企業の知らないうちに防御されているケースが増えたことが原因ではないか」(セキュリティセンター長 早貸 淳子氏)とみている。海外の2003年の傾向に目を移すと、米で84.1%、豪で62.2%と遭遇した割合は多いが、台湾・独ではそれぞれ38.7%、50.2%とそれほど多くはない傾向が見られる。

 ウイルスに遭遇した国内団体に対して行われた「何種類のウイルスを発見したか」という調査では、2000年には「1種類」が42.9%で1位だったのに対し、2003年では「5種類以上」が39.8%で1位となっている。「5種類以上」の割合は、2002年に比べても4.4ポイント増加しており、この増加傾向に関しては、「ずっと前のウイルスもほったらかされている一方で、新しいものもたくさん出てきているため」(早貸氏)と分析している。実際に遭遇したウイルスを見ると、国内ではKlez(52.0%、複数回答)がもっとも多く、MSBlast(40.4%)、Laroux(31.5%)、Nimda(30.8%)、Swen(24.4%)の順となっていた。

 感染または発見の経路に関しては、韓国の41.1%から米国の66.3%まで、すべての国で電子メールがトップ。ただし、韓国は「インターネットインフラの整備が進んでいる」(早貸氏)ためか、インターネット接続経由の遭遇も40.2%と多い。また、ダウンロードしたファイルを原因とするものは、米が14.8%、豪が22.1%などと高いのに対し、日本ではわずか1.8%にとどまっている。かわりに、海外では最高でも5%(米)しかない外部媒体や持ち込みPCによる経路が15.8%と群を抜いており、「ダウンロードしたファイルに対する対策は十分に行われているが、“持ち込み”に関しては脇が甘い」(同氏)状況が現れている。


国内外のウイルス遭遇経験。国内は1997年からの時系列、国外は2003年の状況 遭遇したウイルスの種類数。国内は時系列で、国外は2003年の状況のみ ウイルス感染・発見の経路分類図。国による違いが見て取れる

ウイルス対策ソフトは普及するも、管理体制確立が遅い日本

ウイルス対策の管理体制について。日本と韓国は「未対応」が多い
 一方で対策面を見ると、日本では「9割以上のPCにウイルス対策ソフトが導入済み」と回答した団体が70.4%。海外では米・豪が80%を超えているのに対し、台湾では56.2%、独では60.5%、韓国では64.6%にとどまっている。また、社内でセミナーを開催したり、外部の教育機関を利用したり、といったウイルス対策に関するユーザー教育の実施状況は、米・豪でほかの国に比べて高い水準にあるという結果が出た。

 さらに、社内のウイルス対策を組織立てて行っているか、という設問では、米・豪の40%前後の団体が「専門部署(または担当者)がいる」と回答しているのに対し、韓国の25.1%、日本の31.5%が「行っていない」とするなど、対策の遅れが見られる。なお台湾では「外部委託」が2位の韓国の3倍近い32.5%となっており、「ユーザー教育もあまり進んでいないし、対策ソフトもあまり入っていないが、実際の被害も少ない」(早貸氏)現状は、これが原因ではないかという。

 なおIPAではこれらの調査結果と独自の算出モデルにより、2003年のウイルスによる国内被害総額(風評などによる二次被害は含まず)を3,025億円、1事業所あたり約28万円と見積もっており、早貸氏は「28万円は少ないと思われるかもしれないが、MSBlastなどによって投資が促進されたにもかかわらず、まだそれだけある」と語り、決してウイルス対策は軽視してよいものではない、ということを強調していた。



URL
  独立行政法人情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/
  プレスリリース
  http://www.ipa.go.jp/about/press/20040427.html


( 石井 一志 )
2004/04/27 18:42

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