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メイトリックス ワン、PLMソリューションの新製品と事業戦略を発表


 メイトリックス ワン株式会社は5月12日、製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションの新製品「Product Central」と、2003年度の事業戦略を発表した。


ERP/CRM/SCMに新たな価値をもたらすPLM

米MatrixOne 社長兼CEO マーク・オコンネル氏
 米MatrixOne社長兼CEOのマーク・オコンネル氏は、「世界のグローバル製造業はここ2、3年、売上や利益向上のための課題を抱えている。このため、製品を市場に投入する方法に変化を促すPLMソリューションは、企業戦略に重要な位置を占めるに至った」と述べた。

 そして「PLMは、過去10年で多額の投資が行われたERPやCRM、SCMといった既存アプリケーションに新たな価値をもたらし、管理の基礎をなすもの」として、米Gartnerの調査結果を示しながら「企業向けソフトウェア市場で2~3年のうちに大幅な成長を見込まれている」と述べた。

 米MatrixOneは、PLM専業ベンダーとして650の企業ユーザーを抱えており、うち100社は国内企業だという。導入されている業種としては自動車、ハイテク、家電、航空宇宙、機械、デバイスの6つ、そしてゼネラルエレクトロニック、ボーイング、P&G、クライスラー、ジョンソン&ジョンソン、シーメンスなどの企業名を挙げた。

 またホンダには自動車と二輪の製造でグローバルに標準導入されており、「1000人以上のデザインエンジニアがひとつの環境で作業している唯一の企業」と述べた。

 Product Centralについては「顧客要件やアイデアを吸い上げて、既存製品を比較、デザインの再利用を行うほか、市場に見合った製品かどうかを判断することも可能な製品」とし、「製品開発の初期段階を定義づけられるため、もっとも期待できる」と語った。また「8つのCentral製品で、製品開発から出荷にいたるすべてのプロセスをカバーできる」とした。


ERPやCRM、SCMといった既存アプリケーションに新たな価値をもたらすPLM 製品開発の全プロセスをカバーする8つのCentralで構成されるPLMソリューション

国内市場での売り上げは増加傾向

米MatrixOne. ワールドワイド・フィールド・オペレーション副社長 ジャネット・ヘプナー・ジョーンズ氏

地域・業種別の売上比率
 米MatrixOne. ワールドワイド・フィールド・オペレーション副社長のジャネット・ヘプナー・ジョーンズ氏は、地域別の売り上げ比率を示し、「日本は11%だが、米企業としてはよい数字と考えている。また過去6カ月で6社の実績を上げたアジア地域も含めて、売り上げは増加傾向」と述べた。また欧米市場ではノキア、ソニーエリクソンへ最近製品が導入されたという。

 業種別ではハイテク、自動車、航空宇宙産業の3つが多くの割合を占めている。「ハイテクとひと口に言ってもOEM、ソフトウェア開発、半導体などさまざまな分野が含まれる」とした。なかでもエレクトロニクス分野を戦略部門に位置付け、世界ベースのグローバルパートナーとしてIBMと提携したことに触れた。新規市場としては、現在2%のメディカルデバイス分野について「グローバル企業へ向け、各地域の法的要件に見合った提供を行い、将来的に伸ばしていきたい」と語った。

 同氏は昨日来日して早速ホンダでミーティングを行ったことに触れ、「国内には東芝、NEC、パナソニックなどの重要なパートナーが多く、新規顧客としてエプソンも加わった。Product Centralの登場が、それぞれの企業にどう適用できるか話し合いを行い、相互成長の道を探りたい」と語った。


2003年度は国内での売上倍増を目指す

メイトリックス ワン株式会社 代表取締役社長 川島 伴人氏
 4月12日付で同社代表取締役社長に就任した川島 伴人氏は、現在Matrixグループ全体で11%の国内の売り上げについて「東アジアのリーダーたる日本のポテンシャルを考えれば、PLMの市場はまだまだある」との見方を述べ、6月末に決算を迎える同社の次年度事業計画を現在策定中とした。

 「これまで日本でのマーケティング施策はままならなかった」とした同氏は、国内経済の好転を背景に、「Product Centralで完成したPLMソリューションを展開し、売り上げの倍増を目指したい」とした。さらに「日本から機能追加の要望も積極的に本社へ上げていきたい」と述べた。

 そして「グローバル企業にとって、中国は製造現場から、今後はコンシューマの拡大により第2の市場になる」とし、「国内企業は、イノベイティブなRFIDなどの技術要素を用いた、デジタル製品の開発に長けている。ホンダへの提供などすでに実績のある自動車業界だけでなく、ハイテクなどの業界に向けても製品展開を図りたい」と語った。


設計以前の段階で効率化と顧客ニーズ反映を実現する「Product Central」

メイトリックス ワン株式会社 アプリケーション担当 宮川 保明氏
 Product Centralは、「一般的に製品ライフサイクル全体を管理するPLMソリューションのなかでも、設計以前の、コンセプトや企画の段階で効率を上げ、顧客のニーズを捉えて製品に反映させるアプリケーション」とアプリケーション担当の宮川 保明氏は紹介した。

 宮川氏は「需要が供給に勝っていた時代と違い、いかに魅力ある製品を投入するかが企業の課題になっている」とし、「顧客の声や市場動向、技術トレンドを分析、体系化して要件データに蓄積し、開発プロジェクトの新技術がこの要件を満たしたときに部品に展開され、さらに製品化へと至るような、営業・設計・企画が一体となって製品開発を考える仕組みが必要だ」とした。

 続いて同氏はプリンタを例に挙げ「もっと静かに、写真画質の印刷を、などあいまいでぼんやりとしたユーザーの要件を具体的数値目標に定義し、これを実現する新技術により製品のアーキテクチャにマッピング可能となる」とし、「その後で実際のハードウェア、ソフトウェア部品を用いた製品構成のルールを定義、これに基づいて詳細な実際のBOM(部品表)が決定される」と具体的な全体のプロセスを語った。また不良、バグといったインシデントの管理も可能とのことだ。

 宮川氏は「各プロセスで状況に合った情報が管理され、すべて関連をもつことが重要」とし、「製品開発におけるコスト削減、品質向上はもちろん、顧客の欲しい製品をいかに速く安く提供し、満足度を向上させることがもっとも重要な目的」とした。そして「企業の反応もよく、日本の製造業にかならず寄与できる製品」と自信を示した。


PLMのサイクルのうちコンセプトから設計までをカバーするProduct Central 営業・設計・企画が一体となって顧客のニーズや技術研究を製品開発に反映 プリンタ開発を例にしたProduct Centralのプロセス

「PLM構築ではITだけでは実現しない」東芝のPLM導入

株式会社 東芝 ISCセンター長付 肥後野 恵史氏

開発・設計を軸にした東芝グループでのPLM構築例
 株式会社東芝では、「顧客の望む製品をどこより早く提供するために」同社のPLMソリューションを2001年から導入している。ISCセンター長付 肥後野 恵史氏によれば、「企画から販売までをひとつのプロジェクトとして、誰かが管理できる体制を、組織を変えてでも作ることを目指した」という。

 そして3カ月の短期間でのPLM構築、変化対応できる柔軟なシステム、導入運用コストを抑える、の3つを条件に、グローバルの東芝グループ全体を対象にした製造プロセス革新が推進された。肥後野氏は「PLM構築ではITだけではだめで、エンジニアリングプロセスをルールにのっとって標準化するとともに、目的やあるべき姿、ITの使い方をトップダウンで前もってはっきりさせた」という。

 当初すでに製品化されていた「Matrix Value Chain Central」が導入され、医療機器、家電、半導体、それぞれの分野で標準アプリケーションが開発された。各カンパニーを支援する専任の推進部門も設置されたという。

 そして開発・設計を軸に、グローバルの輸出管理を含む調達部門との連携、サプライヤーや製造部門とのBOM統合、部品データベース連携などが手がけられた。カンパニー各社では、購買コスト、開発コストの圧縮、設計効率の向上、リードタイムの短縮などを、すでに実現しているとのことだ。

 なお改革は、環境問題への対応など現在も継続しており、肥後野氏は「評価はこれからになるが、タイミングよく出てきたProduct Centralにより、これまでできていなかった企画部門とのコラボレーション実現するよう期待している」と述べた。



URL
  メイトリックス ワン株式会社
  http://www.matrixone.co.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/05/13 12:59

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