日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、最短2週間でグリッドを適用したポータルサイトを構築する「IBMグリッドポータル構築支援サービス」を3月15日より提供する。価格は2,000,000円から。
■ IBMグリッドポータル構築支援サービス
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既存インフラをグリッド化しポータル提供するグリッドポータル構築サービス
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IBMグリッドポータル構築支援サービスは、同社のアプリケーション「Grid System Gateway」と、要件や導入環境確認などを行う最短3日間の「事前コンサルティング」、導入からテストまでを含む最短5日間の「導入・設定・動作確認」により、これまで最低3カ月を要していたグリッドを適用したポータル構築を最短2週間で提供するもの。学術機関での科学技術計算や、製造・製薬業での解析業務、金融業でのポートフォリオやリスクの管理といったグリッド適用可能なアプリケーションを持つ顧客が対象となる。
2月17日より同社が提供している開発ツールキット「Autonomic Computing Toolkit」、コンピュータリソースを仮想化することで単一管理するスケジューラー、データベース、Webアプリケーションなどは、別途用意する必要があるため、本サービスには含まれない。
同社では、バイオ分野の研究機関である独立行政法人 理化学研究所にグリッドポータルサイトを納入し、すでに稼動しているという。同センターでは遠隔地からのコンピューティングリソース活用などを行っている。同社では、ポータルより広くコミュニティに提供できる点をメリットに挙げている。
■ 企業のIT課題は複雑化に起因
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日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 基礎研究&エマージングビジネス担当 岩野 和生氏
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同社執行役員で基礎研究&エマージングビジネス担当の岩野 和生氏は今回の発表に伴い、「2004年はグリッドとオートノミックが融合する年」とし、「いままでは学術分野などに提供してきた技術で、企業顧客への価値を提供できる」と述べた。そして同社の提唱するオンデマンドビジネスにおいて重要な位置づけとなる“グリッド”と“オートノミック”の動向について語った。
同氏は「ムーアの法則が今後も10~15年続いていけば、家電や自動車といった産業もサービスビジネスへシフトしていく」との見方を示した。その時、サービス保証型アーキテクチャ(SOA)により、Webサービスからハードウェアを含む下のレイヤーまでを対象にしていくことになり、「インフラのメンテナンスやTCOの問題がクローズアップされる」という。
現在、企業のIT投資の7~8割はメンテナンスに費やされ、インフラのROIや回復力が把握しにくく、タイムリーなアプリケーションの提供が難しくなっていることなどについて同氏は、「複雑性が増していることに起因している」とした。
続けて同氏は、「各サービスの複雑な組み合わせと提供範囲の拡大で、サービスのピーク予測が難しくなり、サービスレベル全体を保証できなくなっている」とした。また複雑化に起因するものとして「ガートナーの調査によればシステムダウン原因の8割は人間側のミスとの結果もある」とし、「システムが自動チューンしないとパフォーマンスが出せない」と語った。
インフラの回復力については、「米国が金融機関向け白書でも4時間以内の復旧がうたわれるなど、社会インフラとして必須になっている」とした。
■ 具現化したオートノミック・コンピューティング構想
同社では2001年10月に、自己構成、自己回復、自己防御、自己最適化を4つの柱にした“オートノミック・コンピューティング構想”を発表している。このアーキテクチャは対象を監視、その結果を分析して4つの柱を自律的に計画、実行するもの。またこのアーキテクチャは、サイクルを蓄積する自己学習型となっている。
これに対応するアプリケーション開発ツールキットが「Autonomic Computing Toolkit」となる。また同社では監視対象センサーからのコンポーネントログを共通化する「コモンログ&プレイス」を実現するため、Cisco、日立ソフト、新日鉄ソリューション、東芝の各社と提携している。さらに各部分についてはそれぞれの標準化団体への提案を行っている。「IBM1社だけでは何の意味もない」として、今後もオートノミックコンピューティングアーキテクチャ標準化と提携の動きを拡大していく考えを示した。
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各システムからのログをアダプタで共通化、分析して自己修復するオートノミックコンピューティングのシステム
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オートノミックコンピューティングアーキテクチャの各部分を標準化団体へ提案
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オートノミックコンピューティングを具体化するAC Toolkit
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■ グリッドとオートノミックの融合
「同じ方向を目指していたが微妙にずれてきた」グリッドとWebサービスを一体化するアーキテクチャとして2002年に提案していたOpen Grid Service Aechitecture(OGSA)を1月にWeb Service Resource Framework(WSRF)として見直し、グリッドとWebサービスの標準化団体であるGCFとOASISに提案をしている。
グリッドとオートノミックの融合については、グリッドのリソース不足を自動的に認識して、サーバープールから動的に追加してジョブを割り当てるといった「必要システム構成をダイナミックにコンフィグレーション」するプロビジョニングとオーケストレーションの技術により、「これまでの学術分野だけでなく、さまざまな業種に適用できる」としている。
■ URL
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
プレスリリース(グリッドポータル構築支援サービス)
http://www-6.ibm.com/jp/domino05/ewm/NewsDB.nsf/2004/03152
プレスリリース(理化学研究所へ納入)
http://www-6.ibm.com/jp/domino05/ewm/NewsDB.nsf/2004/03151
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