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富士通、小型化した「手のひら静脈」認証装置-サイズは従来の1/4


手のひら静脈認証装置の新型センサー

ユビキタスシステム事業本部 バイオメトリクス認証システム部、若林晃部長
 富士通株式会社は3月9日、株式会社富士通研究所と共同で、小型化・高性能化した「手のひら静脈認証装置」の新型センサーを開発したと発表した。同社では、自社からの製品提供だけでなく、サードパーティによるさまざまな機器への組み込みを意識して、アプリケーション開発用のSDK(開発キット)も用意。認証装置を、新たに採用した世界統一ブランド「PalmSecure」に位置付け、国内だけでなく海外に対しても広く展開を図る。

 価格は、従来の半額以下の1センサーあたり3万円から4万円程度。SDKはセンサー本体などのハードウェアを含み35万円(税別)で、両製品とも出荷は4月末ごろを予定している。富士通では、3年間で国内200億円、海外600億円の関連売り上げを見込む。

 手のひら静脈認証装置は、人間の手のひらに存在する血管のパターンによって個人を識別する。具体的には、手のひらに光を照射して、反射光をセンサーで読み取ることで認証する仕組みで、体表に露出していないことから、「偽造が困難」という特徴がある。

 また富士通では、認証時にセンサーにじかに接触しない「非接触方式」を採用しており、「衛生的で、利用者の抵抗が少ないというメリットがある」(ユビキタスシステム事業本部 バイオメトリクス認証システム部、若林晃部長)だけでなく、手指や手の甲の静脈を利用する競合製品と比べて、「血管の本数、太さなどから高い認証精度が得られる上、寒さなどの影響も受けにくいため、最も安定した認証が可能」(同部長)という。


PalmSecureのロゴ 富士通では、非接触型の認証方式を採用した 手のひらと指、手の甲を比べた場合、認証制度で手のひらがもっとも優位だという

新型センサー(左)は従来型(右)と比べ、面積が1/4に小型化されている

SDKの内容
 こうした特徴はいままでの製品でも実現されていたとのことだが、富士通では今回、さらなる小型化、高性能化に成功した。まず、指紋認証と比べてかなり割高だった価格を改め、従来の半分以下へ引き下げた。さらに、従来センサーに対して半分以下の認証時間を達成するとともに、ISO標準に基づいた「Bio-API」準拠の標準化APIを提供するなど、グローバルスタンダードの流れに適応できるようにしている。

 サイズは、従来の70×70×27mm(W×D×H)から、35×35×27mm(同)へコンパクト化された。この小型化に伴い、富士通では新型センサーをノートPCなどのUSBポートへじかに接続できるようにし、取り回しの容易さを向上させたほか、将来的にはキーボードへの内蔵も計画。デスクトップPC向けの認証用途も視野に入れている。

 また今回の小型化によって、“組み込み用途”をより意識できる大きさになったという。すでに「当社から部品として提供し、アプリケーションに組み込んでもらう形が出始めている」(若林部長)とのことだが、さらにこの流れを加速するため、SDKを提供。その中で、サンプルアプリケーションをソースコードまで公開したり、ドライバと照合アルゴリズムをあわせたランタイムライブラリのコピーを認めたり、認証制度の評価簡易ツールを付属させたりすることで、「SIerが簡単にソリューションを開発できる環境を提供する」(同部長)。

 富士通では、新製品提供にあわせて、手のひら静脈認証装置を「PalmSecure」ブランドに位置付け、米国、欧州、アジア太平洋地域の現地法人を通じて、製品・ソリューションを販売。拡大するバイオメトリクス・静脈認証市場で売り上げを伸ばしたい考えだ。


手を置くガイド付きの製品も提供される 参考展示されていた、認証装置内蔵型のキーボード。右上の黒い部分が、手のひら静脈認証のセンサーだ


URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  ニュースリリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2006/03/9.html

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( 石井 一志 )
2006/03/09 16:48

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