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OSDLジャパン、Linux Kernel 2.6の新機能を解説


OSDLジャパン ラボディレクタの高澤 真治氏
 Open Source Development Labs.(以下、OSDL)ジャパンは2月5日、主にエンタープライズ市場向けに、高スケーラビリティ、ハイパフォーマンスとなり、米国で12月18日に公開されたLinux Kernel 2.6を解説した。

 OSDLは、Linuxの成長とエンタープライズでのLinux採用を促進することを目的に2000年に設立された。Linux開発者のLinus Torvalds氏も所属しており、ディストリビューターはもちろん、ハード/ソフトウェアベンダー、教育、エンドユーザー、SIなどとも協力している。OSDLジャパン ラボディレクタの高澤 真治氏は、同団体がNPO(非営利団体)であり、「Linuxが動きさえすれば、ベンダーやプラットフォームはニュートラル」であることを強調。2004年には、「さらにLinux採用を加速し、阻害要因を排除するべく、全方位的に情報を集中(center-of-gravity)してこれをフィードバックしていきたい」とした。最近の動きとしては、NTT本体の持株会社や、中国のオープンソースソフトベンダーなどがOSDLへ参加しており、「今後もワールドワイドに参加団体を増やしていく」とのことだ。

 Linux Kernelの開発では、多くのコントリビューターが書いたソースコードを複数のサブシステムメンテナーがとりまとめ、それをさらに担当者がまとめあげる方式がとられている。末尾偶数のバージョンが安定版のProduction Kernelとされており、Linus Torvalds氏が末尾奇数のDevelopment Kernelを担当する一方、安定版はAndrew Morton氏が担当に就いている。2.6はその6世代目となり、すでに2月4日に2.6.2へとバグフィックスを中心としたマイナーアップデートがなされている。


高拡張、高性能化したLinux

 Linux Kernel 2.6では、16CPUまでをサポートしたほか、SMPでの資源の割り振りが効率化された。またプロセススイッチングを行うスケジューラーでは、これまで対象プロセスの増加に伴い処理時間がかかっていたが、一定以上の増加に対してはそれ以上の負荷がかからないように改良されている。このほか新しいアーキテクチャとなるNon-Uniform Memory Access(NUMA) Server、Pentium 4でのHTテクノロジによるマルチスレッドもサポートした。

 ネットワーク面では、UNIXで利用されている分散ファイルシステムで、重要なコンポーネントにも位置づけられるNFSをカーネルレベルでサポート。スタックコピーなしにネットワーク層に受け渡すことで処理が向上した。またVPNのプロトコルであるIPSecを同じくカーネルレベルでサポートし、高レベルでのセキュリティが実現されている。またネットワークの広帯域化によりOSのオーバーヘッドが無視できなくなったことから、ネットワークプロトコルレイヤーの実装面も改善されている。

 拡張性については、32ビット環境では従来の8倍となる16TBのストレージをサポート、メモリも32ビットx86環境では64GBまで搭載可能になった。このほか接続デバイス数も、従来の255から4065に、そこにぶら下がる形のマイナーデバイスは、理論上は100万以上に対応する。デバイス処理についてはデバイスごとの処理ではなくOS内部で統一化され、PnP対応も進められている。またUSB 2.0、IEEE1394にもネイティブ対応する。

 ユーザーレベルでの応答性も向上されている。2.6では、従来では完全とはいえなかったプリエンプティブなカーネルとなった。このためプロセスの優先度により処理の割り込みが行え、複数の大容量タスクを実行しても応答を待つ必要がなくなっている。またI/Oスケジューラーも改善され、デバイスのリード/ライト処理が効率化されている。さらにスレッドを制御するFast User-Spaxe Mutexs(Futexes)をサポートし、リソースのコンフリクトも発生しにくくなっている。

 デスクトップとしては、無線LANとBluetoothをサポート、電源管理でもACPIに対応しサスペンドが行えるなどの機能が追加された。また従来のSMBプロトコルを包含するCIFSにより、Windowsとのファイル共有がよりスムーズになったとのことだ。

 マルチメディア面では、これまで問題の多かったサウンド面でソースコードが書き換えられ、高サンプリングレートや複数同時負荷下での音飛びなども発生しない。またジョイスティックもサポートされた。

 また組み込み機器向けとして、これまでは別組織として活動していたuCLinuxの成果を取り込み、これまで動作しなかったメモリ管理ユニットのないCPUをサポートした。

 このほか高澤氏によれば、Linus Torvalds氏はKernel 2.7へ向けた準備を進め始めているとのことだ。



URL
  Open Source Development Labs.ジャパン
  http://www.osdl.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/02/05 19:24

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