トラステッドソリューションズ株式会社は、ファイルを暗号化した上で分散保存させて情報漏えいを防止する“秘密分散法”の技術を実装したセキュリティ製品「Trusted Communityware」の関連製品を6月24日より発売する。同社では2005年3月までに2億円の売上を目指す。
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トラステッドソリューションズ株式会社 代表取締役会長 傳田信行氏
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インテル株式会社の元会長で、現在はトラステッドソリューションズ株式会社の代表取締役会長を務める傳田信行氏は、「現在のeビジネスの一番の弱点はセキュリティの脆弱さ」とした。そして「鍵暗号をベースにした従来の情報保護は、ネットワーク化の進展したユビキタス時代には機能しない」とし、「来年4月の個人情報保護法の施行も控え、企業では、それ相応の対策を行わねばならない。そこで企業間、個人の情報のやり取りに信頼を軸とした新しいビジネスモデルを構築したい」と述べた。
さらに「e-Businessからt(trust)-Businessへ、そしてShere&Protectを合言葉に、第2世代のソフトで、より強固なセキュリティを提供する」と語った。
なお同氏が代表を勤める傳田アソシエイツでは、ワイヤレス、セキュリティ、エネルギ・パワーテクノロジー、コンテンツの4つの要素技術を軸に、「新しいビジネスモデルをふ化させる」ことを手がけており、今回の発表はその第一弾との位置づけ。この他にも「Always Onの観点から」燃料電池なども手がけている。
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トラステッドソリューションズ株式会社 代表取締役社長 杉原 英文氏
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秘密分散法には「2,2分散」「2,3分散」の考え方がある
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秘密分散法を元にした各種の製品提供が予定されている
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「ブロードバンドの進展により、個人レベルでも特化したスペシャリストとしてネットワークを介した協業できるようになった結果、秘密情報の共有と保護が課題になっている」とした同社代表取締役社長の杉原英文氏は、「基本的に情報を外に出さない、これまでの情報漏えい防止ソリューションは時代に合わない。今後2~3年で陳腐化すると考えている」と述べた。
また「セキュリティ製品についてよくいわれているが、セキュリティと利便性の二者択一はおかしい」とした。同氏は「利便性が悪ければ使い続けられない、つまり投資効率が悪いということ」とし、同氏は「使い勝手よく、その下に高い理論に裏づけされたセキュリティ基盤を提供する」と述べた。価格としては「1000クライアントでフル機能を提供する場合におよそ700万~800万円程度」になるという。ただ今後は単体アプリケーションの形ではなく、他社と連携してアプリケーションに組み込み、高いセキュリティを確保する基盤として提供する考えを示した。
クライアントPCからの情報漏えいを防ぐ「SplitSafe」は、USBメモリなどのリムーバブルメディアとPC本体のHDDにファイルを分散保存するもの。インストールするとシステムには仮想ドライブが現れ、そこにファイルをコピーすると自動的に暗号化された上で、ファイルシステムからは見えない形でリムーバブルとHDDへ分散して保存される。それぞれに分散保存する比率も設定できるため、小容量リムーバブルでも一定の容量を保存できるという。
本製品では独Living Byte Softwareから技術ライセンスの提供を受け、秘密分散法を用いてデータを暗号化して分散保存することでセキュリティを確保している。秘密分散法そのものは1979年に提唱されており、目新しい技術ではないが、「当時は1KBのファイルを1KB+1KBに分散する必要があった。現在では技術改良により必要な領域は小さくなっているし、大容量メディアも安く入手できる。またネットワークを利用して分散保存できる点からも時代のニーズに合っている」とした。
秘密分散法にはファイルを2分割する“2,2分散”と、3つに分散して、そのうち2つのデータがあれば復号できる“2,3分散”の考え方があるが、第3四半期に提供予定の新バージョンでは、この2,3分散を取り入れるとともに、ネットワークへの保存をサポートするという。
なお今回発売されるのはSplitSafeのほか、これにバックアップ機能を付加するサーバーソフトウェア「Trusted BRware」、秘密分散法を組み込んだ「ICカード認証基盤構築サービス」の各製品。このほか情報交換ソリューション「Trusted Exchange Manager」、情報漏えい防止ソフトウェア「Trusted Guard Manager」、コンテンツ配信基盤「Trusted Delivery Manager」なども順次リリースされる予定。
製品の販売、システム構築、開発で同社との協業を発表した沖電気工業株式会社 ネットビジネスソリューションカンパニー プレジデントの竹内 敏尚氏は、SplitSafeについて「現在では顧客情報を外に出せないと、営業、ビジネスが進まない面がある。このため安全で利便性を損なわないのがポイント」とし、「個人情報を取り扱う銀行や証券といった金融業界、また通信事業者、旅行代理店など、もともとの顧客である1000人規模以上の大手企業へ提供したい」としたほか、沖電気社内へも導入していくとした。
同じく販売を行う株式会社CIJ 営業統括 取締役 中田雄三氏は、「分散情報管理をコアにした製品開発も行うほか、取引のある大手SIやソフトウェアベンダにも提供したい」とした。
株式会社日立ケーイーシステムズ 取締役社長 泉千賀彦氏は「SplitSafeの情報分散保管は誰にとってもわかりやすいシンプルな概念で、セキュリティへの疑念をもちにくい」とし、「日立グループ各社をはじめ、製造業を中心に導入を進めていく」とし、「セミナー開催といったマーケティングプロモーションでも連携していく」と述べた。
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沖電気工業株式会社 ネットビジネスソリューションカンパニー プレジデント 竹内 敏尚氏
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株式会社CIJ 営業統括 取締役 中田雄三氏
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株式会社日立ケーイーシステムズ 取締役社長 泉千賀彦氏
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■ URL
トラステッドソリューションズ株式会社
http://trusted-solutions.jp/
沖電気工業株式会社
http://www.oki.com/jp/
ニュースリリース(沖電気)
http://www.oki.com/jp/Home/JIS/New/OKI-News/2004/06/z04032.html
株式会社CIJ
http://www.cij.co.jp/
株式会社日立ケーイーシステムズ
http://www.hke.co.jp/
プレスリリース(日立KE)
http://www.hke.co.jp/press-release/040624.htm
( 岩崎 宰守 )
2004/06/24 18:59
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