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新技術の概要
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フェロー 画像・バイオメトリクス研究センター長の松田喜一氏
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株式会社富士通研究所は6月10日、紙や電子データ内の機密情報を部分的に暗号化し、権限のある人だけが暗号化された領域を閲覧できる技術を開発したと発表した。この新技術によって、印刷物や電子データを配布する際に、情報漏えいを防ぐ必要のある部分のみを暗号化することが可能となり、ドキュメントのセキュリティを大幅に向上するとともに、組織内外での安全な情報共有が実現できる。こうした技術の開発は世界初という。
同社のフェロー 画像・バイオメトリクス研究センター長の松田喜一氏は、新技術について、「バイオメトリクス研究センターでは、画像・音声・バイオ認証に関する強い要素技術をベースに、さまざまなソリューション開発に取り組んでいるが、今回の技術はその最新の開発成果の1つ。紙媒体の暗号化という要素技術から、新たなセキュリティソリューションを実現することができた」と述べている。
また、新技術の開発背景について、画像・バイオメトリクス研究センター 主席研究員の伊藤隆氏は、「情報漏えいの経路別の比率を見ると、紙媒体からの情報漏えいが全体の40%を占めているのが現状。その一方で、社内外での情報共有によるナレッジ活用のニーズも高まってきている。セキュリティ強化と情報共有という相反する課題を解決するためには、紙媒体、電子データを問わず、必要なところだけ部分的に暗号化し、閲覧者を制限しながら情報共有できる新たな暗号化技術が必要と考えた」としている。
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閲覧権限管理の原理
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印刷物から複合できる原理
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従来までの暗号化技術は、印刷後の復号を想定したものではないため、紙媒体上の情報の暗号化・復号は不可能であった。これに対し、同社では今回、画像スクランブルをベースに、セキュリティの強化と画像劣化後も復号を可能にする画像変換を加えた暗号化技術を開発。高いセキュリティを確保したまま、印刷および非可逆圧縮後も復号できるようになり、世界で初めて紙媒体の情報を暗号化・復号することが可能となった。ドキュメント全体だけでなく、個人情報など選択した部分のみを暗号化できるため、印刷物やFAXからの情報漏えいを効果的に防止できる。
また、部分暗号化された領域、復号鍵、権限をセットにして対応させることで、権限に応じてドキュメント内の閲覧可能領域を変えられる技術を世界で初めて開発。この技術により、公開可能な情報と不可能な情報が混在しているドキュメントでも、必要な部分だけを暗号化し、領域ごとに閲覧権限の制御を行うことで、役員や部長、一般社員などさまざまな権限の人が、セキュリティを確保しながら積極的に情報共有することが可能となる。テンプレートを用いた暗号化と閲覧権限設定も可能なため、面倒な暗号化作業を自動化することもできる。
具体的な印刷物の暗号化および復号の手順としては、まず、作成した文書データを部分的に暗号化し、印刷する。部分暗号化にあたっては、スクランブル前に画像変換を加え、ピースの大きさを極小化することでセキュリティを高めている。暗号化された印刷物を受け取った側は、これをスキャンしてデータ化し、復号鍵を使って画像の復号を行う。このとき、閲覧権限が設定されている場合は、権限の範囲内で画像を復号することができる。
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今後の提供予定
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同社では、新技術の活用領域について、オフィス、病院、官公庁など情報漏えいに対処しながら情報の共有化が必要な組織や、複数企業への発注依頼書や障害管理表の共有など、外部との情報共有が必要な組織を見込んでいる。
今後の展開としては、2008年度内をめどに、PFUが新技術を適用したソフトウェアパッケージやソフトウェア開発キットを、病院、中小企業、自治体、個人向けに提供していく予定。このほか、複合機やFAXなどへのファームウェア組み込みや、大企業、金融、証券、官公庁向けのシステムソリューション提供も計画している。
■ URL
株式会社富士通研究所
http://jp.fujitsu.com/group/labs/
プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/06/10.html
( 唐沢 正和 )
2008/06/10 16:53
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