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SRA、PostgreSQL商用版を4月より米国で発売


 株式会社SRAは、オープンソースデータベース「PostgreSQL 7.3.6」をWindows環境に最適化し、管理ツールとサポートを付属した「PowerGres on Windows」英語版を4月より米国で発売する。価格はパッケージは430ドル、年間サポート付きで720ドル。同社では2004年度に1,000本の販売と2億円の売上を目指す。また7月よりヨーロッパでの発売も予定しており、アジア展開やLinux版の販売も計画している。


株式会社SRA 代表取締役社長 鹿島 亨氏

ミドルウェアとアプリケーションを中心とした同社のオープンソースソフトウェア事業
 企業へのシステムコンサルティングから開発、導入、運用を手がける独立系ソフトウェアハウスとして、37年の歴史を持つ同社の強みとして、同社代表取締役社長 鹿島 亨氏は「技術力と顧客」を挙げ、今後のオープンソースソフトウェアビジネスについては、4月にオープンソースの社内カンパニーを設立して「強みを発揮できるミドルウェア、アプリケーション分野へ選択と集中を行っていく」とした。

 先日ライブドアに売却した100%子会社のTurboLinuxについては、「特定のディストリビューションを持ち、ある面で親会社よりTurboLinuxの名前が前面に出てしまったことで、他ディストリビューションとのビジネスにおいて制約となっていた」とした。また「元々コンシューマビジネスは得意でなく、デスクトップよりサーバーに強みを持っていた」同社では、「コモディティ化が進んだため、安く大量に販売しなければ利益は出ない」OSビジネスから脱却し、今後はRed Hat、SuSE、ミラクル・リナックスなどディストリビューション各社とも連携し、「今回の売却益を投資して、TurboLinuxの親会社ではなくLinux陣営のSRAとして、新しいビジネスを立ち上げていきたい」と述べた。

 同氏は今回発表のPowerGresを、同社が今後注力していくオープンソースのミドルウェアとアプリケーションビジネスの第1弾と位置づけ、今後もEclipseやStrutsを組み込んだ統合開発環境や、Tomcat、JBossを基盤にしたシステムについての「コンサルティング、開発、運用のライフサイクルをカバーする」事業展開を図る。サービスの提供先として、日本IBMとのジョイントベンチャーである株式会社AITを通じての流通業、グローバルに展開している製造業、国の研究機関や自治体などの公共分野を挙げた。


株式会社SRA オープンソースソリューション部長 林 香氏
 同社では2003年4月から「PowerGres」の国内販売を開始している。同社オープンソースソリューション部長 林 香氏によれば「実用にはデータベースだけでは難しい」。同社では、オープンソースソフトウェア「LifeKeeper」と組み合わせてファイルオーバーが可能な「PowerGres HA」、複数サーバー運用環境で負荷分散を行う「PowerGres Cluster」などのラインアップも用意し、「上期はパートナー開拓しかしていなかった」とのことだが、この1年で1,000本、8,000万の売り上げた。

 同社のPowerGresのラインアップは、今回米国で提供が開始されるPostgreSQL 7.3.6をベースにした「PowerGres on Windows」のほか、PostgreSQL 7.4をベースにRed Hat Linux 7.3/8/9やTurbolinux 8 Serverを正式サポートする「PowerGres on Linux」、PostgreSQL 7.4に、富士通との協業によりミッションクリティカルデータベース「Symfoware」の基盤技術を組み込み、Red Hat Enterprise Linux AS/ES 2.1/3.0やTurbolinux Enterprise Server 8をサポートする「PowerGres Plus」の3つがあり、これらも順次米国へ投入されるとのこと。

 同氏はPostgreSQLの現状について「SQL標準との互換性を持ち、商用サーバーとして必須のトランザクション処理機能を持つのが特徴」とした。そしてPostgreSQL最新版の7.4では、バキューム機能により、24時間365日停止しない運用が可能となっているという。同氏によれば「物理ディスクで分かれたデータを論理的にひとつとみなす分散機能が唯一弱い点」とのことだが、これは「適応分野が限られており、さほど重要視していない」という。

 同じくオープンソースのデータベースとして、欧米を中心に注目されはじめた「MySQL」については、「MySQL Proでトランザクション機能が追加されたが、ストアドプロシージャなど企業サーバーでは必須といえる機能がそなわっていない」と自信を見せた。


今後3年間のPowerGres関連ビジネスで10億円の売り上げを見込んでいる
 「PowerGres」については、2003年の発売以来、メールで英語版についての問い合わせもすでに数十件ほど受けているとのことだ。米国での展開については、すでに3月15日より60日限定の試用版をダウンロード提供している。「サポートはSRA Americaが手がける。現在はメールのみだが、今後はトレーニングを行い24時間電話対応が可能な体制にする」という。また対抗と見られるMySQL Proと比べ、価格的にもを下回るとのことだ。そして「製品と、その関連となるサポート、コンサルティング、開発を含めて今後3年で10億の売上を見込んでいる」という。

 同氏は「まずはアメリカ進出で世界認知を高めたい」とし、「こうしたソフトウェアの輸出はオープンソースだからできたこと」と述べた。一方で「PostgerSQLは、すでに“誰がディストリビューターをやるか”というところまで来ていた。そこに日本人が手をつけたということ」と語った。将来的にはヨーロッパやアジアにも展開し、データベース分野で世界シェア10%を目指すとしている。

 一方、国内でもPowerGres PlusのWindows版を4月中旬に発表する予定のほか、7月には他のデータベースからのマイグレーションサービスを提供する。また8月にもJava、TomcatとPowerGresを組み合わせたアプリケーション基盤の提供を行うとのことだ。



URL
  株式会社SRA
  http://www.sra.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.sra.co.jp/public/sra/topics/topics2003/040323.shtml
  PowerGres
  http://powergres.sra.co.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/03/23 19:31

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