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米FileMakerグピール社長、「Excelにプラスし、当社製品を利用してもらうことを狙う」


 ファイルメーカー株式会社は、2年ぶりのバージョンアップとなる「FileMaker Pro 7」を4月15日に発表した。新しいアーキテクチャを採用し、リレーショナルデータベースパワーを強化するなど、力の入ったバージョンアップとなるが、米本社のドミニーク・P・グピール社長は、「Microsoft Officeのユーザーにとっては、当社製品をプラスして利用してもらえるよう、アピールしていきたい」とターゲットを定める。日本市場においても、日本法人社長の宮本高誠氏が、「企業内に氾濫するさまざまなファイルフォーマットを管理するソリューションとして、当社製品は最適だとアピールしていきたい」と話す。米本社のグピール社長と日本法人の宮本社長に、同社が新製品で目指す方向性について聞いた。


製品誕生から20年目のバージョンアップで新アーキテクチャに

米FileMaker社長 ドミニーク・P・グピール氏
─今回の新製品は、開発に2年かけたということですが、それだけ時間をかけてバージョンアップに取り組んだ狙いはどこにあるのでしょう?

グピール氏
 FileMakerが最初に誕生したのは20年前になります。これだけ長い歴史を重ねた製品ですから、ユーザーごとにいろいろなリクエストがあります。人間でも、20歳になれば身内の人々も、「まあ、赤ちゃんのときは、あんなに暴れん坊だったのに、20歳になったらすっかりおとなしくなって・・・!」と驚くでしょう。我々のソフトも20歳を迎えて、シンプルさを追求しつつも、さまざまな面でパワーアップしていくことが必要になってくると思ったのです。

 今回のバージョンアップでは、新しいアーキテクチャを採用し、従来通りの「使いやすさ」という特徴を維持しながら、エンタープライズ用途で活用していくための機能をより強化しました。ODBC、JDBC、XMLのサポートも実現しましたし、セキュリティ機能についても大幅な強化をはかりました。


─今、エンタープライズ向け機能を強化したという話が出ましたが、ターゲットとするのは、エンタープライズといっても情報システム部門ではなく、企業内個人や現場のチームや、グループなどのユーザーだそうですね。

グピール氏
 企業の情報システム部門には、たくさんの仕事があります。「SAPを導入して、どう活用していくべきか」とか、「CRMを導入し、どう活用していくべきか」といった具合にね。しかし、企業の部門単位にも、解決しなければならない問題はたくさん存在します。しかも、彼らはプログラムの専門家ではありません。そこで、プログラマーではない人であっても、自分たちが望むソリューションを自ら構築できるツールとしてFileMakerを提供しています。

 他のソフトメーカーも、これまではターゲットとしていなかったITのプロではない企業ユーザーにフォーカスした製品を販売していますが、我々はこうした競合の動向よりも、ユーザー自身の環境の変化という点に着目し、バージョンアップを進めました。その結果、一口に「FileMakerのユーザー」といっても、以前から当社の製品を使い続けてきた人もいれば、最近になって使い始めた人もいる。ユーザーの幅が大変、広がっているという事実を認識しました。

 利用者の環境は大きく変化しています。20年前は、デスクトップパソコンで利用するための機能拡充が進んでいきましたが、現在ではWebで利用することを想定し、機能拡充を進める必要があります。セキュリティへの対応、テキストデータだけでなく、オーディオ、ビデオなどあらゆる形のファイルの取り込みができなければなりません。

 また、日本でのみ提供している「Mobile for i-mode」については、FileMaker 7ファミリー製品ラインの一部として、その将来バージョンの開発を計画していますが、携帯電話市場も大きく変化しました。iモードだけでなく、他のキャリア向けも視野に入れ、開発を進めていく必要があるでしょう。

 FileMakerユーザーから、「こんなことはできるのか?」という質問を受ける機会がありますが、その際には必ず「Yes!」と答えられるようにしようというのが当社のモットーでもあります。


使いやすさで企業ユーザーの支持も獲得

─メーカーとしての意向よりも、ユーザーの意向を最優先とするということですね。それはコンシューマユーザーにフォーカスしていた時代から、変わらないわけですね。ユーザー優先という同じスタンスをもちながら、ターゲットユーザー層を個人から企業向けにシフトすることに成功したのはなぜなのでしょう。

グピール氏
 データベース製品は、使い勝手が悪いというのが一般的な評価です。FileMakerは誕生した時点から、「使いやすい」という点を他の製品との大きな差別化要素としてきました。

 そのため、市場へのアプローチというのもずっと変わっていませんし、ストラテジーも一貫しています。しかも、プログラマーではない、ITの専門家ではない人にフォーカスするという点にも揺らぎはありません。

 現在、中小企業には情報システム部門をもつ余裕はありません。大学などITを盛んに活用しているところでも、ITを熟知した人員が足りなくて困っています。大企業においてさえ、ITに熟知した専門家の数は限られています。当社は、「ITの専門家がいなくて困っている」という人たちに対して、ソリューションを提供するという、明確なカスタマーセグメントをもっています。この明確さが、多くのユーザーに受け入れられた要因だといえるでしょう。

 もちろん、当社にも課題はあります。より多くのユーザーに、FileMaker 7という製品を知ってもらう必要があります。Microsoft Officeのユーザー数は、全世界で2億人だそうです。おそらく、OfficeユーザにFileMakerを使ってもらえば、多くの人がFileMakerファンになってくれるだろうと思っています。


ファイルメーカー代表取締役社長 兼 米FileMaker副社長 宮本高誠氏
宮本氏
 確かに日本市場においても、Officeユーザーというのは大きなマーケットだと思っています。しかし、Officeに限らず、PDFファイルを利用している人、静止画や動画などの画像ファイルを利用している人、文書ファイルを毎日作成している人など、複数のファイルフォーマットがはんらんしていることに対し、「これをどう管理すればいいのか」頭を悩ませている人は多いはずです。FileMakerを使ってもらえば、さまざまなフォーマットファイルのはんらんという問題を解決することができますから、Officeユーザーに限らず、多くのユーザーに訴求していきたいと思います。

 Officeユーザーについても、ExcelとFileMakerはとても親和性が高い組み合わせだとマイクロソフト自身もアピールしていますから、是非、セットで使ってもらいたいですね。


グピール氏
 ただし、我々はExcelをリプレースしようと考えているわけではありません。2つのソフトをセットで利用することで、Excelだけではらちがあかないことも解決することができるという点をアピールしていきたいと思います。ExcelやWordだけで十分と考えているユーザーに対し、FileMaker 7を一緒に利用することで何ができるのかを説明していくことで、マーケット拡大が実現できると考えます。当社のホームページでは、お試し版も提供していますので、一度利用してもらって、その良さを実感して欲しいと思います。


─現在、パッケージソフト業界はとても厳しい状況にあると言われています。日本では「ロータス1・2・3」を1980円で販売しています。

グピール氏
 それは驚きの価格ですね!米国ではそれほど価格が下がってはいませんが、ソフトの価格競争が激しくなり、ソフトメーカーのマージンコストはゼロに近づいています。

 ただ、データベースソフトの場合、ユーザーは「このベンダーは長く存在し続けるのか? 今後、製品の改良は続いていくのか?」という点に強い関心を持っています。あまりに製品単価を低く抑えすぎることで、ユーザーはベンダーの存続と製品の将来という点に疑問をもつのではないでしょうか? 企業で長期にわたりデータベースソフトを利用していくという観点からすれば、パッケージ単価以上に、ソリューションの開発コストとメンテナンスコストがどの程度なのかという点まで含めたトータルコストを換算する必要があります。パッケージの単価よりも、メーカーへの信頼の方を優先するユーザーも多いでしょう。その点、当社は大きな信頼を得ているといえると思います。

 また、FileMakerファミリーは、企業市場をターゲットにしてはいますが、超ハイエンドではない、いわば中間層です。価格も安すぎず、高すぎず、中間に抑えています。企業ユーザーにとっては、購入しやすい価格帯だと考えます。



URL
  ファイルメーカー株式会社
  http://www.filemaker.co.jp/

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( 三浦 優子 )
2004/04/21 00:00

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