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SAPジャパン、人事ソリューションの新製品を発表

新ライセンス体系と専任組織もあわせて新設

 SAPジャパン株式会社は6月2日、人事ソリューションの「mySAP ERP Human Capital Management(以下、HCM)」の最新版を7月5日より提供する。また6月1日より同社の人事ソリューションについて新たなESS/MSSライセンス体系を設ける。さらに拡販のための専任組織を新設するとともにパートナーとの協業強化も行う。これら施策により、今後3年間で導入企業数の150%増を目指す。


SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 藤井 清孝氏
 同社代表取締役社長の藤井 清孝氏は、「従来は生産・販売・調達といった機能により想定ユーザーが分かれていた。NetWeaverによりシステムを横断する形が可能になったことで、ポータルに付加価値の高いビジネスプロセスを組み込み、個々の従業員の役割に応じたカスタムメイドに近い機能を提供する」と、今回の発表の背景にある、同社のソフトウェアに対する考え方の変化を述べた。

 今回発表のソリューションについては、「人事は国内企業でも昔から戦略的な位置を占めていた。しかしR/3顧客企業のうち人事ソリューションを導入しているのは、欧米の4割に比べて国内企業はこれまで約2割だった」と述べ、この原因として「日本独自の人事プロセス、またIT部門と人事部門の力関係もあるだろうが、これまで他の分野と比べてあまり注力しているとは言えなかった」とした。同社では人事部-事業部間の連携を支援する今回の製品により「世界の半分しかない人事ビジネスを変えていこう」という狙いだ。


SAPジャパン株式会社 HCMビジネスディベロップメント 部長 三村 真宗氏
 mySAP ERP HCMは、「SAP Human Resources(HR)」の後継製品として、機能を大幅に拡充したという。今回の発表に伴って新設されたHCMビジネスディベロップメントの部長に就任した三村 真宗氏は、「従来は人事部だけによるものだった人事業務におけるITの位置付けは、給与計算や勤怠管理など、主に省力化を中心にしていた」とし、「人財情報を可視化するとともに、事業部側にも権限を下ろしていくことで人事業務の範囲を広げ、経営における環境変化の激しさに対応できる人事ポリシー、必要な人材の育成スキル、キャリアプランの形成を実現していく」と述べた。

 またNetWerverをベースとすることで、ユーザー側からは、人事に関する散在するデータ、複数の業務アプリそれぞれのシステム間接続を意識することなく、ポータルから一元的にアクセス可能になるという。また環境の変化に応じて、既存アプリケーションの入れ替えに対応する柔軟なシステムを構成できる。


情報の可視化と事業部連携により付加価値を生みだすmySAP ERP HCM 人事部だけでなく事業部自ら、人の情報を把握可能になる エンドユーザーはポータルにより各業務をシームレスに統合できる

 事業部門との連携のためには、企業のほとんどの従業員にポータルベースのアクセス権を提供する必要が生じる。このため同社では、従業員向けのセルフサービス機能を提供する「ESS(Employee Self Service)」、同じく管理層向けの「MSS(Manager Self Service)」の2つのライセンス体系を新設して提供する。

 ESS/MSSライセンスについては範囲が広く、契約社員やグループ企業まで含めた際に、数の変動も激しいため、最小1,000ユーザーからのロットプライス制を採用する。同社の試算では、「2000人規模の企業を想定した場合、初期投資金額は約1/4になる」とのこと。


人事部門の役割に応じた各状況を表示するポータル画面
事業部管理層向けの画面からは、所属する人間の人材情報を確認できる エンドユーザーは、業務から見た自分の不足スキルをeラーニングで補完することも可能だ

専任組織の新設により125社への新規導入を目指す

製品提供における顧客別戦略。小規模顧客はアウトソースサービスでカバーする

3年間で人事ソリューション導入企業150%増を目指す
 次に今回の発表に伴う専任組織の新設について、「5月にユーザー会内に人事ソリューション部会を立ち上げ、ここで吸い上げられた開発要求のうち、グローバルでも通じるものは500人からなる海外のチームで開発、国内固有の要件は20人の人事専任開発チームで対応する」とした。

 また三村氏は「事業部門と連携した人事ソリューションは国内で新しい分野」と述べ、「これまでのHRコンソーシアムを、今回HCMパートナー・コンソーシアムと改称して、チェンジマネジメントの痛みをパートナーと和らげるために連携を深めていく」とした。

 実際の提供にあたっては、「新規顧客に対しては、HCM単体での部分導入も促していきたい」とした。システムの柔軟性ゆえに、その後ERPなど他製品へと拡張することも容易なためだ。またR/3導入顧客に対しては、「国内は79%のユーザーが人事ソリューションを使っていない。人の情報はこれからの企業における中核になると考えており、統合メリットを訴求したい」とした。

 同社では人事ソリューションについて125社へ新規導入を目指し、導入率も現在の21%から今後3年間で33%まで高めたい考え。またSAP HRの利用顧客に対しても、「ライセンスが高くてできなかった、事業部との連携による付加価値を提供できる」とした。



URL
  SAPジャパン株式会社
  http://www.sap.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.sap.co.jp/japan/company/press/press.asp?pressID=2837


( 岩崎 宰守 )
2004/06/02 15:01

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