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Blasterワームで注目されたマイクロソフトの資産管理ツール「SMS」


 2004年1月に約4年ぶりとなるバージョンアップを行ったマイクロソフト株式会社の「Systems Management Server(以下、SMS) 2003」は、もともと資産管理ツールとしてスタートし、主に1000クライアント以上の規模での利用を想定した製品。同社によると、「昨年のBlasterワーム以来、特定の機能に注目が集まり」問い合わせの数が増えているという。その注目が集まっているSMSについて、同社サーバープラットフォームビジネス本部 IWインフラストラクチャ製品グループ マネージャーの寺田 和人氏に話を伺った。


Blasterワーム発生で注目されたパッチ配布機能と「SUS」との相違点

マイクロソフト株式会社サーバープラットフォームビジネス本部 IWインフラストラクチャ製品グループ マネージャーの寺田 和人氏
 SMSは、2003年8月に発生したBlasterワームの影響で、セキュリティパッチ配布・適用の機能が注目されている。パッチを適用するにあたっては、最新の情報を同社サイトのXMLデータベースより収集、監視PCの適用状況を分析するため、常に最新のプログラムを配布することが可能となっている。

 セキュリティパッチをネットワーク内PCに適用するツールとしては無償ツール「Software Update Services SP1」がある。

 寺田氏は「小規模での運用なら、SUSでまかなえる場合もある」と語ったが、SUSでは、ネットワーク内PCのパッチ適用状態を把握するためにMicrosoft Baseline Security Analyzer(MBSA)1.2と併用せねばならず、IISのログにより配布ステータスを管理するため、適用後チェックの機能を持たないなどの問題点がある。

 この後継製品である「Windows Update Services(WUS)」は、16日よりベータ版が提供され始めた。WUSには、ネットワーク負荷を低減するための中継ポイントを介したパッチ配布や、Officeへのアップデートの適用、対象PC群のグループ化など、これまでSMSの優位点だった機能が追加されている。

 しかし有償ツールであるSMSは配布できるアプリケーションに制限がない。さらに配布スケジュールをきめ細かく設定でき、強制適用や猶予期間を設けたソフトウェア配布、ダイアログを表示しないサイレントインストールなどの機能も備えている。Windows 98やNT 4.0を監視対象にできる点なども、メリットとして挙げられる。


ハードウェア、アプリケーションのインベントリ管理機能

 同社では、「パッチ管理だけでなく、もう一歩先の機能として」IT資産管理の必要性を訴えているが、実際の導入の場面では、クライアントのリプレースや他製品との同時導入のケースも多いとのことだ。

 SMSでは、OS、BIOSのほか、ストレージ、ネットワークや周辺機器といったハードウェアのインベントリ情報も管理できる。同氏によれば、「論理/物理的なストレージ構成とそのIDE/SCSIといった接続形態までを管理でき、増設検討の際に可否を把握できる」ほど詳細なもの。

 またアプリケーションのライセンスやバージョンの管理も行える。この情報は「コントロールパネル内の“プログラムの追加と削除”に現れる情報を、そのまま利用する」とのこと。利用に当たってはエージェントをインストールする必要があるが、これにより常時監視をせず稼動サービスやアプリケーションの起動時間や使用率を把握できる。このため、「ライセンス数の削減やバージョンアップ検討に役立てることができる」という。

 管理対象はActiveDirectoryによるユーザー管理が前提となる。Microsoftでは、ワールドワイドで12万台近くのPC監視を米国本社から行っており、対象数は事実上無制限といえる。

 SMSでは、収集データがSQL Server内で管理されるため、ほかのインベントリ管理アプリケーションと連携し、資産番号をひも付けて利用することも可能となっている。多数のアドオンツールやSDKもWebサイトより提供されている。「情報は特定フォルダから収集するため、アプリケーションの内容さえ明らかになっていれば、例えばウイルス定義ファイルのバージョン収集などのアドインを開発することも可能」と柔軟なプラットフォームとしての側面も持っている。またサーバーのイベントを監視して、過負荷やネットワーク接続障害などの問題を回避する「Microsoft Operations Manager」は別製品として提供される点なども、他社のシステム管理製品である「JP1(日立)」、「Systemwalker(富士通)」などと大きく違う点だ。

 一方資産管理専用のツールには、「QND Plus(クワンティ)」なども存在するが、こうしたツールと比べた場合に、WindowsやOfficeとの親和性が優位点として挙げられるだろう。

 1月に行われたバージョンアップでは、「4年前と比べてPC利用環境が大幅に変化した」ことを受け、モバイルPCへの対応での機能強化が行われている。パッチ、アプリケーションの配布では、「実行前にダウンロードし、キャッシュ後に実行する方式に変更した」とのこと。Background Intelligent Transfer Services(BITS)により、配布途中のネットワーク切断後のレジュームにも対応し、移動先からは、手近な配布ポイントからダウンロードを行うローミングのような機能も追加した。

 またPocket PC、Windows CE、Windows XP Embedded搭載モバイル機器も新たにサポートしている。このほかWindows Server 2003も正式サポートに加わった。

 宣伝活動はあまり行っていないため、SMSは知る人ぞ知る製品となっていると寺田氏はいう。「資産管理を自動化できるので、IT部門だけが楽するツールだとおもわれて導入しづらいかもしれませんが(笑)、Windowsクライアント管理に最適なので使っていただきたいですね。パッチ配布機能にも使えますから」



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  Systems Management Server
  http://www.microsoft.com/japan/smserver/
  JP1(日立)
  http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/soft1/jp1/
  Systemwalker(富士通)
  http://systemwalker.fujitsu.com/jp/
  QND Plus Ver.8(クオリティ)
  http://www.quality.co.jp/products/QND/qnd_index.html

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( 岩崎 宰守 )
2004/03/19 00:00

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