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Microsoft、エンタープライズ戦略を加速する運用管理製品のロードマップを公開

サーバー製品からクライアントまでをカバーするシステム管理構想「DSI」を発表

 2004年3月、米国ネバダ州ラスベガスで開催された「Microsoft Management Summit 2004」において、米Microsoftはエンタープライズシステムにおける管理構想「Microsoft Dynamic Systems Initiative(DSI)」のロードマップを発表した。この構想の中心となっているプロダクトは、システム管理ツール「Microsoft Operations Manager(MOM)」および、構成管理ツール「Microsoft Systems Management Server(SMS)」である。これらのプロダクトから、エンタープライズシステムにおけるMicrosoftの今後の戦略をうかがうことができる。また、国内のマイクロソフトでは、これらの管理プロダクトに対してどのように取り組んでいくのか、評価版を検証してみよう。ただし現段階ではこれらの製品はすべてベータ版であり、実際の製品版とは異なるものであることをご了承いただきたい。


システム管理ツール「Microsoft Operations Manager 2005」

 「Microsoft Operations Manager(MOM)」は、障害の検出、トレンドデータの取得、ログやイベント、パフォーマンスの監視などさまざまシステム管理機能をWindows Server Systemの各製品において実現するシステム管理ツールである。NetIQが提供していたWindowsプラットフォーム管理ツールの技術とソースコードについて、Microsoftが2000年10月にライセンスを受け、独自に変更を加えたプロダクトだ。これまでのMOM 2000は英語版でのみ提供されていたが、MOM 2005へとバージョンアップするにあたって、ほぼ全面にわたってコードが書き換えられている。3月10日にはMOM 2005のベータ3英語版が、3月27日には同日本語版が提供された。製品版は、英語版が2004年第4四半期中に、日本語版もその後60日以内には提供される予定となっている。

 MOMでは、SQLやExchangeをはじめとしたMicrosoftのサーバー製品や、各種サービスに対応する多数の管理ルールをあらかじめ用意しており、障害の原因やその対処方法などのナレッジも含んでいる。この管理ルールは、管理対象となる製品(あるいはサービス)ごとに「管理パック」という単位で提供される。すでに用意されている管理パックだけではなく、今後もリリースが予定される数多くのMicrosoftのプロダクトにおいても管理パックを提供する予定とのこと。


アドミニストレータコンソールのトップ画面 どのように管理するかはルールにより指定する MOMのオペレータコンソール。障害の原因などのナレッジが参照できる

マイクロソフト株式会社サーバープラットフォームビジネス本部 IWインフラストラクチャ製品グループ マネージャー 寺田 和人氏
 興味深いことに、管理パック自体の作成はMOMの開発グループではなく、管理対象となる製品の開発グループが担当する。マイクロソフト株式会社サーバープラットフォームビジネス本部 IWインフラストラクチャ製品グループ マネージャーの寺田 和人氏は「管理対象のテクノロジーは多岐にわたっており、すべての製品のノウハウを管理ツールの開発グループだけで対応するには限界があります。そこで、SQLならSQLの、ExchangeならExchangeの開発グループが作成することで、より広範囲にきめ細かく対応することにしました」と語る。つまり製品を知り尽くした開発グループのナレッジ(障害の検出や対処方法など)が管理パックの中に凝縮されているのである。こうしたシステム管理ツールでは、ひとつの障害に起因した複数のイベントがアラートとして通知されるものだ。同氏によれば、MOM 2000でも障害1に対しアラート35の割合だったが、MOM 2005ではこれが3にまで削減される。

 Microsoftでは、他のハードウェアおよびソフトウェアベンダーに、MOMの管理パックの作成を依頼していることを同氏は明かした。MOMでは「管理ルールをユーザーが独自に作成することも原理的には可能」であり、Microsoft以外の製品であってもMOMのテクノロジーを利用して管理・運用することが可能になる。現在多くのベンダーがこの管理パック作成に名乗りをあげており、今後はさまざま製品に対するナレッジを提供する「MOM管理パックビジネス」といったビジネス展開も予想される。

 さらに、MOMは「MOM Connector Framework(MCF)」によって、他のシステム管理製品との連携も可能にする。エンタープライズ システムでは当然のようにプラットフォームの混在が発生しており、それらはすでに別のシステム管理ツールによって管理・運用されている場合も多い。そこでMOMはMCFのテクノロジによって、他のシステム管理ツールとの連携を可能にする。国内も日立が、システム管理製品として既に実績のある「JP1」との連携を実現することを正式に発表している。すでにIBMのTivoli、HPのOpenViewとの連携用リリースキットのサンプルが米国サイトで提供されるなど、他にも多くの製品との連携が可能になるはずである。

 また、機能限定版のMOMとして「Microsoft Operations Manager Express」のリリースも予定されている。これは通常版のMOMからMCFなどの機能を除き、レポーティングなどのデータベース部分にもMSDEを利用できるようにした製品である。本来、5~10サーバーを対象とする小規模システム管理向けの簡易版といった位置付けであるが、将来通常版のMOMによる管理への移行も容易であるため、試験的に企業の部署内にあるシステム管理などに導入して、MOMによる管理が効果的であると判断したら、全社的に通常版のMOMによるシステム管理を実現する、といった利用も考えられる。


構成管理ツール「Systems Management Server 2003 Feature Packs」

 「Systems Management Server(SMS) 2003」は、Windowsプラットフォームにおけるシステム構成管理ツールである。アプリケーションやセキュリティなどのアップデートの配布、インストールされているアプリケーションの資産管理、モバイルシステムの接続サポートなどの機能を提供する。Microsoftでは、SMS 2003の追加モジュールとして、「Systems Management Server 2003 Feature Packs」の提供を予定している。現時点では提供方法や詳細なリリース時期は未定だが、前のバージョンであるSMS 2.0のFeature Packsでは、Webダウンロードにより無償で提供されていたことから、年内には同様の方法で提供される確率が高い。

 SMSで最も注目されているのは、ソフトウェアの配布機能である。ウイルスなどの影響により、セキュリティパッチの適用状況は、システム内で一元的に管理したいという要望が高まっている。SMSでは最新のセキュリティパッチの情報をMicrosoftのサイトデータベースに照会し、常に最新のプログラムを配布することが可能である。 もちろんシステムを構成する各コンピュータのパッチ適用状態も監視しているため、システム全体をセキュアに保つことが可能になる。エンタープライズ システムにおいては、配布スケジュールの詳細な設定や強制適用、適用後のチェック機能などの機能を有したSMSの導入メリットは大きいといえる。

 このように注目されるSMSの機能を拡張するFeature Packsは、Systems Management Server 2003の管理対象範囲を、Windows CE、Windows MobileベースのPocket PCやSmartphoneソフトウェアで稼働しているデバイスにまで拡大する「Device Management Feature Packs」と、リモートでのOSイメージの生成と展開を可能にし、パッチ適用後の状態にリカバリできる「OS Deployment Feature Pack」の2つが提供される。


統合管理スイート「System Center 2005」に見る今後の展望

 「System Center 2005」は、「Microsoft Operations Manager 2005」、「Systems Management Server 2003」、および共通レポートシステムで構成されるシステム管理プロダクトである。MOM 2005のリリースののちに、スイート製品として出荷される。また「Windows Update Services」(現在のSoftware Update Services 1.0の後継製品)など、その他のシステム管理ソリューションもアップデートされ、これまでやや立ち遅れた感のあったMicrosoftが、今後はエンタープライズ システムの運用管理分野に積極的に進出することはあきらかなようだ。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース(NetIQとの提携)
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=1099

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( 北原 静香 )
2004/04/16 00:00

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